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手乗り魔王のセカンドライフ~異世界に移住したら言語も身体の大きさも違うけど、なんとかなるよね?~  作者: 葉月双
ExtraStory

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3話 もう1人の兄


 例の旅人なんだけど、どうやらクロエのママだったみたい!

 普通にクロエの家で一緒に生活を始めて、メイドたちも丁寧に接している。

 クロエの父親ともイチャイチャしてた。

 ちなみにクロエの父親はアンという名前みたい。


 そして旅人ことクロエママの名前はたぶんブレンダだと思う。

 アンがそう呼んでいた。

 そして今日も、みんなが見てる前でキスとかハグとかしてるの2人!

 いやぁ、見せつけてくれるねぇ!


 よぉし私もクロエとイチャイチャするぞぉ!

 そう思ってクロエの胸の谷間にダイブしようとしたけど、クロエに谷間はなかった。

 私は10年後を楽しみに、断崖のようなクロエの胸にしがみつくのだった。



 なんかレアが胸にしがみついてきたんだけど、これ何?

 家庭教師の女性も手を止めてレアをジッと見詰めた。

 ここはリニイ伯爵家の学習室。


 さっきまでアンジェロとブレンダがあたしの勉強を見学していた。

 していたのだけど、2人はなんだかイチャイチャしはじめ、我慢できなくなったのか腕を組んで部屋を出て行った。

 ちなみにパストルは領地運営省でお仕事中。


「クロエさんは本当に精霊に好かれていますね」


 家庭教師が微笑み、言った。

 ムギは相変わらずあたしの頭に乗ってるし、レアはなぜか胸にしがみついている。

 胸にというか、胸の位置にある服に。

 あたしに胸はない。


「あはは……」とあたし。


 床で寝ているルナベルが、チラッと頭を動かしたのが気配で分かった。

 と、学習室のドアを勢いよく開いた人物がいた。

 ブレンダが戻って来たのかと思って、あたしは振り返る。

 でもそこにいたのは、見たことない男の人だった。

 年齢は20歳前後ぐらいで、大人と少年の間を彷徨っているような感じの顔立ち。

 その人はあたしを見てニコッと笑って、軽い足取りで寄ってくる。

 


 見知らぬ人物が入って来たー!

 でもここ貴族の家だし、不審者じゃないと思う!

 侵入者の見た目も綺麗だしね。

 髪の色がブレンダと同じ空色。


 侵入者の顔立ちはややアンに似ている。

 服装はちょっとお堅い制服だけど、貴族っぽい綺麗さ。

 うーん、これは普通にアンとブレンダの子供だね!

 つまりクロエとパス君の兄弟ってこと!


 やっほー!

 レアだよぉ!

 私は宙を舞ってから手を振って挨拶。

 空色の髪の彼は少し驚いたように目を丸くしてから、とっても丁寧にお辞儀をした。

 なんて洗練された動作!

 まさに貴族!


「ルナベル、ムギ! クロエの兄弟だよ! 挨拶しとこう!」


 私が声をかけると、まずルナベルが寄って行き、空色の髪の彼の足に頭を擦りつけた。

 次にムギが飛んで行き、彼の頭に前足を置いた。

 彼は微笑み、ルナベルの頭を撫でてから、ムギの頭も撫でる。

 気さくな性格みたいだね。



 うわぁ、一瞬でレアたちが懐いた!

 てゆーか彼の見た目ってアンジェロとブレンダを混ぜた感じだから、これもう1人のお兄さんでしょ!

 年が明けたから帰ってきたのかな?

 そう、すでに新年を迎えているので、あたしも11歳になった。

 年が変わったら、みんなで一緒に1歳年を取るのだ。


「男爵夫人、お久しぶりです」

「リニイ伯爵令息……いえ、今は準男爵のウィンストンさんでしたか?」


 家庭教師がカーテシーで挨拶。


「ええ。すでに独立しています」


 やっぱり兄だ!

 あたしは兄の名前がウィンストンだと知っていた。

 確かに官僚っぽい制服着てるわぁ!


「妹と話したいので、外してもらっても?」

「ええ。ではクロエさん、今日はお仕舞いにしましょう」

「はい先生、ありがとうございました」


 あたしは椅子から立ち上がって、お辞儀をしながら言った。

 ちなみに今日習っていたのは、うちの国の全貴族とその紋章である。

 家庭教師が去ったあと、ウィンストンが小さく息をついた。


「初めましてクロエ。ボクはウィンストン・リニイ準男爵。君のもう1人の兄だよ」

「初めまして! リニイ伯爵家の養女、クロエ・リニイです!」

「君は、勉強は好きかい?」

「えっと、そこそこ好きです」


 嫌いではない。

 平民だったら受けられない高度な教育だし。

 まぁ好きかと問われると、お菓子やジュースの方が好き。


「そうか。たくさん本を読むといい」


 ウィンストンが手を伸ばすと、その上にレアが着地。


「ボクは本が好きでね。この家にある本は、子供の頃に全部読んでしまったよ」

「すごっ!」


 あたしは村娘風に驚いてしまった。

 慌てて「すごいですね、えっとお兄様?」と言い直した。


「うん。お兄様と呼んでくれて嬉しいよ」


 ニッコリと微笑むウィンストン。

 見た目はややブレンダよりだけど、中身はアンジェロよりだなこの人。

 パストルとは真逆って感じ。


「実はね……」


 言いながら、ウィンストンがソファに腰を下ろした。

 レアはウィンストンの肩に移動。


「どこに行っても君のことを聞かれるんだ」


 でしょうね!

 精霊士でドラゴンスレイヤーで大聖女っていう、訳わかんない存在だもんね!


「なんか、ごめんなさい」

「いやいや、謝らなくていい。隣どうぞ」


 ウィンストンがポンポンとソファを叩く。

 あたしはおっかなびっくり、ウィンストンの隣に座った。


「だから君のことを聞かせて」


 そう言われても、特筆すべき点とかないんだよね!

 闇の精霊を2人も連れてるとか、そういうのはみんな知ってるし。


「うん、先にボクのことを話そう」


 あたしが緊張していると思ったのか、ウィンストンが自分語りを開始。


「ボクは学者になりたかったのだけどね、貴族院で外交の楽しさを学んで、今は外務省に勤めてるんだ」

「エリートですね!」


「どうだろうね? ボクはしたいことを、ただやってるだけさ」ウィンストンが肩を竦める。「長男だから、父は家を継いで欲しかったみたいだし、母はもっと戦闘技術を覚えて欲しそうだった」


 少し寂しそうな声音だった。

 そっか、ウィンストンが独立しちゃったから、パストルが後継者になったのか。

 パストルはどう思ってるんだろう?


「なのにボクは、剣術は2段だし、魔術も初段のまま」


 ウィンストンがおどけて言った。

 ムギがあたしの頭に着地し、そのまましがみついた。

 ルナベルがあたしの足下に寄ってきて、そこで丸まった。


「知識を得ることの方が、ボクは性に合ったみたい」ウィンストンが言う。「外交だと、相手の国のことをたくさん調べるから、それもまたとっても楽しい」


 なるほど、ウィンストンは今、幸せに生きてるんだなぁ。

 あたしも幸せ!

 ハッピー兄妹!


「さぁクロエ、君のことを聞かせて」

「はい。あたしは何の変哲もない小さな村で生まれて……」


 それから、生贄に選ばれた。

 村でも評判の美人だったあたしは、一瞬にして哀れな子に早変わりってね。

 で、捧げられたんだけど、そこにレアが現れてあたしの人生はまるっきり姿を変えた。

 貴族になって、領地戦を戦って、王様とも話して。


 最近では神殿に頼られて、あとなぜか邪竜を消滅させた!

 あたしは【ふぁっきゅうボール】のことは【大爆裂】と偽って話した。

 いや、対外的には【大爆裂】なんだよね!

 あくまであたしの心の中では【ふぁきゅうボール】ってだけ!



 なんだかとってもゆったりした時間だなぁ、と私は思った。

 クロエの兄とクロエがソファに座って、仲良くお話ししている。

 少し眠くなってきちゃったな。

 私はクロエの膝の上に移動して、そこで寝転がった。


 なんかこう、太ももと太ももの間に落ち込むみたいに。

 あ、クロエはスカートをはいているので、生足ではないけれど。

 クロエが私に触れて、ゆっくり撫でてくれる。

 私はクロエの指にキスをして、そのまま目を瞑った。


 人生は今日も流れていく。

 行雲流水。

 眠くなったら、起きるまで眠る。

 それが今の私の生活。

 というわけで、おやすみー。


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