私が巾着に転生?
私の体、どうなってるのよ、これ。
やあだ、やだ。広げないで、どこ広げてるの?ああ、私の巾着口ががばっと開かれる。
いやあああ。私の頭、いやああああ。中どうなってるの、これ?
勇者が手を入れる。
いやああああ。中に手を突っ込まないで、私の体の中に手を突っ込まないで。
「どうした、ルー・ウェイン。戦いの最中だぞ、ぼやっとするな」
「うん?なんだか、この巾着、いつもと様子が違うんだ」
やだ。誰か男の声。
ドーン。
バーン。
「な、なにこれ」
という激しい爆撃音もする。激しいなんてもんじゃない。これではまるで・・・
戦場。
ええっ戦場?ってここ、どこ?
私、どこにいるの?
こころなしか、男の股間のような・・・
「誰だ、誰かがしゃべってる」
「何をおかしな独り言を言ってるんだ。今はそんなどころじゃないだろ」
長い髪を垂らした黒衣の美青年が、杖を片手にさらっと現れた。
深遠な水色の目、黒い髪、鋭い輪郭、知的そうな目つきをして、何歳か分からないほど老獪なものを漂わせている。
「ルーは時々、ちょっとぼやっとしている変人だから」
「よそ見ばかりしている勇者いるか?」
「ほらほら、お前らこそ、気を抜くな」
ーーえ?
あんたら、誰よ?
麗しの魔法使い。
美女の癒し手。
細身マッチョの召喚士。
そして・・・
精悍な戦士。私の顔の向こうにいる、引き締まった顔。
ルー・ウェインと言えば、国の勇者だ。
ええええ?なんで?
私がなぜ、クエストの五人目の仲間みたいになってんの?