準備
今日も今日とて俺はダンジョンを広げている。
現在は二八階層までになっている。
ちなみに俺は今ダンジョン・コアの身体だ。あのロボットは完全にお出かけ用だな。
「そろそろ魔力濃度とやらは落ち着いてきたんじゃないか」
『ダンジョン内の魔力濃度は正常値に戻りました』
やっとか。
ウォルターとか他の魔物も結構召喚したからな。
減っては増えての繰り返しだ。
二八階層で終わると中途半端だし、三十階層まで作っておこう。
そうこうしていると突然背後から声がかかった。
「アヴィリル様。ミカエル殿とウォルター殿が帰還しました」
オボロだ。
完全に連絡要員になっている。
「お、おう。わかった。今行く」
「では」
その一言と共にオボロは影へと消えていった。
もう慣れたとはいえいきなり後ろに立たれて声をかけられるのはビビるな。
…そろそろオボロ以外の連絡手段を確立しないとな。
そうしないとオボロが過労で倒れてしまう。
ていうか演算機ならオボロが現れるの分かるよね?
俺のスキルを完全に使いこなしてるんだから
『はい。マスターのスキル【魔力制御】によりマスター周辺の魔力の揺らぎなどは即座に感知可能です』
だよな。
なんで教えてくれないんだよ。
一々ビビってたら威厳ある主感が出ないじゃないか。
『オボロには敵意はありませんでした。その為問題なしと判断し、報告しませんでした。私はマスターの補助ですので、私が全てをこなすのはマスターの為になりません』
ぐっ、言ってくれるじゃないか
『その結果が先日の痴態に繋がったのではありませんか?』
痴態?
『マスターがダンジョンの外へと出た際、スライムと遭遇し、死闘の末勝利した件です』
…くそ、正論じゃないか
いやしかし前にも言ったがあの時のスライムは得意個体だったんだよ。
『いえ、あのスライムは通常個体、低位の魔物です』
演算機でもわからないレベルの隠蔽でもしていたんだよ。
そうに違いない。俺は信じている。
『…』
分かったよ、認める!あれはただのスライムだ。
…後でシュラのところに行こう。戦闘の訓練だ。
目指せ打倒スライム!
と、その前にとっとと階層を追加してしまおう。
拠点なんかの施設の移動もな。
最下層三二階の拠点へ戻るとミカエルとウォルターが膝をついて俺を迎えた。
「よう。二人とも。おかえり」
「ハッただいま帰還いたしました」
「それで今回戻ったのは経過報告か?」
それとも、もうライアーの情報にあったダンジョンはなくなったか?
二人が外に行ってから結構経つからな。
「はい。ライアーの情報にあったダンジョンは全て攻略し終わりました。周辺に残っているものは既に発見され、冒険者ギルドに管理されているもののみです」
まぁそうだよな。
二人が今まで攻略したダンジョンは四つ。
どれも未発見で、最初のダンジョン以外は、山の頂上などたどり着くのも困難な場所にあったそうだ。
それでも近くに四つもダンジョンがあったことに驚きだけどな。
発見済みのものも含めたらもっとだ。
この世界でのダンジョンはそんなに珍しいものではないのかもしれない。
因みにその四つのダンジョン・コアを吸収したが、進化はしなかった。何かが強化されただけ。
演算機によれば魔力容量が増えたらしい。
「攻略ご苦労。これからはどうするか」
「その件につきまして一点、提案がございます」
「なんだ?」
「我々は冒険者としても活躍し、先日三級冒険者へとなりました」
おぉ〜それは凄い…のか?
「その際冒険者ギルドから一つの依頼が提示されたのです。それは王都への護衛。この依頼を受けようと考えています。王都ともなれば情報も多く集まります」
「確かにそうだな。よし、これからは外の世界の情報収集に力を入れる事にするか」
「ハッ、私の考えにご許可をくださり感謝いたします」
王都まで行けばもっと凄いダンジョンの情報とかもあるだろう。
もしかしたら、魔王や勇者なんてのも居るかもしれない。
いやぁ、今から報告が楽しみだ。
俺も行けたらなぁ。
…
……いや、行けるよ。そうだよ忘れていた。
俺が身体を作ったのはスライムを倒す為じゃない。外に出て冒険する為だ。
「では、今からギルドでへと向かい依頼を受けて参ります」
「待て。許可を出したがやっぱり一つ条件を出そう」
「…条件とはどの様なものでございましょうか」
「俺も一緒に王都へ行く」
「アヴィリル様も…いえ、しかしアヴィリル様はダンジョンから出られないのでは」
「そう言えば言ってなかったな。最近出られる様になったんだよ。外出用の身体を作ってな」
身体が出来たの二人が出てる間だからな。
「お、お身体!アヴィリル様の御神体が遂に完成されたのですか!」
「いや、完成では無いけどな。とにかく身体ができた。これでお前達の冒険について行くぞ」
「し、しかし、アヴィリル様の身に何か及ぶかもしれません」
確かにそうだが
「お前らが守ってくれるだろ。ミカエル、ウォルター」
それにたとえ壊されても元のダンジョン・コアの身体に戻るだけだしな。
そう言うとミカエルは先ほどとはまた違った様子で何かを決意した様な顔で
「ハッ!この大天使ミカエルが必ずや御身を外敵から御守りいたします」
「我々が、アヴィリル様にあだなす全てを殲滅して見せましょう」
おぉ。二人とも気迫が凄い。
周辺の魔力が一気に濃くなったぞ。
「おう。頼んだぞ」
「「ハッ!」」
「それで、その依頼とやらはいつ開始なんだ?」
「一週間ほど先になります」
なるほど依頼まで一週間か。
…ならその一週間で俺は【剣術】のスキルを手に入れるとしよう。
——————
俺は現在ロボットに乗り移り拠点の一つ上の階、三一階層に来ていた。
三一階層には訓練場や実験場など一部の危険な施設はこの階層に分けてある。
理由としては訓練中は白熱して魔力なんかが溢れまくって低位の魔物などが息も絶え絶えな状態になるらしい。
だから移動してくれとオボロやシュラからそう提案されたのだ。
アイツらは配下の魔物から相談されたらしい。
何故常にダンジョンにいるルシフェルが相談相手では無いのかと言えば、怖いかららしい。
確かに怖いけど。
まぁあの二人に相談した理由はゴブリンから高位まで進化したと言う過程もあるだろうな。
一つ上にした理由は他にもあるけどな。
訓練場を上にしたらもし冒険者が攻めてきても守れるだろうと言う理由が。
そんなこんなで訓練場にたどり着いた。
訓練場の外観は見事なコロッセオだ。
こんな建築を誰がしたかって?
それはな俺…ではなく最近召喚した土妖精にやってもらったのだ。
ちなみに妖精は中位の魔物だ。
適当に召喚してたら人型のやつが出てきて気になってステータスを見たら土妖精。しかもメインクラスが〈大工〉ですよ。
見つけた時は喜んだね。そのままのテンションで名前を付けるぐらいには。名前はダイダロスだ。
早速建築を頼んだね。これからはダイダロスがダンジョン内の棟梁だ。
…と、めちゃめちゃ脱線したが、訓練場内に入ると中では複数の魔物が訓練をしていた。
ある者は的を剣で斬り、ある者は魔法で打ち壊している。
視点を変えれば模擬戦をしている連中もいる様だ。
そしてその中、一際激しい模擬戦を繰り広げているし二人がいた。
一人は周囲の魔物よりも体格が大きく引き締まった身体に頭には鬼の角を二本生やした魔物。
もう一人は目の前の鬼を超える身長、赤く隆起する肉体頭部に特徴的な大きな角と牛の顔を持つ魔物。
両者はそれぞれ大剣と両刃斧を構えている。
シュラとウォルターが連れてきたミノタウロスだ。
その二人がレベルの高い攻防を繰り広げ、周囲の訓練中の魔物も訓練をやめ、見守っていた。
「すげーなあの二人。さすがは高位種族」
それからしばらく俺は二人の模擬戦を眺めながら終わるのを待った。
約十分ほどのち、模擬戦はシュラの勝利にて終わった。
「よし、終わったな。お〜い、シュラ!」
俺が声を掛けると慌てた様にシュラが振り向いた。
「あ、アヴィリル様!いらっしゃったのであれば声をかけていただければ良かったのに」
「いや、訓練してたし、急ぎの用でもないしな…それとシュラ、模擬戦だけど勝利おめでとう。カッコよかったぞ」
「ありがとうございます!」
そういってシュラが勢いよく頭を下げた。
「ミノタウロス。お前も良かったぞ」
具体的には言えないが
ミノタウロスは無言のまま頷き、大斧を背中にしまいそそくさと出ていった。
「おい、ミノタウロス!…すみませんアヴィリル様。悪い奴ではないのですが」
いやまぁいいんだけれどね。
ここに来た経緯がウォルターに負けて引きずられてきただから、あんまり俺のことをよく思っていないのかもしれない。
「それで、用というのは何ですか?」
「あぁ。用っていうのは、実はシュラに俺を鍛えて欲しいんだ。具体的にはスライムをボコせるぐらいに」
「スライムに…分かりました。とりあえず一度戦っている姿を見てみたいので—この的に攻撃を仕掛けてみてください」
シュラが俺の前に人型の的を持ってきた。
今の身体だと足元ぐらいしか狙えないが
「よし、いくぞ。—やぁ!—はっ!—とやっ!」
俺は剣を握りしめ、的に攻撃を仕掛けた。
自分なりに考え、漫画でみた剣技を真似てみたが結果はお察し通りだ。
横まで見えるシュラが何か見てはいけないものを見たような顔になっていた。
「どうだった?シュラ」
「あ、えぇ。はい、そうですね。アヴィリル様は何かしら剣術の心得をお持ちなのでしょうか?
所々に、やけに鋭い部分がありますが」
「いや…何となく適当に…」
ただ真似ただけだからな。
「そうですか。では、まずは基礎から始めましょう。…といっても、アヴィリル様はそのお体なので参考になるかどうか」
まぁ確かに、俺人型じゃないからな。
球体に手足がついているだけだし。
「とりあえず基礎を教えてくれ。腕の振り方なんかは参考になるからな」
「分かりました。アヴィリル様は【剣術】をお持ちでないですよね。でしたらまずは【剣術】スキル獲得を目指しましょう」
「おう。じゃあ最初は何だ?」
「初めは素振りからしていきましょう」
…こうして、シュラからの剣術指南が始まった。
剣を習うのなんて初めてで最初は苦戦したが、シュラの教えと演算機からの助言もあり、順調に進んでいた。
——俺が、シュラの剣術指南を初めて一週間が経過した。
ミカエル達の依頼について行く日だ。
『熟練度が一定に達しました』
『スキルを獲得します』
『以下のスキルを獲得しました。
スキル【剣術】』
「ふぅ、何とか間に合ったな」
やったのことスキルを獲得できた。
まさか一週間全部かかるとは。
「スキル獲得おめでとうございます」
「おう。シュラもこの一週間付き合ってくれてありがとうな」
「いえ。こちらこそ。アヴィリル様に指南をするなんて貴重な機会をいただきましてありがとうございました」
「いやいや。まぁ一旦はこれで終わりだ。また今度頼むよ」
「はい」
訓練場を後にした俺は拠点にてミカエル達と合流した。
「お待ちしておりました」
「おう。じゃ、早速行くか王都へ」
約一ヶ月ぶりの更新となってしまい申し訳ありません。
実は飽き——じゃなくて気分転換に新作の設定を考えていました。
新作を投稿するかは未定です。




