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手乗り魔王のセカンドライフ~異世界に移住したら言語も身体の大きさも違うけど、なんとかなるよね?~  作者: 葉月双
1章

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14話 クロエVSエル


 やったよクロエ!

 サラマンダーたちは見学するって!

 私は使命を終えたとばかりに、クロエの近くに戻ってブンブン飛び回った。

 そういえば、どうして私がサラマンダーたちと会話できるのかって思った?

 ねぇクロエ、私が精霊と話してたからビックリしたでしょ?

 実はね、あいつら私の下僕みたいなもんなの。


 まぁそれは置いておいて、あいつらは何か特別な言語能力みたいなのがあって、契約したら会話できるようになるんだよね。

 どうやら私は全ての精霊神を従えている(契約より上位の盟約を結んでいる)ようなので、全ての精霊と会話ができるってわけ。

 たぶんね。

 認識の違いがあるかもしれないけど、だいたいそんな感じ!


 ってクロエに伝えたかったけど、やめておいた。

 理由は単純。

 私がちゃんと理解していないので、変に伝わるといけないから。

 私は代わりに「サラマンダーたちは手を出さないから、思いっ切り戦っていいよ」と伝えた。

 頑張れクロエ!



「ふぁ!?」


 レアからイメージが送られてきたので、あたしは変な声を上げてしまった。

 だって内容が、


(戦うのだクロエ、精霊は手を出さない。一対一で君の成長を見せるのだ)


 って感じだったから。


「そ、そんなぁ……」


 あたしは半泣きになった。

 いきなり殺人ありの戦闘に放り込まれるなんて……。

 成長を見せるどころか、二度と成長しなくなっちゃうかも!

 そう、死体という名の新たなあたしになる可能性が!


 とか、なんとか、あたしは頭の中でグルグルと戦わない言い訳をしていた。

 しかし対戦相手のエルはすでに剣を抜いていた。

 パストルたちは暢気にあたしを応援している。

 レアもあたしの周囲を飛び回りながら、たぶん応援している。


「うぅ……」


 これもう、戦う以外の選択肢ないよね?

 仕方ない、とあたしはショートソードを抜いた。

 この剣はあたしの体格に合わせて作ったもの。

 作ったのは鍛冶師で、お金を出したのはアンジェロだけど。


 そう、リニイ伯爵家はあたしに惜しみなく投資しているのだ。

 部屋に服に教育にと、全て最高級のものを用意してくれている。

 今だって、アンジェロが用意してくれた軽くて丈夫な戦闘服を着ているのだ。

 リニイ伯爵家には恩がある。


 領地戦に勝てば、リニイ伯爵家の利益になるので、ある程度は恩を返せる。

 覚悟を決めて、あたしはショートソードを構える。

 そうすると、エルが突っ込んで来た。


「ほえ?」


 あたしはビックリした。

 エルがあまりにも直線的に攻撃したからだ。

 とりあえず、ショートソードでエルの剣を受けて、そのまま流す。

 エルが目を見開き、そして飛び跳ねるようにあたしから距離を取った。

 観客が沸いた。

 凄まじい声量で空気が震える。


 レアは耳を塞いでいた。

 あたしもそうしたかったけど、ショートソードを握っているので諦めた。

 エルは距離を保ったまま、【火炎球】を放った。

 丸めた炎を相手にぶつけて焼き殺すという凶悪な魔法だが、段位の低い者でも使える簡単な攻撃魔法だ。


 いわゆる、基本的な攻撃魔法である。

 あたしは同程度の【火炎球】をぶつけて相殺。

 エルが再び目を見開く。

 でもすぐに表情を引き締め、エルは自分自身に【身体強化】を施した。

 あたしも同じく【身体強化】。

 エルが剣を【コーティング】したので、あたしも同じことをする。


「真似ばっかすんなこのガキ!」


 エルが怒って突っ込む。


(だ、だって実戦ってあたし初めてで、何していいか分からないんだもん!)


 そんなことを思いながら、エルの斬撃を躱す。

 エルは連続で斬りかかったが、あたしはそれを受け流した。


「ちょっと、あんた、なんなのさ!」


 エルは焦っているようだった。

 なんで?


「まだ10歳かそこらの幼女が、傭兵として生きているうちと同じレベルか、それ以上の戦闘能力とか! あんた本当に人間なの!?」


 失敬な!

 あたしは人間だよ!

 人間だよね?

 レアにコッソリ改造とかされてないよね?

 若干、不安になってしまった。

 どうしよう、実はあたし『謎の生命体クロエ』だったら……。



 おおっ、クロエが勝てそうだね!


「さ、さすが魔王様のお友達!」とサラマンダーA。

「お強い! いよっ! 最強美幼女!」とサラマンダーB。


 空中で見学している私の近くで、サラマンダーたちも浮いている。


「強くはないよね?」と私。

「ええ、まったく全然まだまだですね!」とサラマンダーA。

「雑魚ですよ雑魚!」とサラマンダーB。


 私は少し沈黙してから言う。


「私の友達が何だって?」

「最強でその上、美しい!」

「あー、惚れそう、ロリコンじゃないけど我、惚れそうだわぁ」


 なんて現金な精霊!

 お前ら私に合わせてテキトーに言ってるだけじゃん!

 私、そういうのが嫌で別世界に来たのに!


 って、こいつらにノリノリで話しかけたの私じゃん!

 ……いや、問題ないよ?

 行雲流水!

 あの時は話をする流れだったし!


「我らの契約者も多くの才能を持ち合わせてはいるのだが」

「魔王様の幼女は怪物レベルの才能……。この世界ではトップクラスなのではないか?」

「え? クロエってそんなすごいの!?」


 普通の美幼女かと思ってた!

 でもクロエがトップなら、この世界の人類ってどちゃクソ弱いことになってしまうけど……ね。

 逆に考えるんだレア。


 私の世界の人類が強すぎたのだ。

 特に勇者とかいう連中。

 あいつらはたったの5人で、この私にかすり傷を負わせたこともある。


「年齢を考えると、あのレベルは……」

「魔術神、あるいは剣神にもなれる器……」

「それってどのぐらい強いの?」

「「精霊王様ぐらい」」

「じゃあ弱いじゃん」


 私が言うと、サラマンダーたちが顔を見合わせ、そして表情が引きつる。


「あなた様の基準で、人間を測らないでもらいたいのですが……」

「あなた様から見たら、全生命体が弱いでしょうよ……」


 それは失礼しましたっと。

 私とサラマンダーたちがくだらない会話を弾ませている間も、クロエと赤毛の女性は戦っていた。

 主に赤毛の女性が攻撃して、クロエがそれを完璧に受けるという流れ。


「ところで、あの赤毛の名前は?」と私。


「エルメンヒルデです」

「愛称はエル」


 そっか、エルかぁ。

 エルの表情には焦りが浮かんでいるが、クロエの方は困惑しているようだ。

 なんでクロエは困惑しているのだろう?



 あたし、なんでこんなに戦えてるの!?

 意味が分かりませんけれど!

 そもそも対戦相手のエル、傭兵にしてはあんまり強くない気がする。

 やっぱり精霊士だから、精霊がいないとこんなもの、なのかも。


 うーん、あたしって絶対これ自分の力じゃないよね?

 魔法も剣術も全部レアが一瞬で教えてくれたものだし。

 もちろん、あたしだって毎日お稽古したけど。

 あたしは普通の村娘だったから、何の才能も持ち合わせていなかったし。


 お勉強も付いて行くのがやっと。

 剣術や魔術は、レアがいなかったらきっとまだ初段だよあたし。

 エルの斬撃を、あたしはヒラリと躱す。

 ヒラリ、ヒラリと躱して躱して、まるでダンスみたい。


 エルが魔法を使うと、あたしも魔法で相殺。

 勝てそう。

 うん、あたし勝てるこれ!

 テンションあげあげだよ!


 初めての戦闘であたし、ハイになってるみたい!

 そう思った時、エルが少し距離を取って、呼吸を整えた。

 今だ!

 そう思って、あたしは【暗闇の爆裂】を放った。


 この魔法は、レアが最初に教えてくれた魔法。

 黒い魔力が炸裂する恐ろしい攻撃魔法である。

 ちなみに魔法名は教えてくれなかったので、パストルと2人で考えた。



 ああああああ!

 クロエ!!

 花火を人に向けて打っちゃダメでしょぉぉぉぉ!!

 どうしたの!?

 戦闘でパニックにでもなったの!?

 それは攻撃魔法じゃないよぉぉぉぉ!!


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