14話 クロエVSエル
やったよクロエ!
サラマンダーたちは見学するって!
私は使命を終えたとばかりに、クロエの近くに戻ってブンブン飛び回った。
そういえば、どうして私がサラマンダーたちと会話できるのかって思った?
ねぇクロエ、私が精霊と話してたからビックリしたでしょ?
実はね、あいつら私の下僕みたいなもんなの。
まぁそれは置いておいて、あいつらは何か特別な言語能力みたいなのがあって、契約したら会話できるようになるんだよね。
どうやら私は全ての精霊神を従えている(契約より上位の盟約を結んでいる)ようなので、全ての精霊と会話ができるってわけ。
たぶんね。
認識の違いがあるかもしれないけど、だいたいそんな感じ!
ってクロエに伝えたかったけど、やめておいた。
理由は単純。
私がちゃんと理解していないので、変に伝わるといけないから。
私は代わりに「サラマンダーたちは手を出さないから、思いっ切り戦っていいよ」と伝えた。
頑張れクロエ!
◇
「ふぁ!?」
レアからイメージが送られてきたので、あたしは変な声を上げてしまった。
だって内容が、
(戦うのだクロエ、精霊は手を出さない。一対一で君の成長を見せるのだ)
って感じだったから。
「そ、そんなぁ……」
あたしは半泣きになった。
いきなり殺人ありの戦闘に放り込まれるなんて……。
成長を見せるどころか、二度と成長しなくなっちゃうかも!
そう、死体という名の新たなあたしになる可能性が!
とか、なんとか、あたしは頭の中でグルグルと戦わない言い訳をしていた。
しかし対戦相手のエルはすでに剣を抜いていた。
パストルたちは暢気にあたしを応援している。
レアもあたしの周囲を飛び回りながら、たぶん応援している。
「うぅ……」
これもう、戦う以外の選択肢ないよね?
仕方ない、とあたしはショートソードを抜いた。
この剣はあたしの体格に合わせて作ったもの。
作ったのは鍛冶師で、お金を出したのはアンジェロだけど。
そう、リニイ伯爵家はあたしに惜しみなく投資しているのだ。
部屋に服に教育にと、全て最高級のものを用意してくれている。
今だって、アンジェロが用意してくれた軽くて丈夫な戦闘服を着ているのだ。
リニイ伯爵家には恩がある。
領地戦に勝てば、リニイ伯爵家の利益になるので、ある程度は恩を返せる。
覚悟を決めて、あたしはショートソードを構える。
そうすると、エルが突っ込んで来た。
「ほえ?」
あたしはビックリした。
エルがあまりにも直線的に攻撃したからだ。
とりあえず、ショートソードでエルの剣を受けて、そのまま流す。
エルが目を見開き、そして飛び跳ねるようにあたしから距離を取った。
観客が沸いた。
凄まじい声量で空気が震える。
レアは耳を塞いでいた。
あたしもそうしたかったけど、ショートソードを握っているので諦めた。
エルは距離を保ったまま、【火炎球】を放った。
丸めた炎を相手にぶつけて焼き殺すという凶悪な魔法だが、段位の低い者でも使える簡単な攻撃魔法だ。
いわゆる、基本的な攻撃魔法である。
あたしは同程度の【火炎球】をぶつけて相殺。
エルが再び目を見開く。
でもすぐに表情を引き締め、エルは自分自身に【身体強化】を施した。
あたしも同じく【身体強化】。
エルが剣を【コーティング】したので、あたしも同じことをする。
「真似ばっかすんなこのガキ!」
エルが怒って突っ込む。
(だ、だって実戦ってあたし初めてで、何していいか分からないんだもん!)
そんなことを思いながら、エルの斬撃を躱す。
エルは連続で斬りかかったが、あたしはそれを受け流した。
「ちょっと、あんた、なんなのさ!」
エルは焦っているようだった。
なんで?
「まだ10歳かそこらの幼女が、傭兵として生きているうちと同じレベルか、それ以上の戦闘能力とか! あんた本当に人間なの!?」
失敬な!
あたしは人間だよ!
人間だよね?
レアにコッソリ改造とかされてないよね?
若干、不安になってしまった。
どうしよう、実はあたし『謎の生命体クロエ』だったら……。
◇
おおっ、クロエが勝てそうだね!
「さ、さすが魔王様のお友達!」とサラマンダーA。
「お強い! いよっ! 最強美幼女!」とサラマンダーB。
空中で見学している私の近くで、サラマンダーたちも浮いている。
「強くはないよね?」と私。
「ええ、まったく全然まだまだですね!」とサラマンダーA。
「雑魚ですよ雑魚!」とサラマンダーB。
私は少し沈黙してから言う。
「私の友達が何だって?」
「最強でその上、美しい!」
「あー、惚れそう、ロリコンじゃないけど我、惚れそうだわぁ」
なんて現金な精霊!
お前ら私に合わせてテキトーに言ってるだけじゃん!
私、そういうのが嫌で別世界に来たのに!
って、こいつらにノリノリで話しかけたの私じゃん!
……いや、問題ないよ?
行雲流水!
あの時は話をする流れだったし!
「我らの契約者も多くの才能を持ち合わせてはいるのだが」
「魔王様の幼女は怪物レベルの才能……。この世界ではトップクラスなのではないか?」
「え? クロエってそんなすごいの!?」
普通の美幼女かと思ってた!
でもクロエがトップなら、この世界の人類ってどちゃクソ弱いことになってしまうけど……ね。
逆に考えるんだレア。
私の世界の人類が強すぎたのだ。
特に勇者とかいう連中。
あいつらはたったの5人で、この私にかすり傷を負わせたこともある。
「年齢を考えると、あのレベルは……」
「魔術神、あるいは剣神にもなれる器……」
「それってどのぐらい強いの?」
「「精霊王様ぐらい」」
「じゃあ弱いじゃん」
私が言うと、サラマンダーたちが顔を見合わせ、そして表情が引きつる。
「あなた様の基準で、人間を測らないでもらいたいのですが……」
「あなた様から見たら、全生命体が弱いでしょうよ……」
それは失礼しましたっと。
私とサラマンダーたちがくだらない会話を弾ませている間も、クロエと赤毛の女性は戦っていた。
主に赤毛の女性が攻撃して、クロエがそれを完璧に受けるという流れ。
「ところで、あの赤毛の名前は?」と私。
「エルメンヒルデです」
「愛称はエル」
そっか、エルかぁ。
エルの表情には焦りが浮かんでいるが、クロエの方は困惑しているようだ。
なんでクロエは困惑しているのだろう?
◇
あたし、なんでこんなに戦えてるの!?
意味が分かりませんけれど!
そもそも対戦相手のエル、傭兵にしてはあんまり強くない気がする。
やっぱり精霊士だから、精霊がいないとこんなもの、なのかも。
うーん、あたしって絶対これ自分の力じゃないよね?
魔法も剣術も全部レアが一瞬で教えてくれたものだし。
もちろん、あたしだって毎日お稽古したけど。
あたしは普通の村娘だったから、何の才能も持ち合わせていなかったし。
お勉強も付いて行くのがやっと。
剣術や魔術は、レアがいなかったらきっとまだ初段だよあたし。
エルの斬撃を、あたしはヒラリと躱す。
ヒラリ、ヒラリと躱して躱して、まるでダンスみたい。
エルが魔法を使うと、あたしも魔法で相殺。
勝てそう。
うん、あたし勝てるこれ!
テンションあげあげだよ!
初めての戦闘であたし、ハイになってるみたい!
そう思った時、エルが少し距離を取って、呼吸を整えた。
今だ!
そう思って、あたしは【暗闇の爆裂】を放った。
この魔法は、レアが最初に教えてくれた魔法。
黒い魔力が炸裂する恐ろしい攻撃魔法である。
ちなみに魔法名は教えてくれなかったので、パストルと2人で考えた。
◇
ああああああ!
クロエ!!
花火を人に向けて打っちゃダメでしょぉぉぉぉ!!
どうしたの!?
戦闘でパニックにでもなったの!?
それは攻撃魔法じゃないよぉぉぉぉ!!




