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「魔王との戦いが始まり、世界のあらゆる財宝や神秘の剣などは、壊れてしまった。魔道具の最高等級である君ら十宝種クラスも、もう残ってない。俺の黄金剣も、君らの一つだった。今のこれは魔力の最高峰の魔術師であるエリーレッド公に作ってもらったもの。君らよりぜんぜん下のものだ」
勇者は自分の腰の剣を見せてくれた。
浮彫がされ、見るからに強そうな武器だ。特殊な武器って感じがする。なのに、それより上なのが私のクラスって、到底信じられない。
「君は、今の僕らにとって、最大の武器であり、大切な巾着だよ」
「あ、そんな、そうなの」
私が誉められたわけじゃないけど、私は巾着の下で顔を赤らめた。
布の巾着だから、外見は何も変わったところはないけど。
まあ、そう言われたら、私も多少は慰められるわよ。そりゃ、素晴らしい巾着なら、ズタボロ袋よりはマシだって。
黄金の糸で編まれた豪華な巾着だもの。
かなり古びて色褪せ、茶色っぽく変色してしまっているけど、それでも細かな装飾に、奇妙な文字模様が入って、とても手が込まれた巾着だわ。
博物館展示レベルじゃないかしら。こういう古いの、王立の博物館でもよく展示されてる。うん、とっても綺麗よ。
でも、ぜんぜん、良かったなんて思えない。
どうして、こんな巾着。
それにここは、魔王との闘いの最前線。
って、何これ?
「でも、そう言われたって、どうしていいか、私、分からないわ」
「とにかく、そばにいてくれ。戦況は厳しいものなんだ。癒しの水ソーマを引き出してくれないと、僕らは死ぬ。今、君に抜けられたら、困る」
勇者で、男らしいルーが、懇願するように必死に頼む姿は、懸命で、本当に心から頼むという真剣さが伝わってきて、心が打たれた。
そんなふうに言われるなんて思わなかった私は、なんだか不謹慎なことだけれど、また、私は喜んでしまった。