不穏の決着
翌朝。
王宮からの急報が屋敷に届けられた。
報を読み終えアルベルトは深く息を吐き出した。
夜会での殺人について、昨夜アルベルトを狙った刺客が全ての責を負わされた形で決着を迎えていた。
そこにアルベルトやリリアの関与は一字たりとも記されてはいない。刺客の狙い、命令を下したもの、いずれも巧妙に事実と虚構が混ぜられ、表向きだけなら納得のいく筋書きに仕立てられていた。
リリアをアルベルトのもとに送り込んだ者が都合のいいように筋書きを書いたとみて間違いない。その手腕に覚えはあるが確証には欠ける。アルベルトはリリアとの結婚にまつわるやり取りを洗い出すよう指示をしたためた。
リリアの目的がアルベルトを守ることであるのはこれまでの行動が示している。だからこそ彼女を変わらず傍に置くことにした。
その一方で、アルベルトは彼女との接し方に悩んでいた。
人を殺めることに一切の躊躇を持っていないうえ、未だその正体は不明。
それでも短いながら共に過ごした時間が彼女の人格を否定することを躊躇わせる。
アルベルトの複雑な心境を察してか、リリアも必要以上に近づいてこない。朝、顔を見かけても距離を取ったまま小さく会釈をして去っていく。よそよそしい態度がアルベルトの胸を締め付けた。
夕食時。
食堂につくとリリアは既に席についていた。いつになく重苦しい沈黙が二人の間に落ちる。
俯きがちでありながらもリリアの視線は給仕の手元、皿の中身、アルベルトへと鋭く向けられていた。
味のしない食事を噛みしめながらアルベルトはようやく彼女の同席理由に思い至った。
こんなところでもリリアに守られていたのだ。
リリアが不意にこちらを向き、一瞬視線が交わった。が、すぐに伏せられてしまう。
「・・・・・・・・・・・」
喪失を恐れ、断ってきたはずの感情をリリアに抱いていることに気づいてしまった。
アルベルトはワインを一口飲んだ。酒気が胸の痛みを癒してくれることはなかった。
二人のぎくしゃくとした様子は使用人たちの間にも伝わっていた。
洗濯担当の侍女が呟く。
「旦那様と奥様の様子、なんだかいつもと違わないかしら?」
「旦那様はここのところずっと遅くまで王宮にお勤めだったからお疲れなのよ。きっとすぐに元に戻るわ」
「そうだといいけれど・・・・・」
口ではそう言いつつも互いに不安げな視線を交わす。
屋敷に漂う重苦しい空気の理由を誰一人知らなかった。




