導入
男の子にはママが必要だ。魔法少女になるなら強いママが必要だ。
何故なら、彼は、彼女は子供だから。
子供は弱く、庇護が必要だから。
悪い大人が怪物になって襲ってくるから。
特に魔法少女、シンプルに正しく強い存在は常に双極にある邪な怪物を呼び寄せる。
彼の姉がそうだった。
少年の姉は魔法少女プリティ・プディングだった。太陽だった。
太陽。強く、希望を与える存在。
彼女の存在が白と黒を明確にしていた。
魔法少女がいる限り、この世界に正義はあった。
街で暴れる悪い怪物と戦い、邪悪な怪人とも命を賭けて立ち向かう。
少年にとっても自慢であり、憧れの姉だった。
ある日、地球に危機が訪れ地表をマグマが覆った。
無数の隕石が天に浮かぶ中で、姉はただ一人、空へと飛んでいき、極大の光とともに散った。
遺されたのは魔法少女が振るう杖だけ。
姉を亡くした少年に遺されたのは、誰も使えない魔法の杖。
白と黒の境界は壊れ、世界に平和な灰色の罅が始まった。
その時は誰も知らなかった。
偉大なる魔法少女の死。
それが、可愛いも醜いもプディングもスパイスもごちゃまぜの極彩色の始まりでもあったことを。
魔法少女の向こう側の戦いの始まりであることを。