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手乗り魔王のセカンドライフ~異世界に移住したら言語も身体の大きさも違うけど、なんとかなるよね?~  作者: 葉月双
2章

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7話 我の鱗


 なんかでっかい木が枯れていた。

 私はクロエたちと一緒に建物の外に移動すると、すぐにその枯れた木が見えた。

 クロエたちも木を見て驚いた風な表情を浮かべている。

 司祭っぽい服装の人が、その場に座り込んだ。


 どうやら、枯れてはいけない木が枯れてしまったみたい。

 クロエがビシッと枯れた木を指さして私を見たので、これはきっとあの木をなんとかして欲しいという意味に違いない。


 違いないけど、どうしろと?

 回復魔法とか効くかなぁ?

 試しにエリクサーを振りかけてみる?

 私は【亜空間収納】からエリクサーを1瓶取り出す。

 サイズは人間用に調整しているので、私の身長ぐらいの瓶だ。


 私はその瓶を浮かせたまま、枯れ木に近寄る。

 なんだこの木、微かに精霊の気配がするんだけど。

 まぁいっか。

 私は細かいことを考えない魔王。

 そう、考えない葦なのだ。

 そんなことを思いながら、私は瓶の中身をぶちまけた。


 枯れた木は2秒後にはメキメキと復活。

 しおれていた枝は天を貫く勢いで持ち上がり、ほぼ同時に青々とした葉っぱが生えて、全体的にふぁさぁっとした。

 うん。

 私のエリクサーすごいね!

 どうクロエ?


 ねぇねぇ、私すごい?

 私はクロエの近くに移動し、クロエの周囲をハエみたいに飛び回った。

 クロエは笑顔を浮かべ、惜しみない拍手で私を讃えてくれた。

 座り込んでいた司祭っぽい男性が立ち上がり、そして片膝を突いて祈り始める。

 ん?

 私に祈ってる!?


 いやぁ、困っちゃうなぁ。

 私は神様じゃなくて魔王様だからねぇ。

 しかもこの世界ではクロエのペットの一匹に過ぎないっ!

 そして私はペット生活が気に入っているのだ!

 と、もう1人の女性の司祭っぽい人が、涙を流しながらクロエを抱き締めた。

 その時に、クロムギがクロエの頭から離れて、私に寄ってきた。


「精霊の気配がしますな、レア様」

「うん。あの木、精霊の魔力が注がれてるんじゃない?」


 とか思っていると、私の脳内に語りかけてくる声があった。


(ありがとうございます、ありがとうございます)


 どうやら、木がお礼を言ってるみたい!


「クロムギ、あの木はどうやら半精霊みたいだね」

「ほう?」

「私は全ての精霊を従えているから、精霊とは意思疎通ができるんだけど、あの木ともできちゃった」

「んんんん? 精霊を? ん?」

「えっと、精霊神を全員ぶっ飛ばしたことあって、その時に盟約を結んだのね」


 内容、あんまり覚えてないけどね。

 唯一、人間(前の世界の)に協力するなって内容は覚えている。

 それが一番、重要だったから。

 とりあえず、この前のサラマンダーたちの態度から、私は精霊たちの上位に立っているというのは理解できた。


「……いやぁ、レア様は特別な存在だと思っておりましたが」クロムギが言う。「まさか精霊神全員より強いとは……」


 精霊神ってクロムギが思ってるほど強くないよ。


(邪竜の使徒、ワタシ、攻撃した)


 木がまだ何か言ってる!


「ねぇクロムギ、邪竜の使徒って知ってる?」

「……え?」

「そいつが木を枯らせたみたい」

「……あー、そのぉ、邪竜というのは、たぶん我のことかと……思いますが」

「そうなの!?」


 確かクロムギは昔、人間とは敵対してたんだっけ!

 私的にはクロムギはいいドラゴンだけど、人間から見たら邪竜なのか!


「昔から、我には人間のファンが一定数……おりまして……ははっ……」

「いいなぁ! 私が前の世界で人間と敵対してた時、人間のファンはいなかったよ!」

「はは……その世界の人間、滅びたでしょう?」

「うん。バッチリ滅ぼしたよ!」

「ですよねぇ!」


 クロムギが大きな声で言った。

 それはそうと、木を枯らした奴はまだ近くにいるかも。

 捕まえた方がいいのかな?



 うーん、レアって本当すごいなぁ。

 枯れた聖樹もなんのそのってね。


「素晴らしい、本当に素晴らしい! ああ、精霊王様、クロエ様! リニイ伯爵家様!」


 ヘラルドがなんかハイになって祈ってる。

 ちょっとキモい!


「おのれぇぇぇ!! 闇の精霊めぇぇぇぇ!!」


 突如、男の叫び声が響き渡った。

 あたしもみんなもビックリしてその声の方に視線を向ける。

 そうすると、右手を高く上げた修道者の男がそこにいた。

 右手には何か黒い物を握っている。


「しかし!! すでに邪竜様は復活なされたのだ! 貴様らはじきに滅ぶ! ははははははは! ああ! 邪竜様、私の肉体を捧げます!」


 男の右手の黒い何かから、悍ましい魔力が溢れ出て、男を包み込んだ。

 何が起こってるの!?



(あっれー? 我の鱗を持った男が何か叫んでおるのだが?)


 クロムギは何がどうなっているのか理解できないでいた。

 しかしながら、男の持ち物が自分の鱗だというのは理解できる。

 昔、人間たちと戦った時に、多くの鱗が剥がれ落ちたことも覚えている。

 血だってたくさん流れた。


「あれってクロムギの魔力と同じだね。友達?」とレア。


「いやぁ……たぶん、さっき言った我のファンかと……思いますが……」


 男は鱗からほとばしる魔力に飲み込まれて、異形の姿へと変貌した。


「トカゲ男になっちゃったけど?」

「そのようですなぁ……」

(我の鱗って、そんな妙な効果あるの!?)


 クロムギ自身、まったく知らなかったことなので大いにビックリしている。


「鱗に魔法陣が描かれていたけど、たぶん変身系」レアが言う。「見た感じ、鱗の魔力を用いてるから、その影響で黒いトカゲ男になったんだと思う」


「さっすがレア様! 見識が広い!」

(良かった! 我の鱗に妙な効果があるわけでは、なかったのだ! 人間たちの魔改造が原因であったか!)


 クロムギはホッと胸を撫で下ろした。

 変な効果があったら、気軽に鱗の1つも落とせない。



 変身しちゃったぁぁぁぁ!!

 なんなのあの修道者!

 黒いトカゲ人間になっちゃったんだけどぉぉぉ!!

 あたしは驚きすぎて口を大きく開けたまま固まってしまった。

 貴族令嬢らしからぬ表情だよきっと。


「マジかよ、なんかヤバそうだぞ」とパストル。


「見たら分かりますよお兄様!」


 あれがヤバくないなら、一体この世の何がヤバいというのか。

 と、イレナ司祭が黒トカゲ男を指さした。

 そうすると、その指先から光輝く1本の魔力が射出される。

 神聖魔法【光線】だ、とあたしは即座に理解。

 イレナの【光線】は一直線に黒トカゲ男に向かっていき、そして。


 黒トカゲ男は右手で【光線】を払った。

 軌道が逸れた【光線】は、倉庫みたいな建物に命中。

 倉庫的な建物は消し飛んだ。

 威力!!

 ねぇ威力!!

 さすが大司祭様!!


「そんな……これが通用しないなんて……」


 イレナが驚愕に満ちた表情で言った。

 いきなり必殺技を使ったけどダメだった時って、こんな顔するんだね。

 黒トカゲ男がニヤッと笑う。

 ヘラルドがあたしの背中にソッと隠れた。


 ちょっとぉぉぉぉ!?

 あたしまだ10歳の女の子ですけどぉ!?

 村娘時代なら絶対「ふぁっきゅ!」って言ってるよあたし!

 今は貴族令嬢だから、そんな汚い言葉は使わないけどさ!


 騒ぎを聞きつけた神殿騎士たちが走って来て、一斉に剣で黒トカゲ男を攻撃した。

 頑張れ神殿騎士!

 そしてその剣は黒トカゲ男に命中したのだけど、黒トカゲ男は一切のダメージを負っていなかった。


 固い!

 めっちゃ固い!

 黒トカゲ男はその場で横に回転しながら、鞭みたいにしなる尻尾で神殿騎士たちを弾き飛ばした。


 神殿騎士たちそれぞれ、木や壁や地面に叩きつけられる。

 みんな鎧が壊れ、血を吐いた。

 強い!

 黒トカゲ男、強い!


 見た目は気色悪いけど、すごく強い!

 これはもうアレだね!

 どうしようもないね!

 というわけで。


「レア!! 助けて!!」


 私はレアの方を向いて、瞳をウルウルさせてから叫び、黒トカゲ男を指さした。

 レアはグッと親指を立ててから、漆黒の鎌を創造。

 わぁ、久しぶりに見たよその鎌。

 あたしを蛇神から救ってくれた時の鎌だね!

 ……あ、黒トカゲ男は食べないよ?

 食べないからね!?


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