窮地
街道から外れた森の中、数人の男達が屯していた。
「おい。あの馬鹿、アッシュの奴はどこだ?」
男達の中で最も大柄で背に大剣を背負った男が近くにいた者に聞いた。
「いや、俺は見てないっすね」
「チッ、使えねーな。…やる事やる前からいなくなりやがって」
大柄な男、アゼルは苛立ちながら街道近くで見張りをしている男の元へ向かった。
「おい、バッツ。馬車は来たか?」
「いや、まだですねお頭」
この者達は盗賊だった。
今は森の中で休息を取りながら獲物が通りかかるのを待っている最中だった。
「バッツ。お前はアッシュの野郎がどこに行ったか分かるか?」
「確かアイツは森ん中にションベンしてくるって言ってました。ライやオロフの奴もいないんで、多分ついて行ったんだと思います。」
「ションベンだぁあ?たくっアイツはめ—」
その時、森の中からアゼルの元に盗賊仲間の1人が走って来た。
「た、大変ですお頭!アッシュ達が森の中にあった洞窟から一向に出て来やせん。中に入ってみたら罠がいくつかあやした。おそらくダンジョンです。微かに悲鳴のようなものも聞こえやした!」
目の前の男は盗賊のクラスを持ってる。
悲鳴が聞こえたと言うのはおそらく本当のことだろう。
「ダンジョンだと?本当に、アイツは余計なことしかしないな!見つけたらタダじゃおかねえ!おい、キース。その洞窟に案内しろ。」
「ヘイ、こっちです」
「お前たちもついて来い」
そういい、アゼルは部下連れてダンジョンへと向かった。
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《アヴィリル視点》
いやぁ、進化したらどんなことができるのかねぇ
「とりあえず、コイツらのステータスを見てみ—」
『ダンジョンに侵入者が現れました。』
「えっ!またか!映像を!」
すると目の前に現れたモニターには10人近い人数の男達がいた。
「何だコイツら?何でこんなに…あっ、さっきの盗賊の仲間か!」
マジか。まだ罠の再設置もしていないのに。どうする、この人数だとさっきの作戦でも倒し切るのは難しいだろう。
そう考えているうちにも侵入者達はどんどん進んでいた。
「クソッ、流石にこの人数だと攻略も早い」
どうする…幸いな事に魔力はほぼ全快に近い。
考えろ…考えろ…
「俺のスキルで何かないか。罠設置、部屋作成、召喚…そうだ、召喚だ!」
俺の2割の魔力でさえナイトウルフというゴブリン達より強いものを召喚できたんだ。俺の全魔力を注いで召喚すればもっと強い魔物を召喚できるはずだ。
だがリスクもある。
魔力を全て消費してしまえば俺は意識を失う。もし強い魔物の召喚に失敗した場合、もしくは召喚した魔物が倒されてしまった場合。俺は何も出来ずに壊される可能性がある。
だが今も近づいて来ている侵入者に対抗できる、最も希望がある選択だ。
「今、侵入者は—って、もう大広間まで来てるじゃねぇか」
俺は急いで指示を出した。
「ボブゴブリン達とナイトウルフ。お前たち、悪いが俺が召喚し終えるまで時間稼ぎをして来てくれ」
そう指示するとゴブリン達は大広間は向かって行った。
リスクもあるが、可能性は高い召喚に賭ける!
「ええい、このまま悩んで死ぬより、最後まで最後まで足掻いてやる!」
できれば最大値で召喚したかったが。
『余剰魔力も通常の魔力と同じく運用可能です』
そうなのか。それなら俺の全快以上の魔力になる。
ふぅ、よし。
悪魔でも、天使でも、ドラゴンでも何でもいい。とにかく強い奴、現状を覆すことのできる魔物。
俺の現状全魔力を使って。
「スキル:召喚、発動!!!」
瞬間、召喚の魔法陣が現れ、途轍もなく神々しい光が放たれた。
俺はそれを何とか気力を保ちながら見届けた。
召喚陣は白く光り、陣の中心から現れたのは。
巨大な目玉から、美しく白い翼が生え、不思議と神聖さを醸し出す、異形の存在だった。
俺は最後の力を振り絞り指示を出す。
「あとは…たの…nだ」
俺の意識はそこで完全に途絶えた。
「お任せください。我が主よ」




