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大迷宮の創造者  作者: POG
第2章

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執事と新たな目的

 執事が欲しい。


 最近、ミカエルがひどい。

 ダンジョン内の知性のある魔物に対して宗教勧誘を行っているのだ。


 そろそろもう一人ぐらいまともな奴が欲しい。ミカエルを止められるぐらい強い奴が。最低でも最高位の魔物が。


 現状はルシフェルだけだからな。だがアイツも忙しいのだ。


 そこで考えた。今足りないのは何だろうと。まともという要項以外では何だろうと。


 ルシフェルの代わりにミカエルを止められる奴に与える役職。つまりは執事だ。


 こじつけ感があるが、とりあえず執事が欲しいんだ。


 初老で敬語で銀髪で強い奴が欲しいんだ。

 見た目は完全に俺の癖だが。

 メイドが居るなら執事もいないとダメだろう。


 今まで使用人の枠がルシフェルだけだったのがおかしい。

 まぁ命じて無いだけで似た様な事を皆んなしてるけど。

 役職としては現状ルシフェルだけだからな。


 大体ルシフェル、メイドなのにそれ以外の仕事が多過ぎるんだよな。

 分割をしよう。執事だ。


 言い訳はもういいだろう。

 よし。善は急げだ。

 早速召喚しにいこう。



 俺は新しく出来た召喚施設に来た。

 建築の専門家がいるわけじゃないから、あまり出来はよく無いが、それなりに大きな施設だ。


 施設と言っても壁で囲っているだけの開けた場所だ。どんな魔物が出るかわからないからな。


 一応アヴァロンも後ろで控えている。召喚した魔物は俺に攻撃はしないだろうけど、意図しない攻撃が来る可能性もあるからな。


「よし、召喚しよう」


 初老、銀髪、強い奴。

 今まではなんとなく強い魔物と願って召喚していたが、こうやってはっきり目的を持って召喚するのはアマクニ以来だな。


「【眷属支配・召喚】」


 スキルを発動した瞬間、目の前に現れた召喚陣は今までで一番巨大なものだった。


 巨大な陣から現れたのは一体の竜。だがその身体は半透明であり、実体はなかった。

 俺たちを一瞥した後


「グオオォォォォ!!」


 竜が咆哮し、施設が揺れる。

 揺れは二一階層だけでなくダンジョン全体へと伝わった。

 咆哮を終えた半透明の竜は一瞬だけ光ると消え去った。


 だが、陣の中央には一人の人物が立っていた。


 長身、綺麗な銀髪を後ろで結び、貴族の様な服に身を包み胸に手を添え立つ、初老の男性がいた。


「…お初にお目にかかります。主様。この人竜、主様の願いに応じ、参上致しました」


 人竜と名乗る初老の男性の頭部と腰には半透明な角と尻尾を携えていた。



「先程は失礼致しました。覇気が少々漏れた様で」


 …先程?さっきの咆哮のことか?確かにアヴァロンが前に出て来なければ俺は吹っ飛んでたかもな。


「どうか警戒を解いてくださいませんか?御三方」


「随分とはしゃいだ挨拶だな」


「そうですね。アヴァロンが居なければ主様がお怪我されたかも知れません」


 気づくと、背後にはミカエルとルシフェルが立っていた。


「その点に関しては謝罪致します」


「まぁいい。俺は特に怪我もしてないしな。謝罪を受け取ろう」


「御慈悲感謝致します」


 …皆んな好きだねぇ御慈悲が。そんなに重く受け取る必要ないんだけど。


「とりあえず自己紹介をしとこうか。俺の名前はアヴィリル。俺の横のデカいのがアヴァロンで、メイド服を着てるのがルシフェル。そしてこの胡散臭いのがミカエルだ」


「なるほど。理解致しました。もうお一方のお名前を伺ってもよろしいですかな?」


「もう一人って、今言ったので全——」


 俺が言い切る寸前、被せるように声が聞こえてくる。


「まさかこんなに簡単に最高位の種族を召喚するとは。驚きですね」


 声の主は俺たちのすぐ背後に何事もない様に立っていた。


 ミカエルやルシフェル。その他大勢の魔物に気づかれずこの場所まで来た青年。


 ミカエルは振り向きざまに青年に対して言葉を放つ。

「…貴様。やはり死んではいなかったか」


「いえ。死にましたよ。ですがまだやる事があるものですから。また、お会いしましたね大天使—いや、ミカエルさん」

 その青年はアルバのダンジョン内にてミカエルにより頭を潰され、息絶えたはずの人物。


 ライアーだった。


 ミカエル達は即座に警戒し、戦闘態勢を取る。人竜も状況を理解し目の前の人物を敵、最低でも味方ではないと判断した。


「そんなに警戒しないでください。ワタシは敵ではありませんよ。…味方でもありませんが」


 コイツがミカエルの言ってた不審人物。ライアーか。

 見た目は至って普通の人間に見えるが。絶対何かあるだろ。


 演算機はどう思う。


『ミカエル達に気づかれず侵入したという事はスキルで言えばユニーク、種族は最低でも最高位以上の実力を持つということになります』


 最低でも最高位って。

 ミカエルとルシフェルの模擬戦は大体互角、相性差もあるだろけどそこまで大きな差とは思えない。

 隠れることに特化してるとかなら、まだ安心できるが。

 これが単純な実力差の場合、大変まずい状況ということになる。


 とりあえずコイツは確証はないが人間ではないと思う。


『私も同意します。人間の最高位、高位人間(ハイ・ヒューマン)はここまで異質な存在ではありません。私の演算も不可能です』


 あのプライドの高そうな演算機さんが異質、そして演算が不可能と言うとはその時点で、ヤバいな。


『現時点でという事です。解析進め突破口を模索します』


 お願いしますよ。


「そろそろお話してもよろしいですか?」


「あぁ。じゃあここに来た目的は何なんだ」


「目的ですか」

 ライアーは思案する様に少し下を向く。


「特にありませんね」


 ないのかよ!


「強いて言うなら、貴方に興味が有ったものですから。ミカエルさんの主である貴方に」


「俺に…」


「はい。通常こんな出来たばかりのダンジョンに最高位種族である大天使や大悪魔が居るのはおかしいものですから。今回はさらに人竜まで召喚された様で」


 いやまぁ。確かに俺も客観的に見ればおかしいと思うけど。

 正直、今のところ利点しかないから気にしていなかったな。ミカエルはリリースしたい気持ちが若干なくはないけど。


「そして何よりもおかしいのは貴方ですよ。ダンジョンマスターさん。通常コアに自我など存在しませんから。コアはあくまでダンジョンの心臓。コアに触れる事でダンジョンマスターになるのですから」


「コアだけのダンジョンも確かあるはずだ」。


「確かにコアだけのダンジョンも存在しますが、あれはどれだけ深く広くとも全て洞窟ですから。貴方は一体何なのですか」


 今更俺が何なのかと聞かれても正直俺自身もよくわかってないんだが。

 …とりあえずここは定番のセリフを言っておこう。


「おかしいとか関係ない。俺は俺だ」


 ふっ。決まったな。


「そうですか」


 えっなんか軽くない。


「分かりました。では本題に入りましょう」


 今までの本題じゃないのかよ!俺、超カッコつけたのに。


「先程目的はないと言いましたが、実はあるのです。先日ワタシが侵入し、情報収集をしたお詫びです」


 お詫びって今のところ実害は出てないが。ミカエル達が依頼主を倒したらしいし。


「受け取って頂ければ幸いです」


「わかった。で、お詫びの品は何なんだ?」


 何か持ってる様には見えないけど。


「他のダンジョンの情報、欲しくありませんか?」





 ——————




 ライアーは目的を終えるとそのままかえっていった。


 はぁ。メチャメチャ緊張したぞ。

 無いはずの心臓がバクバクいってる。


 だが、今後の目的は出来たな。他のダンジョンの情報は俺の進化にも繋がるし、どんな脅威があるのかの手掛かりにもなる。


 とりあえず人竜の話に戻ろうか。


「人竜じゃ呼びづらいからお前に名前をつける。ウォルターだ。お前の名前はウォルター=エヴァンスだ」


「主様から賜ったお名前謹んでお受け致します」


 執事といえばセバスチャンという人も居るだろうが、俺の中での名前はウォルターなのだ。

 エヴァンスの方は語感が良かったからつけた。意味はない。


「俺の事はアヴィリルでいいから」


「では今後はアヴィリル様と」


 ステータスでも見てみるか


 ——ステータス——

 名前:ウォルター=エヴァンス

 種族:人竜

 称号:なし

 メインクラス:拳聖

 サブクラス: 魔躯士

 スキル

  ・拳聖術 ・魔躯 ・肉体錬成 ・竜霊覇気 ・超速反応 ・魔力纏 ・高速再生 ・魔力制御

 —————————


 糸使いじゃないのか。ちょっと残念。

 …超前衛だな。ミカエルの制御役として召喚したからか?


 そう言えば人竜って何なんだ?竜人じゃないのか?


『人竜とは人型の竜の事を指します。竜が人化したものではありません。竜人とは竜の特徴を持つ亜人でリザードマンなどの進化先に当たります。人竜は戦闘時、頭部と腰に半透明な角と尻尾が現れることが特徴です』


 何だかよくわからないんだが。

 とりあえず人竜は竜人とは違うんだな。そこだけは理解した。


「よし。ウォルター、お前の役職は執事だ。とりあえずの仕事はミカエルがおかしな事をした時止める事だ。他の仕事はルシフェルから学んでくれ」


「かしこまりました。アヴィリル様の執事というお役目謹んで拝命致します」


 執事服が欲しいな。

 だが服を作れる奴がいない。

 ルシフェルのメイド服は自分で用意してたからその事をすっかり失念していた。


「執事服は用意がないから、何とかするまでは今の服装のままでいてくれ」


「かしこまりました。ですが、服については心配御座いません」


 そう言うとウォルターの貴族の様な服が端から徐々に変化していた。


 変化が終わるとそこには見事に執事服を着こなすウォルターがいた。


「私が着ている衣服は元々私の鱗で出来ている物です。ゆえに意思一つで変化可能なのです」


 それ鱗なの⁈

 ただの服にしか見えないんだけど。


 でも執事といえばの手袋は無いみたいだな。それは俺が用意しよう。

 …演算機に頼んで


「改めて、よろしくなウォルター」


「この身、この魂、滅ぶまで御身に変わることのない忠誠を」


 お、重い…

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