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大迷宮の創造者  作者: POG
第2章

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追跡

 アヴィリルの元を後にしたミカエル達はダンジョン出口にいた。


「ここら先がダンジョンの外だ」


 ミカエル達にとってダンジョンの外は未知の世界。

 だが一人だけ過去ダンジョンの外へ出た者がいる。


 それは過去、アヴィリルが外界の情報を得る為に探索へと行かせたゴブリン達の一人。

 今は進化し高位種族、鬼人となったオボロだった。


「ミカエル殿。ここは自分が先行します」

 鬼人にまで進化したオボロやシュラは知性が上がり、片言ではなくハッキリと話すことができるようになっていた。


「確かオボロは以前、ダンジョンの外に出たのだったな。その時は何かあったか?」


「はい。あの時はまだゴブリンであまり探索できず周辺だけでしたが、出た先は森になっており野生動物が生活していました」


「今は変わってるかもしれませんが」と付け足すオボロ。他にも細かな情報をミカエル達に共有していった。


「ふむ、なるほど。理解した。オボロが探索出たのはアヴィリル様がこの地に誕生なさってすぐだったな?ならば、冒険者が跋扈するようになった現在では多少変化はあるだろう」


 ミカエルはオボロの情報を得た上で少し考え

「ここからの作戦指揮はルシフェル、貴様に任せる」


 ルシフェルに指揮を任せた。


わたくしでよろしいのですか。手柄を譲るような真似をして」


 ルシフェルはミカエルの言葉に少し驚き、煽るように言葉を返す。


「手柄を譲っているのではない。貴様のクラスやスキルならば私よりも適任というだけだ。癪だが私は攻撃スキルばかりだからな」


 ルシフェルは【指揮】や【統率】といったスキルを持っており、今回のような少数であっても戦況を見極める目というのは重要だ。

 ライアーに対してマーキングを施したのもルシフェルなのでミカエルは最適だと判断した。


「…少し疑い過ぎてしまいましたね。確かにここはわたくしが適任でしょう」


「では」と一言添えるとルシフェルは指示を出していく。


「オボロは自身に、フェンは我々に【完全隠形】をかけて下さい。アヴィリル様からはダンジョンのすぐ外には冒険者はいないとの事でしたが、先ほど撤退した騎士団がまだ残っている可能性が有ります。それに冒険者は居なくともこのダンジョンの前には冒険者たちが集まる場所が設置されているそうなので、おそらく職員は中にいるでしょうから。オボロには後ほど私がつけたマーキングを見えるようにします。そのマーキングを頼りにオボロは先行し、安全確保を——」


 次々と飛んでくるルシフェルからの指示にミカエル以外は少し気圧されていた


「今の所は以上。何か質問は?」


「…【完全隠形】ではこの人数を完全に隠すのは難しいかと」


 やや気圧され気味のオボロから質問が飛ぶ


「難しい事は確かです。ですがその点に関しては私が〈暗黒領域〉を広げ暗闇にする事でルナクスウルフであるフェンの能力を上げスキルの性能を上げますので心配はないでしょう。それでも完全ではないですが」


 また「質問は?」と投げかけたルシフェルに対して質問はなかった。

 この場にいる五名は全員、高位種以上。指示の内容を理解するまで時間はかからなかった。


「では行きましょうか。オボロ、フェン」


「承知」「ワン!」


 オボロは自身にフェンは全員にとそれぞれスキルを発動していき、オボロは先行してダンジョンの外へと出た。


「私もですね〈暗黒領域・小規模展開〉。我々も続きましょう」


 ルシフェル達を包むように闇が展開される。広がり切ると皆はダンジョンの出口を抜け外へと出ていった。



 ルシフェル達が外へ出るとそこは青い空が広がり、陽光が差し、木々が広がっている。

 そんなダンジョンでは見ることの出来ない光景だった。


 初めて見る外界の景色にシュラとフェンが気を取られる中、同じく初めてのルシフェルとミカエルは別の事に気がついた。


「外界は…魔力が薄いですね」


「そうだな。だが仕方のない事だろう。アヴィリル様のダンジョンと外界とでは規模が違いすぎるからな」


 現在アヴィリルのダンジョンは十階層まであるが他のダンジョンよりも多くの魔力が漂っている。

 狭いダンジョン内にいる数多の魔物、ミカエル達のような高位以上の魔物が現状、八体存在する事でダンジョンの規模に見合わないほど魔力が常に満ちているのだ。


「今はそんな事よりライアーの追跡だ」


「そうですね。シュラ、フェン。そんなに見渡しても何も変わりませんよ」


 ルシフェルが二人に注意を促すと、

 ルシフェルの影が歪み

 先行しているはずのオボロがルシフェルの足元から出てきた。


 ルシフェルの〈暗黒領域〉によって影同士がつながった事によりオボロは【潜影】にて擬似的に転移を再現して戻ってきたのだ。


「ルシフェル殿。マーキングを追ったところ洞窟へと辿り着きました。おそらくダンジョンかと」


 オボロによれば中に入ったところ複数の魔物がおり、魔力の濃度が上がった。


 このことからダンジョンである可能性が高いと判断した。


「なるほど。分かりました。では早速向かいましょうか。異存はありませんか?」


「ない」


 ミカエルが素っ気なく返す。

 ルシフェルは特に気にせずオボロの案内の元ライアーが居るであろう洞窟、ダンジョンへと向かった。


 しばらく後。

 一行はオボロが発見した推定ダンジョンに到着した。


「さて皆さん。ここからが本番ですよ」


 ——————


 薄暗い洞窟の中、一人の男が声を荒げ、怒鳴っている。


「全くライアーの奴、いつまで遊んでいる!」


 ライアーを待っている様子の男は、しかし人間では無かった。

 男の背には歪な黒い羽、頭には見合わないほど大きな角が生えている。

 その男は悪魔だった。


 尚も苛立ちの治らない様子の男は暴れ回っていた。


 数分後、男の目の前に門が現れ、開かれる。中から出てきたのは男が待ち望んでいた人物、ライアーだった。


 その光景を見た男は尚も治らない怒りの矛先をライアーへと向け、魔法を放つ。


 しかし

「危ないですよ」

 寸前で避けられる。ライアーの言葉を聞き、動きは止めたが


「遅いぞライアー!俺がお前に調査依頼を出してからどれだけ経ったと思っている!」


 ライアーを責め立てる。


「そうですね。大体…三十二時間ほどですね」


「そう。三十二時間だ!もっと早く二十四時間以内に俺の要望に応えろ。それがお前の仕事だ」


 理不尽な反応にライアーは怒るではなく呆れていた。


「ワタシはただの情報屋ですよ?貴方以外にも客がいるわけでして。貴方はただのお客様の一人です。三十二時間でも早い方ですよ」


 実際ライアーは男の依頼以外にも複数の依頼や情報収集などをしており、時間は優先度の高いものから行なっていった結果だった。


「人間風情が俺を舐めているのか?俺は悪魔だ!お前程度すぐ殺してもいいんだ」


「…人間風情ですか。不思議ですね、貴方も元人間ではありませんか。魔法使いのアルバ=ノータさん?」


 ライアーに対し理不尽な怒りをぶつけるこの男、アルバも元はただの人間。自身が人間風情と称する人間だった。


「人間だった時からの中ではありませんか。そうカリカリしないで今を楽しみましょうよ」


「うるさい!俺は悪魔への転生を果たした。あの俺を殺しやがった〈魔女〉。特級冒険者なんて呼ばれ、調子に乗っている〈魔女〉への復讐のためにな。その為にお前を雇ってやってるんだ」


 アルバは殺される以前、永遠の命を欲し悪魔の死体を利用した悪魔への転生魔法を発動していた。


(〈魔女〉に執着して振られ、逆上して殺された。そんな最後だったはずですが。彼女もこんな男に目をつけられるとは、大変ですね)


「はぁ…(性格以外)優秀だと言われた貴方がここまで堕ちるとは世界は残酷ですね」


「俺が死んでせいぜい十年程度のはずだ。俺がダンジョンマスターになったのも、全ては〈魔女〉への復讐のため。そのための依頼だ」


 アルバは月日を読み違っていた。


 転生してすぐ復讐を誓い、ライアーを呼び寄せた。だがライアーの姿が全く変わらないことから長くても十年程度と判断したのだ。

 どこか失敗していたのか実際には五十年の時が経っていた。


「そうですね。時間というのは大切です。では早速報告を」


「さっさとしろ」


 ライアーは今回の調査で分かったことをアルバへと報告した。


 ダンジョンは行った限りでは十階層。七から十が遺跡タイプ。

 魔物は多くは普通の魔物。遺跡タイプからはゴーレムなどが増える。ボスはゴーレムであるなどなど。


「大した事はなさそうだな」

 アルバは報告を聞き攻略は容易いと判断した。


「出来たばかりのダンジョンですからね」


「なら早速攻略に行くか」


「発見されたダンジョンなので周りには冒険者が多くいますよ」


「そんなもの冒険者もろとも殺して仕舞えばいい」


 アルバはライアーの情報だけを鵜呑みにし、情報の意味を深く考えず、ダンジョンの攻略、己の強化のみを考えていた。


「注意すべきは他にもありますよ。折角調査したのですから最後まで聞いてください」


「なんだ」


「あのダンジョンには天使と悪魔がいたのですよ」


(正確には大天使(アークエンジェル)大悪魔(アークデーモン)ですが)


「なんだと!チッなら時期尚早か。…他はあるか?」


「いえもうありません。それと今回の依頼料は結構です。遅れた事への謝罪ともう一つのお詫びとして」


 ライアーはやや申し訳なさそうに、しかし面白そうに言葉を紡ぐ。


「タダは当然、謝罪も当然だ。だがもう一つとはなんだ?」


 アルバは目の前のライアーを観察し、一つの事実に気づく。

 それは


「ライアー、お前の胸の辺りにお前のものではない魔力を感じるぞ」


「はい。これはマーキングですね。調査に赴いた際、あちらの悪魔に施されたようでして」


「なに?—まさかライアー、貴様!」


「はい。つけられましたね」


 ライアーがこともなげに告げると同時


「ふん!」

 ライアーの首が飛び壁に激突、グチャという嫌な音と共に潰れ、胴体が倒れる。


 ライアーの後ろにいたのは白い祭服に身を包み、光の翼が生える天使。

 ミカエルだった。


 ミカエルの後方で爆音と共に壁が崩れ、ダンジョン全体に衝撃が走る。


「お、お前は」

 アルバは一瞬、理解が追いつかず、しかし目の前の敵、天使のことだけははっきりと認識できた。


「貴様がライアーの雇い主、このダンジョンの主人か?」


「ハッ、そうだ俺がダンジョンマスターだ。ここは俺の領域好き勝手できると思うなよ!」


 アルバは強がるように正体を明かし、ダンジョンや己のスキルを活かしミカエルに攻撃を仕掛ける。


 アルバは次々にミカエルへ魔法を放つ。火、水、土、風。四属性全てを駆使した魔法を放っていく。

 しかし魔法はミカエルにより避けられ、逸らされ、破壊される。


 アルバは人間時代、優秀と称される魔法使いだった。

 だが優秀は優秀、天才には程遠く。その評価は人間にとっての評価であり、最高位種族、大天使であるミカエルへの道もまた遠い。


(何故だ!俺は優秀だ!特別なんだ!悪魔へと生まれ変わりスキルを得た。〈魔女〉への復讐を果たし、世界を支配する側へと至る者だ!)


 ミカエルのメイス一振りで己の放つ魔法、ダンジョンを埋め尽くす爆炎や氷、全方位から迫る岩の槍、ミカエルを切断せんと迫る風の刃が、次々と破壊され、砕かれていく。



「ま、まだだ!ここは俺のダンジョンだ。まだまだ配下の魔物がいる!お前ら来い!」


 浮かび上がる恐怖を掻き消すようにアルバはダンジョン全体へ指示を出し、配下を呼び寄せる。


 だが、アルバの配下は現れず。

 代わりに


「まだ終わらないのですか?こちらは全て片付けましたよ」


 大悪魔に鬼人が二人、ルナクスウルフが現れた。

 それは、アルバの配下が全滅したことを示していた。


「すぐ終わる」


 ルシフェルがミカエルの元へと向かうと


「これが?」

 腰を抜かし、後ずさるアルバ見たつつそう投げかける。


「悪魔らしい。ルシフェル、貴様と同じだな」


「同じとは失礼ですね。確かにこの者、体は悪魔のものの様ですが、中身は全く別物です」


「そうだな。これで終わりだ」


 そういうとミカエルはメイスを上げ振り下ろす。


「そんな——」

 雑な一撃。

 だがアルバが絶命に至るには十分なものだった。



 アルバを片付けたミカエルとルシフェルはダンジョン・コアの元へと向かった。

 他の三名は残党がいないかの確認と、警戒役として残っている。


「これがこのダンジョンのコアか。アヴィリル様以外は初めて見るな」


「そうですね。ですがこのダンジョン・コアは輝きが薄いですね。それに、そこまで魔力を感じません」


「まぁ通常はダンジョン・コアに意思などないからな。アヴィリル様、あの方が特別なのだ。この様な愚物が支配していたダンジョン・コアと同じと考えるのは失礼だ」


 ミカエルの辛辣な意見に対し、ルシフェルも同意見だった。


「では、戻りましょうか。戦利品としてこのコアもいただきましょう。主様の進化の糧になるかもしれません」


 二人はコアを回収し、


「帰りますよ。主様へ報告しなくては」


 オボロ達に声を掛け、ダンジョンを後にした。


 ——————


 ミカエルの一撃により絶命に至ったかに見えたアルバはしかし、意識のみ微かに残っていた。


 消えゆく意識の中、アルバが見たのは立ち去るミカエル達の背中だった。


(ま、だ…だ。俺は、あきらめない。こんなところでは、終わらない)


 尚も生き残ろうとするアルバは淡い意識の中、どうにか突破口を見つけ出そうと周囲を観察していた。

 そして一匹の狼、ルナクスウルフのフェンに目をつける。


(そうだ。あの、狼だ。ルナクスウルフの身体を、奪う!【強欲の種】【憑依】!)


 アルバは最後の力を振り絞り二つのスキルを発動させる。

【強欲の種】は欲しいと願ったもの入手確率を上げ、【憑依】は対象の身体を乗っ取る事ができる。


 通常、【憑依】で乗っ取れる対象は格下のみ。相性によっては同格も可能だ。

 悪魔はルナクスウルフと同様、高位種族。望みは薄い。だが動物型の魔物は総じて自我が薄く、知性も低いため、憑依は容易いとアルバは判断した。



 アルバはフェンの身体に入り込み、乗っ取りを開始する。


 だが


(ワン)


 精神体となったアルバはフェンにハッキリと認識され、反撃を喰らう。


(この!狼風情が!さっさと俺に身体をよこしやがれ!)


 しかし、一向にアルバはフェンの身体を支配できなかった。


 原因は二つ、フェンの知性が予想以上に高かった事。

 二つ目はアルバは知らぬ要因、フェンが所持しているユニークスキルによるものだった。


 フェンのユニークスキル【唯我独尊】

 それは精神異常を無効化し、精神攻撃に対して絶対的優位を得るというものだ。


 アルバは最後まで読みをはずしていた。

(くそ、ま…だ)


(ワン!)

 自身の油断によりアルバの意識は完全に消え去った。


 強欲すぎた男の哀れな最後である。













 アルバを倒した後、フェンの脳内に言葉が届く。


『熟練度が一定に達しました』

『スキルを獲得します』

『以下のスキルを獲得しました。

 スキル【強欲の種】』


『条件を満たしました』

『スキル【強欲の種】を得たことによりユニークスキル【大罪の種子(1/7)】を獲得しました』


『条件が揃うまでユニークスキル【大罪の種子(1/7)】は秘匿、封印されます』



 フェンは言われた内容が理解できていた。

 が、気にせず帰路へとついた。

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