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別の世界ではただの日常です

怖くて出られない

作者: 茅野榛人

 俺は霊なんか信じない。

 どんな状況になってもそう思い続けることが出来ると思っていた。

 昨日の夜、久々にホラーゲームを遊んだのだが、それから、霊が怖くなってしまった。

 今日、珍しくトイレで目が覚め、トイレに向かい、用を足した。

 しかしここで、昨日やったホラーゲームの事を思い出し、トイレの扉を開けるのが怖くなってしまったのだ。

 そして今に至る。

 すっかり怖くなってしまっているのだ。

 何時如何なる時でも霊だけは絶対に信じない、そう思っていたのに、俺は今、霊を信じ、トイレの扉を開けるのを躊躇っている。

 開けたら、そこに恐ろしい霊がいるのではないか……そう思い、扉が開けられない。

 自分で扉の鍵を外せば出られる、閉じ込められている訳では無いのだ。

 しかし今、自分の思い込みの所為でトイレに閉じ込められているような状態になっている。

 更に、トイレを済ませたらそのまま部屋に戻る訳では無く、洗面所に行き手を洗わなければならない。

 怖くてトイレの扉が開けられないと言うのに、開けた後にも戦いが待っている。

 俺は、外が明るくなるまでトイレにこもる事にした。


 何時間経ったのであろうか。

 未だに外が明るくなる気配は無い。

 兎に角頭の中で怖い事を考えないように、必死に楽しい事を考えた。

 しかしそれも疲れた。

 恐ろしささえ払拭出来れば、簡単に開く扉だと言うのに……。

 それならば、いっその事開けてしまおうか?

 開けてしまえば、後戻りは出来ない。

 洗面所で手を洗って、部屋に戻るだけだ。

 例え幽霊がいたとしても、戦えば良い。

 今は恐ろしさだけがこの扉の鍵なのだ。

 恐ろしさが消えれば鍵は外れる。

 今こそ、その鍵を外す時だ。

 俺は扉の鍵を外そうと鍵に手を伸ばした。

 その時だった。

 突然外が光ったのだ。

 その後、地響きのような音が聞こえて来た。

 雷だ。

 よりによってこんなタイミングで雷が鳴るとは……。

 俺は勇気を失い、再び恐ろしさを取り戻してしまった。

 その後強い雨が降り始め、雷雨が始まった。


 もう流石に明るくなっても良い頃だと思うのだが、外はまだ暗く、雷雨も止みそうに無い。

 俺は何時までここに居るつもりなのだろうか。

 その時だった。

 突然電気が消えた。

 まさか、誰かが消したのか?

 そう思い、思わず叫びそうになる。

 しかし冷静になって考えたら、今は雷雨なのだから、ブレーカーが落ちたり、停電が起きてもおかしくはない。

 扉の明かり窓からも、光は漏れて来ていない。

 これは完全にブレーカーが落ちたか、停電が発生したに違いない。

 しかしこれでトイレは真っ暗闇になってしまった。

 頼むから早く明るくなってくれ……頼む……。

 その時だった。

 足音が聞こえて来た。

 確実に足音だ。

 間違い無く家の中に誰かがいる。

 まさか……本当に霊が現れた?

 俺は蹲り、耳を塞いだ。


 気が付くと外が明るくなっており、雷雨も止んでいた。

 鳥の囀りも聞こえて来る。

 ようやく長き戦いが終わった。

 いや、ただただ自分が霊を恐れ、一人で勝手に戦っていただけなのだが……。

 俺は扉の鍵を外し、トイレを出た。

 驚愕した。

 家中が荒らされていた。

 まさか本当に霊が?

 しかし再び冷静になり、洗面所で手を洗い、部屋に戻った。

 予想通りだった。

 部屋の窓が開いていた。

 俺は暑がりな為、頻繁に部屋の窓を開ける。

 その為今回はたまたま窓の鍵を閉め忘れてしまったのであろう。

 ベッドもたまたま人がくるまっているような形をしている。

 恐らくあの足音は泥棒であろう、少なくとも霊ではない。

 金目の物は置いていなかった為、盗まれた物は無かった。

 やはり霊なんているはずが無いのだ。


 たまたま窓が開いていて……家主も寝ていたから侵入して……金目の物が無いかあさっていたら……突然トイレの扉が激しく叩かれ始めて……怖くなってその家を後にした……あれは一体……何だったんだ……。

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