裏側
目の前に現れたモニターには3人の男達が映っていた。
「こいつらが侵入者か、…冒険者とかか?」
『いえ、彼らはおそらく盗賊です』
そうなのか。まっ、確かに悪党顔はしているが。お頭とかさっき言っていたからな。さっき1人だけ入って来てたのは斥候か何かね。
「さて、問題はこいつらをどう撃退するかだ。せっかく仕掛けた罠は避けられたり解除されたりしてるから、役に立ってないし」
やっぱり、各個撃破とかが1番なんだとは思うんだが、孤立できるような仕掛けなんてないしなぁ。
『こちらの魔物の数を活かして、一気に片付けることを提案します』
「やっぱ、それしかないか。よしあいつらが大広間にたどり着いたら魔物達を突撃させよう。一応ちょっとした罠も用意してな」
侵入者の様子を見ていると。
『…そう言えば昔酒場で聞いた噂なんだが。ダンジョンを攻略してダンジョン・コアに触れるとそのダンジョンを支配できるらしいぞ』
こんな事を言っていた。
ダンジョンマスターになれるってのは一般人的には噂話なのか。
まぁ、普通に知られてたら大問題だよな。その辺の盗賊とかがダンジョンマスターになっちゃたら大変だからな。そりゃ、国家機密みたいな扱いになるか。
…しばらくして、侵入者達が大広間にたどり着いた。
「いくら何でも警戒心なさすぎないか?こんな堂々と歩くとは」
まぁ、俺にとっては都合がいいが。
侵入者が広間の中央に差し掛かった時。
「今だ!」
俺の罠が発動した。
「名付けてスライム窒息トラップだ!!」
『…』
何の反応もこない。
ナイトウルフが見かねたのか、俺に近づいて来てペロペロ舐めて来た。
「お前はいい奴だな」
まぁいい、そんなことより
「見事に引っかかってくれたなぁ。2人だけだけど」
単純だけどいい罠だと我ながら思う。スライムは弱いが侮っちゃいけない。
「最後の1人は物量で勝負だ。—行け」
俺の合図で大広間に大量の魔物が流れ込んだ。
これだけやれば倒せるだろ。罠にかからなかった奴は物量で、かかった奴らも念の為とどめをさしておこう。
侵入者の撃退を見届けた俺は魔物達を元の配置に戻した。
「ふぅ、何とか倒すことができたな。これで一安心だ」
と言うか、人を殺しても何も感じなかったなぁ。確かに死にたくないと言う気持ちはあったし、自分の手で殺した訳じゃないけど、少しも動揺しないとは。一応、記憶は無くても人間だったと思うんだけどなぁ。
…まぁいいか。俺、もう人間じゃないし。ダンジョン・コアだし。人間の敵だしな。深く考えないでおこう。
すると俺が居る部屋に向かって足音が近づいて来た。護衛のゴブリン達が戻って来たのだろう。
「おう。侵入者の相手、ご苦労。助かったよ」
俺がそう言いながらゴブリン達の方向を向くとそこにはゴブリンが2人しかいなかった。
「ん?」
そこには緑色の肌をした筋肉質な男が2人、ゴブリンの横に立っていた。
「えっ、な、何でだ侵入者は撃退したはずだ⁉︎」
いや、落ち着け俺。目の前の男たちは確かに人間に見えるが服は腰蓑だけだし、何より肌が緑色だ。と、いうことはだ。
「この2人は侵入者を倒したことによって進化した元ゴブリン!どうだ!」
『その通りです』
よし!
『このもの達はゴブリンから進化したホブゴブリンです。人間に近い外見をしており、ゴブリンよりも高い知性と能力を待ちます』
ホブゴブリンかぁ、また定番の種族だな。
「侵入者は3人いたのに、進化したのは2人なのか?そもそも、どうやって進化するんだ?」
『魔物の進化の基本は魔力を貯めることです。余剰魔力を一定以上貯め、貯めた余剰魔力を消費することによって進化します。余剰魔力は生物を殺害、また魔力が含まれている物体を接種することにより、魔力を貯めることができます』
「余剰魔力…、つまりは経験値みたいなものか。経験値を一定量貯めて進化すると考えれば分かりやすいな。今回は侵入者が3人で2人分の魔力しか無かったってことか」
『いえ、魔力の一部はダンジョンを通してマスターに流れ込んでいます』
「え、そうなのか。…なんか横取りみたいで嫌だな。…おぉ、確かに俺の魔力とは他に何か感じるな。でも一定量ってどれくらい貯めるんだ?容量が果てしないように見えるんだが」
というか、そもそもダンジョン・コアって進化できるのか?
『余剰魔力の容量はその者の最大魔力量の倍程度です。果てしないように感じる理由はダンジョン・コアという種族が元々最大魔力量が多いからです』
「なるほど。で、進化の方は?」
『…ダンジョン・コアは進化可能です』
お!
『魔力を貯める事でハイダンジョン・コアに進化が可能です』
おぉ、ハイ、か。進化が楽しみだな。このまま順調に行けばすぐ進化できるだろ。多分。
この時の俺は初めての侵入者を倒し、浮かれていたから気づかなかった。
侵入者達が言っていたお頭という存在が近くにいる事に。
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「ここがあいつらがいなくなったて言う洞窟か」




