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プロローグ
勇者ルー・ウェインは、国の救世主と言われ、一度、マリースが目にしたとき、本当に国一の逞しい剣士だった。
(ああ、あの人と私は、永遠に出会わないんだわ)
王城で都城管理の出勤係りとして働くマリースは、王城の勤め人の中で、給料の計算から設定、配給まで全て取り仕切る財形部の中でも出勤票集めの係で、部署の部長(親ボス)の指揮の元、日々、出勤メモを集める努力をする就業者だった。
つまりは、ただの出勤記録係だ。安月給。
(一度ぐらい、お目見えしたかった)
その日、魔王襲来という未曽有の事態になり、国が滅亡する時、ふっとマリースの頭をよぎったのはそのことだった。