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「賢者の魔法使いエリーレッドの強烈な魔術だったね」
「すごいわね、あの人」
「世界一の魔法使いだ。王様からの賓客の待遇で迎え入れられて、公爵の地位も与えられているから、本当頼りになるよ」
私も名前だけは聞いたことがあったけど。
戦いはいったん小休止し、夜、川べりで仲間たちは休憩を取った。
ばちばちとはぜる焚火を見ながら、勇者は言った。
「帰りたいかい?こんなところから、やっぱり」
「そりゃ、こんな体じゃ嫌よ。でも、帰りたくても帰れない。この姿じゃあ」
「時間があれば、君を元に戻す方法を考えてあげられるけど、今は魔王との闘いで手一杯の状況だ。悪いけど、まだここにいてもらう」
勇者が私のこと離したくないって言ってるようで、なんか、喜んじゃった。
けど、この状況、やっぱり嫌だ。戦士でもないし、そんな教育だって受けたことないし、勇者と一緒に戦場、駆け巡るの無理。
体も、生物でもない。何ていうか、物体よね、これ。
「君はただの巾着じゃない。世界の魔道具、十宝種と呼ばれる貴重な巾着だ」
「え・・?」
私の体が、そんな大切な?
「君の体には文字が書かれ、さまざまな魔法が織り込められている。超保存、危険物保管、超空間取り寄せなど、君には特殊な力がある。僕らの任務部隊は、今いる者たちだけになってしまった。でも、君はとても役立っている。戦争で敵に攻撃を加え、怪我をしたら僕らを回復させる。君は僕らにはなくてはならない存在だ」