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手乗り魔王のセカンドライフ~異世界に移住したら言語も身体の大きさも違うけど、なんとかなるよね?~  作者: 葉月双
2章

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8話 ふぁっきゅ!


 スパッとな。

 私は鎌を振って黒トカゲ男の首を刎ねた。


「おぉ! さすがレア様! 華麗なる鎌捌き! よっ! 天下一!」


 なんかクロムギが私を持ち上げてくるので、私は調子に乗った。

 スパスパと黒トカゲ男の身体を解体!

 バラバラと崩れ堕ちたその肉片を、闇の炎で焼き尽くす。

 あとには黒トカゲ男の首だけが残った。

 私はその首を浮かせて、クロエの方に飛ばしてみた。

 深い意味はない!


「ふぁぁぁぁあ!?」


 クロエが変な叫び声を上げて、黒トカゲ男の首に回転飛び回し蹴りを当てた。

 クロエの回転飛び回し蹴りは芸術的な美しさで、私は「ほぅ」と感嘆の声を上げたのだった。


「さすがクロエ様、芸術点の高い蹴り」とクロムギも絶賛。


 クロエは体術も順調に育ってるみたいで良かったよ。

 私も教えた甲斐があるってもんだね。

 まぁ教えたっていうか、クロエの脳内に直接叩き込んでるだけなのだけど。

 さてクロエが蹴っ飛ばした黒トカゲ男の首はというと。


 さっき私に祈っていた司祭の方に飛んで行き、司祭がそれを避けた。

 なので、黒トカゲ男の首は地面を転がってしまう。

 あ、そうだ、鎌消しておかないとね。

 私はずっと【闇の鎌】を持ったままだった。

 この鎌は切れ味がいいので、ウッカリ振り回して誰かいたら大変だ。



「お、お強いですね……」


 イレナがあたしを見ながら引きつった表情で言った。

 レアがいきなり首をこっちに飛ばしてきたから、蹴っ飛ばしただけなんだけど。

 だって素手で触りたくなかったし、蹴りならほら、ブーツ履いてるもん。

 ああ、そっか、避けるという選択肢があったんだ!

 あたしって、もしかして攻撃的なのかなぁ?


「とにかく助かりました」ヘラルドが言う。「精霊王様にも感謝を伝えてください」


 あたしはコクンと頷いた。

 あとでレアにはお礼を言う。

 たぶん雰囲気で伝わるでしょ。


「それにしても、さっきの変身は何だったんだ?」パストルが思案顔で言った。「あんなのが大勢いたら大変だぞ?」


 それは本当に大変だと思うけど!

 でもレアがいる限りあたしと伯爵家は安全!

 あたしと伯爵家が安全なら、とりあえずヨシ!


「大勢いるでしょうね」イレナが強い口調で言う。「あの口上は、邪竜信仰を行っている邪教徒で間違いありません」


 本当にそうなの?

 邪竜ってあたしがテキトーに言っただけなんだけど……。

 大いなる勘違いのもとで話が進んでない?

 大丈夫?


「邪竜の復活……これは一大事ですよイレナ大司祭様」


 ヘラルドが真剣な表情で言った。

 そしていつの間にか、神殿騎士たちも集まっていた。

 黒トカゲ男に攻撃されて、瀕死だった騎士たちの救護も行われている。

 と、レアがあたしの頭の中に魔法の使い方を流し込んだ。

 今!?

 あたしはフラッとする。


「大丈夫かクロエ」


 パストルがあたしを支えた。

 ああ!

 これ【ヒール】だ!

 今いるやつだ!

 レアってば優しい!


 ぶっちゃけレアが【ヒール】使った方が早いと思うけどな!

 でもせっかく教えてくれたので、あたしは【ヒール】を使った。

 1人1人使うのは面倒なので、まとめて全員に。

 そうすると、瀕死だった騎士たちがケロッと起き上がる。


「おっと? 何したんだクロエ、体調がめっちゃいいんだが!?」


 パストルが驚いて言った。

 実はあたし自身も効果範囲にいたらしく、なんか元気が湧いてきた!

 今なら邪竜だってやっつけちゃう!

 ごめん嘘!


「す、素晴らしい!」イレナが両手を組んで、瞳をウルウルさせながら言った。「これは魔術聖の魔法【全体完全ヒール】!」


 そうなの!?

 ああ、でも!

 レアに魔改造されたあたしの魔力量は底なし!

 使い方さえ分かれば、高度な魔法でも使えてしまう!

 レアを見ると、グッと親指を立てた。

 あたしも親指を立てて返答。


「クロエはどんどん化け物になっていくなぁ……」


 はははっ、と乾いた笑いを浮かべたパストル。

 でもパストルも時々レアに改造されてるよね?


「クロエさんは精霊士の上、魔術聖なのですね! ああ! 精霊神様! 感謝します! クロエさんは対邪竜の切り札となりましょう!」


 イレナが跪いて祈り始めた。

 ちょっと待って!

 あたしを勝手に対ドラゴン用の決戦兵器にしないで!



 クロエってば優しい!

 ケガをした騎士たちを気にしていたので、私は騎士たちを回復させようと思ったのだけど、止めた。

 代わりにクロエに回復魔法を教えることに。

 そうすれば、クロエの意思で回復できるじゃん?


 それに回復魔法は覚えておいて損はないし。

 とりあえず最初は普通の【ヒール】からだね。

 で、教えたらクロエはすぐに普通の【ヒール】を全体化して使った。

 あっれー?

 クロエって実は魔法の才能あるんじゃない?

 全体化のやり方なんて私は教えてない。


「ほう……あの幼さで高度な魔法を使うものだ……さすが我の飼い主」


 クロムギもクロエを褒め称えた。


「本当すごいよねぇ。私もビックリしてる」


 でも全体化って高度ではないような?

 もちろん、教えてないのに全体化したんだから、すごいんだけどね?

 女の方の司祭が祈り始め、男の司祭もそれに続いた。

 クロエが崇められているっ!


 いいんじゃない!

 飼い主の地位が向上するのはいいことだよ!

 クロエは聖女とかそういうのになったりして!

 うんうん。


 クロエは優しいし、ピッタリだよ。

 きっと心の中では、常に生きとし生けるものに愛を囁いてるに違いない!

 私にもよく『誰かを助けて欲しい』という類いのお願いをしてくるし。

 美幼女でしかも心まで綺麗だなんて、私の飼い主に隙はないのか!



 ふぁっきゅ! ふぁっきゅ! ふぁっきゅ!

 だぁれが好きでドラゴンなんかと戦うかっての!

 バーカバーカ!

 あたしはこのまま平和に!


 贅沢な暮らしだけを享受したいっ!

 あたしはバッと勢いよくパストルを見た。

 抗議しろ、あたしを駆り出そうとしてるぞ、という意味だ。


「司祭、大司祭、ちょっと落ち着いてくれ」


 パストルが言うと、イレナとヘラルドが祈るのを止めて立ち上がる。

 そしてイレナがコホンと咳払い。


「正式に、クロエさんを神殿所属にしたいとお伝えします」とイレナ。

「嫌です」とあたし。


 教皇には興味あるけど、ドラゴンと戦うのは嫌。

 徴兵されるまで、あたしはスルーするよ!


「今、答えを出す必要はありませんよ」イレナが優しく微笑む。「クロエさんなら確実に教皇になれましょう」


 ドラゴンがいなくなったら、考えるよ。


「というか」あたしが言う。「邪竜が本当に復活したか確認した方がいいんじゃ?」


「それは今、神殿騎士たちが調査活動を行っています」


 ヘラルドが言った。


「さきほどの邪教徒の言葉からも」イレナが言う。「復活はほぼ確実でしょう。各国と連携して邪竜との決戦に備えなければいけません。かつての戦闘では、人類総出でも倒せず、辛うじて封印だけできた、というレベルですから」


 それが事実ならレアでもヤバいんじゃ?

 精霊王がいくら強いって言っても、人類総出には負けるでしょ?

 だって精霊の大まかな強さって……。


 下級精霊が10段の人ぐらいの強さ。

 剣術、魔術は問わない。

 中級精霊が王級の人ぐらいの強さ。

 上級精霊が聖級で、精霊王が神級。


 まぁ神級の人間なんて、歴史上に1人か2人ってレベルの異次元の強さだけども。

 つまりレアは異次元に強いってわけ。

 だけども、人類総出でも倒せなかった邪竜ってどれだけ強いのよ、って話。


「それはそっちで勝手にやってくれ」パストルが言う。「伯爵家としては、国家からの命令がない限り、ドラゴン退治に参加する気はない」


 よく言ったパストル!

 素敵!

 今日のパストルは輝いてる!


「ええ。でも、この領地に現れたら?」とイレナ。


「その時は仕方ねぇだろ」


 パストルが肩を竦めた。

 その時はさすがのあたしもレアをけしかけるよ!

 あとムギも!


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