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日影のリリア  作者: 篠原
本編
14/30

光の間に立つ者

夜の王都は深い眠りに沈んでいた。

石畳の上には血と冷気が交じり合い、月光だけがその惨状を照らしている。

アルベルトは目の前の光景が理解できず、ただ立ち尽くしていた。


「・・・・・・・お前は、いったい——」


声は自分でも驚くほど掠れていた。

リリアは困り顔で微笑むばかりで答えず、膝をつき死体を探る。

やがて一通の封書を取り出し、立ち上がってアルベルトに差し出した。


そこには襲撃の指示とアルベルトの名が記されていた。言葉を失うアルベルトにリリアはもう一通封書を手渡した。

「夜会で死んだ男が持っていたものです」

封には同じ印が押されている。

「・・・・・・その男を殺したのもお前か」

「はい」

平坦な声で答えつつ、リリアは死体の肩を押して建物の影へと転がした。

ドレスの裾を整える彼女をアルベルトはただ見つめる。

「お前は何者だ?」

リリアはゆっくりと首を振った。

「今はまだ・・・・言えません」

胸元に寄せた手が強く握りこまれる。

「けれど、信じてください。私は・・・・あなたを守るために遣わされたのです」

リリアは顔を上げアルベルトの目を真っ直ぐ見つめ返した。その瞳は静かで、間違いなく見慣れ始めたリリアの顔だった。



リリアは周囲を見回し、微かな気配を探るように目を細めた。

「お疲れでしょう。屋敷にお戻りください」

馬車の扉を開きアルベルトに乗るよう促す。

アルベルトは無言で従った。乗り込んだ後も馬車の外に立つリリアへと目を向ける。

「お前はどうする」

「私は後から向かいます」

リリアはばつの悪そうな表情で答えた。アルベルトは小さく息を吐く。

「一緒に乗れ」

リリアの瞳がわずかに見開かれる。

「・・・・・・え?」

「私を守るというのなら共にいる方が好都合だろう」

その言葉にリリアは安堵の色を浮かべた。

「はい、旦那様」

彼女は静かに馬車に乗り込み、向かいの席に腰を下ろした。

二人を乗せた馬車は闇を抜けて走り出した。

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