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大迷宮の創造者  作者: POG
第2章

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星屑の守護者

 オリアンヌ率いる騎士団は七階層突入後も順調に攻略を進め、9階層目に到着していた。


 先頭を進むオリアンヌの前に次々と魔物が現れ


「ハッ!」


 目の前現れる魔物をオリアンヌは易々と斬り伏せ燃やしていく。

 だが魔物は減ることなく押し寄せてくる。


「キリがないな」


「そうですね。いくら大半が低位の魔物とはいえこれだけくると」


 そばで戦っていた副団長ギブスも同意する。


 ここまでの道中、数名ながらも死傷者が出てしまっている。

 原因は低位の魔物が大半という油断。

 罠や仕掛けに気を取られ大量の魔物が押し寄せたことによるものだ。


「仕方ない、一気に殲滅する」

 オリアンヌの周囲で魔力が高まり始め、感じ取ったギブスがすぐさま指示を行う。


「総員退避!後方へ下がれ!」

 指示を行いつつギブスも盾を構える


「〈豪炎掃滅〉!」


 オリアンヌが剣を前に突き出すと、剣から炎が溢れ出す勢いが一気に増し、豪炎が小規模な爆発を連鎖的に引き起こす。

 前方から迫る魔物へ爆ぜる炎が押し寄せ、次々と魔物を飲み込み、焼き尽くしていく。


 炎の熱により喉が焼けるかのような熱の中

「これでしばらくは収まるだろう」


 オリアンヌは一言そう言うと、再び攻略を再開した。



 後方へ退避していた騎士達はその光景に思わず息を呑んでいた。


「凄まじいですね。ここまで熱が伝わってきますよ」


 ライアーが感想を述べると


「あぁ。だがまだ魔物は残って——って、お前横だ!」


 ライアーのすぐ側に魔物が忍び寄る

「危な——」

 気づいた同僚の騎士が助けようと近づいた瞬間


 魔物は音もなく剣に貫かれ、倒される。


「いやはや、危なかったですね。油断大敵です」

 ライアーは何事もないように先へと進んだ。


「…お前、すごいな」

 思わず声が漏れ、ライアーが振り返らず返答する。


「えぇまぁ。剣はそれなりに長くやっていますので」


「…長くって。お前俺とほとんど年齢変わらないだろ」


「あぁ、そうでしたね」



 先頭を進むオリアンヌの前方に巨大な門が現れる。

 門には意匠が施されており、

 中央には丸い球体。左右には天使と悪魔。上には騎士の絵が施されていた。


「この門の絵には何か意味があるのか?」

 オリアンヌにも教養があるが今までに見たことのないデザインだった。


「いえ、俺も初めて見ますので」

 ギブスも初見の意匠だった


「よし。門を開けるぞ」


 重々しい音と共に門が開いていく。

 門を開けると奥には10階層に続く階段が存在した。


「おそらく次がこのダンジョンの最下層だ。皆、気を引き締めろ」



 降りた先は通路になっていた。

 両端には一定間隔で騎士の像が設置されており、この先に何が待つのかを暗示しているかのようだった。


「この像は…魔物ではないようだな」


「そうですね。魔力が感じられません」


 長く続く通路を騎士団は警戒しつつ進んでいった。


 やがて通路の最奥にて再び門が現れる。


 門には、先ほどの門と同じような意匠が施されていたが、この門に描かれているのは剣を携えた騎士と中央の球体のみだった。


「この先からこれまでよりも強い魔力を感じる。この門の向こうにボスが居るはずだ」


「そうですね。このボスが報告にあった魔力の持ち主だといいんですが」


「そうだな…では開けろ」


 オリアンヌは指示を出し門を開けさせる。


「…騎士?いや——ゴーレムか」


 門を開けた先に居たのは整然と隊列を組んだ五体の騎士達だった。

 中央に鎮座している騎士は他の四体よりも人周り大きく特徴的な中央の核と青い瞳が騎士団一行を、オリアンヌを捉えていた。


 後方から覗いていたライアーも騎士のようなゴーレム達を見て声を出す


「これは…」

(素晴らしいですね。あのゴーレムは。周りの四体はあまり大差はないですが、中央のゴーレムならオリアンヌ団長といい勝負ができそうです)



 ——数秒の間ののち

「中央のゴーレムは私が対峙する。お前たちは他四体を倒せ」


 中央のゴーレム目掛けオリアンヌは駆ける。


 ゴーレム達も簡単には近寄らせない。オリアンヌの前方に盾を構え待ち受ける。

 だがオリアンヌは速度を落とすことなくそのまま駆ける。

 ゴーレムとオリアンヌがぶつかる寸前


「お前らの相手は俺たちだよ!」


 副団長のギブスが同じく盾を構えオリアンヌの前方のゴーレムを吹き飛ばし、道を開ける。


「こっちは任せてください!」


 オリアンヌは一瞥し、頷く。

 そのまま中央のゴーレムの眼前へ辿り着く。


「お前たちは明らかに魔物のゴーレムではないな?人工のゴーレムだ」


 剣先を向けたまま問う


「この先にいるダンジョンマスターがお前たちを作ったのか?」


 だが返答はない。ゴーレムはただただその青い無機質な瞳をオリアンヌに向けるのみだった。


「…ゴーレムに返事を求めたところで無駄か」


 オリアンヌはさらに近づくき間合いを詰める。

 彼女は女性にしては背が高く決して小柄なわけではない。

 そんなオリアンヌが小さく見えるほどゴーレムは大きく存在感があった。


「お前たちにどのような機能があるかわからないからな。先ずは——小手調べだ」


「〈豪炎斬〉」


 オリアンヌは炎を纏った剣をゴーレムの核を目掛け振り下ろす。


 —キィィン!


 彼女一撃はゴーレムが持つ大盾により受け止められ弾かれる。


 弾かれた衝撃でオリアンヌが少し後退する。


「凄いな」


 体勢を直しつつオリアンヌは素直に感嘆していた。


「まさか弾かれるとは。やはり普通の人工ゴーレムでは無いようだ」


 ゴーレムも攻撃されたばかりでは無い。

 反撃を開始する。


 手に持つ長剣をオリアンヌ目掛け横に薙ぐ。


「ぐっ!」

 オリアンヌも剣で受け止めるが完全には勢いを殺すことができず声が漏れる。


「何か特殊能力があるわてはあるまいに、ここまでの力が出せるのか」


 先ほどの攻撃は単純に力の差で負けたのだとオリアンヌは理解していた。



 オリアンヌの戦闘をよそにギブス達は他四体のゴーレムと対峙していた。


 オリアンヌが相手をしているゴーレムほどでは無いがこちらのゴーレム達も妙に連携が取れており、ギブス達は攻めあぐねていた。


「なんなんだコイツらは本当に騎士みたいじゃないか」


 ギブスが愚痴をこぼすほどに戦況は膠着していた。


 ライアーはそんな状況楽しむように眺め


(中央のゴーレムは予想通りの強さですね。ですが他の四体もなかなか。個々の強さはそこまでですが連携が上手い)


「何処かに指揮官でも居るんですかね」

 誰に向けるわけでもなく呟いていた。


「クソっ!さっさと倒して団長の手伝いに行きたいってのに」


「副団長!」


「なんだ!」


「我々がコイツらを押さえます。副団長は団長の手伝いに行ってください」


「…だが」


 現在膠着している理由は単純に連携が上手くせめあぐねているだけでは無い

 ギブスがゴーレムの攻撃を受け止め反撃を許さないようにしていたからだ。


 そんな状態でギブスが抜けた場合、最悪膠着状態から逆転されかねない。


「俺たちを舐めないでくださいよ。副団長一人の穴ぐらい埋めてやります。それに団長と副団長がさっさと倒してこっちに合流した方が楽ですから」


「お前たち…」

 ギブスが周りを見渡すと全員が覚悟を決めたような顔をしていた。


「わかった!お前らこんな紛い物の騎士なんかにやられるんじゃねぇぞ!」


 走り出したギブスの背後で戦闘音が激しく響く。



 オリアンヌと大きなゴーレムとの戦闘は一度の間もなく続いていた。


 オリアンヌの剣術はその悉くをゴーレムに受け止められ、いなされ、弾かれる。

 ゴーレムの力任せに振るわれる剣による攻撃をオリアンヌは防御ではなく全てを避けていた。


「お前はどうやら防御特化のようだな。攻撃が雑だ」


 だが雑な攻撃でも防御を許さない力と敵を捉える正確さがあった。


(私の剣は全て防御されている。だが全く傷ついていないわけでは無い)


 オリアンヌはどうにか付け入る隙を探していた。全力をぶつける、その隙を。


 その行為が逆にゴーレムに付け入る隙を与えていた。


 大盾がオリアンヌの視界を覆うほどに迫る。


「—っ!しまっ!」


 ゴーレムの盾による面制圧。


 これまでの攻撃は全て長剣により行われてきた。

 その為、警戒が自然と長剣の方に多く向いていたのだ。


 オリアンヌが剣を構え防御の体勢を取ろうとしたその時。


「ふんっ!」


 オリアンヌに迫るより前にゴーレムの大盾が止められる。


「っ!ギブス!」


「団長、遅れました!」


 その言葉と同時に大盾を弾き、後退する。


「他の者はどうした。あの四体は倒したのか⁈」


 オリアンヌはギブスが抜ければ形勢が逆転しかねないことを理解していた。


「アイツらに任せました。団長、部下を信じるのも俺らの役目です。アイツらだってこんな紛い物に負けはしません」


「…そうか。部下の成長はいつだって嬉しいものだな」


 二人は盾と剣を構え直し、共に前へ出る。


「奴の防御は私の剣撃を受け続けたことで薄れてきている。次の攻撃で体勢を崩し、最後に決める」


「いくぞ」 「はい」


 二人は共に駆ける。真っ直ぐゴーレムを目指して


 二人をゴーレムは大盾を構え、待ち構える。

 迫る直前。

 ギブスとオリアンヌへ長剣による頭上からの振り下ろしを行う。


 構えも何も無い、技とも言えない攻撃。

 だが、強力無比な一撃だ。


「ギブス!」


「分かってますよ!」


 ギブスが盾を構え応戦する。


「こっちだこの野郎!【攻撃誘因】!」


 ゴーレムの振り下ろしが強制的にギブスへと向かう。


 ゴーレムが長剣を大きく振りかぶる、その瞬間


「ぐっ!今です!」


 オリアンヌが隙を突く。


「〈炎剣・獄砕〉!」


 纏う炎が極限まで圧縮された剣による斬撃がゴーレムの胴と盾の間に繰り出されぶつかる瞬間


 ——ドォン!


 爆炎が炸裂しゴーレムの盾が吹き飛ばされる。

 鉄壁の守りを崩したのだ。


 オリアンヌは一瞬の確認後すぐさま追撃を開始する。

 一撃で敵を、ゴーレムを断裁する必殺の一閃を


「〈真・豪炎一断〉!」


 先程以上に圧縮された炎が斬撃と共に解放され一直線にゴーレムへと向かう。


 盾を失ったゴーレムは長剣を構え防御する。

 だが、その防御も虚しく、その巨体が壁まで吹き飛ばされた。


 オリアンヌの斬撃はゴーレムを完全に断ち切る事は叶わなかった。

 だが、ゴーレムは核の一部に傷がつき機能を停止した。


「…やりましたか」


「あぁ。切断は出来なかったがな。一体何で出来ているんだか」


「この先、ダンジョンマスターのいる場所でわかるんじゃ無いですか?」


 オリアンヌは剣を下ろし周りを見渡す


「そうだな。それにどうやらあっちも終わったようだ」


 振り返ると、部下の騎士達が最後のゴーレムを倒している姿があった。


「素晴らしい成長だ」


「ですね」


 会話を交わした二人は部下達と合流し、被害報告を確認する。


「怪我をした者は治療を、他のものは次の準備だ」


 騎士団はダンジョンマスターの元へと向かう準備を行なっていた。






 機能を停止したゴーレムはその実、壊れたわけではなかった。

 炉心核(リアクター・コア)の一部が停止し、身体が動かない状態でいたのだ。

 青い瞳は消える事なく己の敵を捉え続けていた。


「よし、ダンジョンマスターの元へと向かうぞ」


 オリアンヌのその指示を、その言葉を聞いた瞬間。

 ゴーレムの自律演算術式内で自身の主人との会話の記録が呼び起こされる。


 ゴーレムの核を、新たな核、炉心核(リアクター・コア)へと換装を終えた直後。


『ついでにお前にも名前をつけてやる』


 次々と蘇る守るべき主人の言葉。


『一番最初に作ったのに今までゴーレムって呼んでたからな』


 この瞬間、ゴーレムはただの人工ゴーレムではなくなっていた。


『実は前々から考えていたんだ。』


 通常の演算術式ではあり得ない、〈思い出す〉と言う行為。


『守りの意味を込めてこんな名前はどうだ?』


 その行為は明らかに機械ではなく

 ——生物の行為だ。


 ゴーレムは動かないはずの身体を無理矢理動かし、立ち上がる。


 それに気づいたオリアンヌはすぐさま指示を出す。

「総員、警戒体勢!」


 目の前のゴーレムからは機械のような声が聞こえてくる。


「私ノ名前ハ——」


『お前の名前は——』



        『「アヴァロン」』



 瞬間、ゴーレムの周囲から魔力の霧が溢れ、ゴーレムの全身を覆っていく。


「な、なんだ。何が起こっている⁈」

 動揺する騎士団。

 だがそれを無視して、霧は濃さを増していく。


 十数秒後

 魔力の霧が徐々に晴れ中にいたゴーレムが現れる。


 だが中にいたのは先ほどのボロボロの姿となったゴーレムではなかった。


 精錬された鎧、美しい意匠が施された長剣と大盾。

 そして特徴的な中心の核が全て元通りの状態、いや元通り以上に洗練された姿となっていた。


 ゴーレムは直立のまま剣と盾を構え、宣言する。


「我ガ名ハ、アヴァロン。

 理想郷ヲ護ルモノ。

 星屑ノ守護者ナリ」



 人工ゴーレム、擬似生命という枠を超え——

 本物の生命、〈魔物〉へと進化した。


 ここにダンジョン内で最も頼れる守護者が誕生した。

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