情報屋
時は少し遡り、オリアンヌ達が撤退を視野に入れた頃。
誰もいないはずの第6階層にて
コツ、コツと足音が響く。
そこには青年が一人何処かへ歩いていた。
ライアーだ。
「いやはや。素晴らしい物を見せてもらいましたよ」
ライアーは今回の出来事について独白していた。
「まさか人工ゴーレムが進化するとは。驚きですね」
ライアーとて魔物のゴーレムの生まれ方は分かっていた。
だが、目の前でその現場を、しかも人工ゴーレムから進化するのを目撃するのはライアーの生の中でも初めての出来事だった。
「この辺りでいいですかね」
ライアーは壁沿いの岩陰に寄ると
「【観測ノ門】」
呟く。
と同時に目の前になんの変哲もない門が現れる。
「さて情報収集はこれくらいで。ワタシは逃げますかね」
扉を開け中に入ろうとした寸前
「まて」
その一声の主、ミカエルによって止められる。
「おやアナタは…天使、いや—大天使ですか。これはまた珍しい」
ライアーのすぐ後ろに立ち、戦棍を向け
「貴様、我が主の創造されしダンジョンに無断で侵入しておきながらそう簡単に逃げられると思っているのか?——ここに来た目的はなんだ」
目的を問う。
「…ワタシは情報屋を営んでおりましてね。今回お邪魔したのは内部調査のためです」
「調査?」
「えぇ。戦力やダンジョンの構造などですね。機会があれば貴方も如何ですか?お安くしておきますよ」
「戯言を。それに貴様、人間ではないな?」
ミカエルは確信があるのか断言する。
「いえいえれっきとした人間ですよ。今はね」
「今は…」
ミカエルはライアーの、得体の知れない存在の言葉を理解しようとするが
「流石に今の状態でアナタに勝てると思っているほど驕ってはいないので、ワタシはこのまま退散させていただきます」
その前にライアーが門を開き中へと進んでしまう。
「—!まて!」
「ではいずれまた会いましょう」
ライアーは徐々に閉まっていく門の中綺麗なお辞儀をして中へと消えていく。
閉まると同時に門は跡形もなく消え去っていた。
「逃げられてしまいましたか、ミカエル殿」
「ルシフェルか」
ルシフェルはミカエルとライアーの問答を闇の中から観察していた。
「ですがマーキングは行いました。主様に報告後追撃に向かいましょう。ところであの者は強かったですか?私も見ていましたが直接見たあなたの意見は?」
「わからない」
ミカエルはライアーについての感想を素直に吐露する。
「わからない?大天使である貴方がわからなかったのですか?」
「ああ。その通りだ。一見すると強さがまるで感じられない。とても闘いを生業としているものではなかった。だが…」
ミカエル、大天使ですら理解不能と言わしめた存在。
相手の正体は以前不明なままだが、
「そうですか。ではそれも含め主様へ報告と警戒を強める必要がありますね」
ルシフェルはそうまとめ、ミカエルと共に主人の元へと戻った。
二人が戻るとアヴィリルがアヴァロンを呼び出し今回の労いをしていた。
——————
「あ、二人とも戻ったか」
所用に行ったミカエルと途中で抜けたルシフェルが戻ってきた。
「結局所用ってなんだったんだ?」
「はい。その事で一つご報告と相談がございまして」
俺は二人から事のあらましを聞いた。
「まさかそんな奴がいたとはな」
そういえば騎士団が侵入した時、ミカエルがなんか引っかってたな。
あの時から気づいてたのか。流石だな。
「お褒めに預かり光栄です」
口に出してないんだけど…
相変わらずだな。
「それで追いかけて追撃に出たいと。…危険じゃないか?相手が何なのか分からないんだろ?」
ミカエルですら分からないなんて怖すぎる。ミカエルはこんなんでも最高位種族だ。相手は最低でも同等以上と考えるべきだろう。
「はい。ですが追撃と言っても、調査の意味合いが強いです。勝てないと判断した場合は即座に離脱いたします」
「私も同行致しますのでご安心ください」
「ルシフェルも行くのか」
そうすると俺の安全が…なんて、いえないよな。
保身に走っている様で、何だか情けない。
『情けないです』
直球だねぇ!
仕方ないじゃん。こちとら戦闘能力皆無なんだから
『マスターの護衛はアヴァロンが居ますので問題ないと判断します。最低でもミカエル、ルシフェルが帰還するまで負ける事は有りません』
確かに演算機の言う通りだな。少なくとも負けはしないだろう。多分。
「よし。追撃を許可しよう」
「感謝致します」「必ずや期待に応えて見せます」
この二人だけで大丈夫だとは思うが、せっかくの機会だ、アイツらも行かせよう。
「シュラ、オボロ、フェン。コイツらも連れてってくれ」
「お言葉ですがアヴィリル様。ホブゴブリンやナイトウルフでは少々不安がございます。まして今回は初めての試みですので」
ミカエルの言いたい事も分かる確かにダンジョンの外は未知の世界だからな。
下手な奴は送りたくない。
だが
「ミカエル。アイツらを舐めてはいけないぞ。今回の一件でアイツら更に強くなった」
そう実は今回の戦闘に参加していたのだ。そこで何人かの騎士どもを倒し、そしてついに
「アイツらは進化を果たしたのだ!こいっ」
俺の呼びかけに答え、出てきた二人と一匹は見た目からして変わっていた。
シュラは少し大きく体格も良くなり、オボロは逆に少しシュッとして細マッチョ体型になっている。二人とも顔付きがどことなく野生ではなく理性的な雰囲気が出ている。
フェンは大きくなって毛並みが良くなってる。多分
フェンだけわかりずらいがステータスを見たので間違いなく進化している。
ちなみにステータスはこんな感じだ。
——ステータス——
名前:シュラ
種族:鬼人
称号:ゴブリンリーダー
メインクラス:闘士
サブクラス:狂戦士
スキル
・身体強化 ・金剛力 ・戦哮 ・大剣術 ・狂化
—————————
——ステータス——
名前:オボロ
種族:鬼人
称号:なし
メインクラス:暗殺者
サブクラス:影術師
スキル
・身体強化 ・完全隠形 ・高速反応 ・技動軽業 ・短剣術 ・潜影
—————————
——ステータス——
名前:フェン
種族:ルナクスウルフ
称号:なし
メインクラス:疾駆者
サブクラス:無法者
ユニークスキル
・唯我独尊
スキル
・完全隠形 ・迅速 ・夜爪術 ・身体強化
—————————
全員が高位種族まで進化した。
とうとう並ばれてしまったよ。
そしてちゃっかりフェンがクラスとユニークスキルを手に入れた。
相変わらずユニークの条件はわからないが。
【唯我独尊】確かにフェンぴったりな名前だ。
アイツ割と自由にダンジョン彷徨いてるし。
「鬼人とルナクスウルフに進化した。どっちも高位種族だし、これで問題ないだろ?」
「はい。問題ございません。ですが全員出てしまうとアヴィリル様の護衛が」
全く心配性だなミカエルは
「そこも心配するな。アヴァロンがいるからな。最低でもお前らが戻ってくるまでは守ってくれる(演算機談)」
アヴァロンなら大丈夫だろう。お墨付きがあるからな。
「だからお前らは安心して追撃に行け。そのライアーとか言うのの正体を突き止めろ」
「ハッ。必ずや情報を突き止めます」
「頼んだぞ。でもヤバいと思ったら帰ってこい。命までかける必要は無いからな」
ミカエル達はすぐさまダンジョンの外へと向かった。
「いってしまったな。アヴァロンも護衛頼んだぞ」
後ろに控えていたアヴァロンにも声を掛けておいた。
あれ以来全く話していないけど。
壊れてないよな。




