あれ ? 私、死んじゃったの?
「エルーガ、邪魔なのよ。この国は、卑しい孤児なんていらないのよ」
言い捨てるのは、公爵令嬢ペイシャル。
共にいた取り巻き令嬢が、孤児のエルーガを蹴飛ばしその場を後にする。
この国の学校は授業料が高い為に、貴族か資産のある平民しか通えない。
だが例外もあり、優秀な人材を得たい国は奨学金制度を作り、成績優秀者は無料で学校に通えるようにした。
おとなしく小さくなって学ぶなら、公爵令嬢に目をつけられることはない。 今までは貴族と平民で多少の小競り合いはあっても、平民が退いて物事は収まっていた(平民側が我慢したのだ)。
でもエルーガは違った。
間違いを正そうと、時々争いの場で平民のクラスメートを庇い、今日は理不尽な暴力を受けていた。 だが庇われたクラスメートは、顔を青くして立ち去ってしまった。
「ごめん、エルーガ。でも僕、庇って欲しいなんて言ってないから」
エルーガは体を丸めて屈み頭部を腕で守り耐えていたが、左側腹部に鋭い蹴りが入り意識を手放した。 ペイシャル達はそれを放置して去っていったのだ。
気絶しただけと思われていた。
だが連れてこられた教師が、声を掛けながら確認しても返答がない。
頬を叩いてみても、微動だに反応しなかった。
心臓の音を聞いてみると、鼓動が聞こえない。
「死んでる…………」
サンチャベル高等学園で、
1人の孤児の少女が死亡した――――――――
エルーガは、死んでしまった。……………のだが、体のないモヤモヤの彼女に話しかける者がいた。
「なあ、あんたの体貰っても良いか ? 」
よく見れば身綺麗なイケメンがいた。
おぼろ気にしか覚えていないが、たぶん第二王子のアレックス様だ。