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「つまり、あれだな」
勇者ルーは、大きな怪物を豪華に装飾された刀剣で次々と倒して言った。
私は、ずっと勇者の腰元でぶらぶらしながら、その光景を見ていた。
「君は巾着に転生した」
「私が巾着に転生?うそでしょ」
「僕の腰にはずっと万能袋としてあったから、転生したか、魂を吸い取られたか、もともとそうであったか、何かあって」
「何かあったって、何?」
「何か、君、思い当たることないかい?」
「そんなの、思い当たるわけないでしょ。私、普通の女の子だったんだから」
巾着と言っても、綺麗な巾着だ。
といって、私は巾着だ。どこから見ても巾着だ。
ぷっくり膨らんだ下半身、紐で閉じられた巾着口。誰かの腰元に吊り下げられて、ぶらぶらする腰巾着。
「困ったね、戻りたいかい?もとの姿に」
「それは当然よ」
巾着なんて、腰から下げて、ぶらぶらするか、手を突っ込まれて、何かを取り出される運命じゃない。
それも相手に付き従って、ただぶら下がっているだけ。
そんなぶざまで、格好悪いこと、なんで私がしなきゃならないのよ。
それも、勇者の巾着なんて、つねに勇者の腰からぶら下げられて、ぶらぶら。
私の好きな勇者の股間近くを、常にぶらぶらじゃない。
「でも、こうなったのは、俺もよく分からないからな。戻すと言ったって、どうしていいか」
(よりにもよって、王宮で通りかかって、柱の陰から一目ぼれした相手だなんて)
あ。これは心に秘めている思いだったのに。