天使
《盗賊視点》
アゼル達は順調にダンジョンを攻略していた。
「本当にここってダンジョンなんすかね。ぜんぜん罠とかないし」
そう愚痴をこぼす男に対してバッツが答える
「確かに罠も宝箱も無いがここはダンジョンだ。魔物もいるし罠が発動した後もある。多分、アッシュ達が来てすぐだからまだ解除されたまま何だろ」
すると、アゼルから
「おい。本当にアイツらはここでやられたのか?ここにいるのはゴブリンやらスライムやらだけだ。多少油断していても負けるなんてありえねぇ」
ここまで順調に、何の障害もなくこれたことでそんな疑問が生じ、キースに問う。
「はい、確かです。ここに入って行った後ろ姿を見やしたし、その後悲鳴のようなものも聞こえやしたから。」
「お頭、とっととこんな何の旨みのないダンジョンを攻略して帰りましょうや」
「そうですよ。どうせアッシュ達だってヘマして罠に掛かっちまっただけですよ」
そう、部下たちから不満げな意見が出て来た。
この盗賊達からは警戒心や危機感がまるでなかった。それほどまでに順調に進んでいた。
「ふんっ、まぁそうだな。さっさとアイツらを見つけて、戻るとするか」
アゼルも本当にアッシュ達が死んだとは考えていなかった。ヘマをして罠にかかり、身動きが取れなくなっただけだろうと、そんな楽観的な予想をしてた。
しばらく通路を進むとと大きな通路へと繋がっていた。
「おそらくこの道を進むとボス部屋ですね。多分、このダンジョンは出来たばっかなんで、1階層で終わりだと思います」
道に沿って進むと大広間が見てえてきた。
そこには5体の魔物がいた。
「お頭、魔物です。ゴブリン2、ボブが2、ウルフ系のが1です」
キースがそう端的に伝えた。
「ふっ、こんな大部屋にいるんだ、さぞ強いんだろうな。お前らさっさと倒すぞ」
アゼル達が目の前の魔物達に向かおうとすると魔物も行動を開始していた。
「ワウォォォーン」
狼の魔物が吠えるとゴブリン達が突撃して来た。
「ハッ、ボブゴブリン程度が俺に勝てると思うなよ」
アゼルは背から大剣を取り出し、前方に迫るボブゴブリンの1体に振り下ろした。
ホブゴブリンは目の前に振り下ろされた大剣をギリギリ避け、そのまま目の前のアゼルに向かい剣を薙いだ。
「っと。危なかったですねお頭」
キースがすんでのところで、攻撃を短剣で弾いた。
そこから間髪を入れずにアゼルがホブゴブリンを切り捨てた。
「あれくらい、当たったところでどうとでもなったがな」
「ゔゔぅ」
ボブゴブリンから唸り声のようなものが聞こえて来た。
「お頭、コイツまだ生きてますよ。トドメ刺しときやすか」
「ほっとけ。そんな死にかけに何もできやしなぇ。すぐに死ぬだろ」
すると、バッツから声がかかった。
「そっちが終わったならこっちも手伝ってください」
バッツは狼の魔物と戦っていた。
「コイツ、攻撃自体は痛くないけど、いちいち気配を隠しくるんで鬱陶しいんですよ。後、素早いんで攻撃当たんなくて」
言いながらバッツは魔物の攻撃を避けていた。
「それくらい自分で何とかしろ」
そういい、アゼルは周りを見渡した。
ホブゴブリンの一体はアゼルが倒し、もう一体のホブも他の仲間が抑えている。残るゴブリンはすでに死に絶えてた。
(所詮は出来立てのダンジョンか。ここまでの道中アイツらは見つけられなかった。ってことは死んだんだろ。アッシュ達は運がなかったな)
アゼルがそう考えていた瞬間。
広間の奥。ダンジョン・コアがあるであろう部屋から、これまでの人生で一度も感じたことがないような、異様な気配を感じた。
「おい、キース。見て来い」
「…へい、見て来やす」
キース自身も異様な気配に動揺していたが、指示にしたがい様子を見に行った。
(何だ、今のは。嫌な気配がしやがる)
そう思い、キースを見ていると。
様子を見に行ったキースの目の前に、翼の生えた巨大な目玉が現れた。
キースは突然目の前に現れた異形の存在に対して思わず声を上げた。
「うわああぁあぁ⁈!!」
「うるさいですね」
謎の声が聞こえたと同時、謎の破裂音と共にキースの声も止んだ。
アゼルがその瞬間目にしたのは頭の無くなったキースの死体だった。
アゼル達は突然現れた巨大な目玉と仲間が目の前で意味もわからず死んだことによってパニック状態に陥っていた。
パニック状態に陥ったことにより、隙が生まれホブゴブリンと狼の魔物がそれぞれの相手をしていたものが、隙をつかれ一撃を与えられた。
それと同時にホブゴブリンと狼の魔物は巨大な目玉側へと後退した。
(な、なん、何なんだアイツは。あの化け物は)
アゼルは軽くパニックに陥りながらも冷静さを保っていた。
もう一度目玉に目を向けた時、先ほどまで目玉がいた場所にはキースの死体だけで、目玉いなかった。
「なっ、い、一体どこにいっ—」
「勇敢なるホブゴブリンの戦士よ、今治癒を施そう。」
目玉はアゼルに切り捨てられたホブゴブリンのすぐそばにいた。ホブゴブリンは今にも死にそうなほどに傷が深かった。
「大治癒。」
目玉がホブゴブリンに対して魔法を施すと傷口が塞がっていき、完全に無くなった。
ホブゴブリンは立ち上がり他のボブ達のように後退しようとしたが、少しふらついた。
「…ふむ。大治癒では足りなかったか。ならば再生。これで大丈夫なはずだ。後は私に任せ、休んでいなさい」
目の前で死にかけの者が一瞬にして回復されたことに動揺したが、すぐに切り替え目玉に問うた。
「お前は一体何なんだ⁈今の回復なんて王都の神官並みじゃあねか⁉︎」
「私か?私は先程、我が主、…我が神より創造され、侵入者の撃退の神命受けた天使、大天使である!」
「大天使だと⁉︎」
(天使っていや、あの教国にいるって言う神の使いじゃねえか!)
アゼルは新人深い訳ではないが、この世界に広まっている最も一般的な宗教に出てくる存在を思い出していた。
「なっ、何で天使なんてもんがい—」
バッツがそう言いかけた瞬間。目玉…天使から次の言葉が出された。
「さて、侵入者諸君…いや、神の座す場所へ無断で侵入し、それに飽き足らず神の神兵を殺害した神敵よ。
私が我が神に代わり、貴様らに神罰を与えよう!」
そう天使が言い放つと、これまで以上のプレッシャー、恐怖を肌で感じた。
その恐怖に耐えきれず、1人の男が狂ったように叫びながら、天使の元に突撃していった。
「ぁあぎゃあああぁぁ」
「ふん」
天使が迫って来た男に翼を薙いだ。
次の瞬間には突撃した男は消え、ただ大量の血痕のみが残っていた。
「キ、キースと同じ…」
キースの時は頭のみだったが、今度は全身が消し飛んだ。
「私は、攻撃用の魔法はあまりなくてね。だから全員を殴り倒す。」
天使は翼を拳のように固めて言った。
「ひっ、に、逃げろおぉおぉぉ」
アゼルがそう叫び全員が広間の入り口に向かって走り出した。
「逃すわけがないだろう。簡易聖域作成」
天使を中心に白く輝く巨大な魔法陣が展開された。
「な、何なんだこれ!」
アゼル達は突然足元に出現した魔法陣に目を向け、思わず足を止めてしまう。
「この簡易聖域からはお前たちでは逃れることはできない。」
盗賊の1人が聖域の外に走り出した。が、魔法陣の終わり、半透明の壁にぶつかり逃走は失敗に終わる。
「本来は防衛用の魔法なんだがな。こう言うこともできる。外から内、ではなく内から外に出さないようにすることが」
そう言われてアゼル達はただ、呆然とするばかりだった。
「ここから出たくば、私を倒すがいい。…さて、神罰執行の時間だ。」
「くそ、お前らやるぞ。コイツをぶっ殺す」
アゼルが声を上げると同時に天使がすぐ側まで接近し、
「まず、1」
1人が殺された。
「ひっ、—こ、ここの野郎おぉおお!」
剣を振り天使に向かい攻撃をした。
「ハッ」
振り出された剣は天使の拳のように固められた翼に砕かれ、そのまま2人目も死んだ。
「い、行くぞおぉおおお!!」
3人目はメイスを天使の背後から振り下ろした。
だが、天使の方翼で受け止められる。
「メイスか。良い武器だな。貴様には勿体無い」
メイスを奪い取り、そのまま投げ飛ばされ、聖域を抜け壁にぶつかり死亡した。
「おっと、思わず簡易聖域に穴を開けてしまった。だが、良い拾い物をしたな」
天使は奪い取ったメイスで次々と盗賊たちを殺していった。
(ど、どうしてこんなことになった。ここは出来たばっかのダンジョンのはずだろ。なのに何で、天使なんてもんがいるんだ)
アゼルはダンジョンに来たことを後悔していた。
(くそっ、それもこれもアッシュの奴らのせいだ。アイツらがこんなところに来なければ!キースの野郎もだ。わざわざいなくなった報告なんてしやがって)
アゼルはこの期に及んで自分を不幸に招いたのは、アッシュ達やキースのせいにしていた。
ダンジョンに潜ることを決めたのはアゼル自身だと言うのに。
そう考えているうちに周囲の音が止んだ。
「何だ?音が止んだ」
「後はお前だけだな」
アゼルの目の前に天使が現れそう告げた。慌てて周りを見渡すと仲間の死体で溢れていた。
「たっ、助けてくれ!命だけは!俺はあんたの命令だったら何でも聞く!だから、どうか!」
「この期に及んで命乞いとは呆れた男だ。初めの威勢はどうした!お前の号令で、お前の仲間は私に挑み、そして死んだ!お前はこの者達の長だろう?ならば挑め!」
「い、命だけは!何でもやるから!」
「もういい。貴様は何もできぬ絶望のまま死んでいくといい」
天使はメイスを振り上げ、アゼルの頭目掛けて放り下ろした。
「…さて、我が主のお目覚めの時まで、お側でお待ちしていよう」
そう言い、天使はコアのある部屋へ戻っていった。
大広間には盗賊たちの死体だけが残されていた。
戦闘描写が描けない。by作者
この話で連続投稿は一旦終わりです。
後は書き次第投稿します。




