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新たな驚異

クリスとアイリスとリースの3人は、盗賊団【風魔】の捕縛するために町中を歩いていたら、アクア学院の生徒と教師達と出会った。


クリス達は、ヨルズ国王に頼んでアクア学院の人達を匿って貰うことにした。


クリスとアイリスは明鏡止水を使い、【風魔】のモーランの居場所を見つけたのだった。

【ヨンダルク国・町中】


アイリスとリースが競う様に先頭を走り、その後ろをクリスが走っていた。


「あのさ、2人共。一度戻るか、近くの警備部、もしくは見回っている騎士団さん達を探して声を掛けて一緒に取り押さえた方が良いんじゃないかな?」

クリスは、苦笑いを浮かべながら話し掛ける。


「このメンバーで負けるはずはないでしょう。」


「リースの言う通りだわ。クリス、あなたは、あのマミューラさんに勝ったのだから自信を持ちなさい。」


「え!?」

リースは驚いた足を止めて後ろを振り返り、クリスを見る。


「本当なの?クリス。」


「まぁ、ギリギリだったけどね。」

頭を掻きながらクリスは答えた。


「凄い!凄いわ!益々、好きになったわ!」

リースは、妖艶な笑みを浮かべながらクリスの手を取った。


「~っ!」


「もう、【風魔】はアイリスに任せて、私達は町中で買い物したりご飯を食べたりして、最後に旅館で同じ部屋で同じベッドで寝ましょう。」

リースは、クリスに抱きつきながらクリスの腕を取る。


「え!?え?あのリース…。ん?」

クリスは背後から肩を捕まれたので振り向くと、アイリスが微笑んでいたが背後に見えないはずの般若の顔が見えていた。


「あ、あのアイリス…。いえ、アイリス様。」

クリスは、アイリスの威圧感に怯んだ。


「ク~リ~ス!」

アイリスはドスの利いた声を出しながらクリスの肩を掴んでいる手に力を入れる。


「ア、アイリス様、その、肩がとても痛いのですが…。」

クリスは、本当は肩が痛いことよりも顔が怖いのですがっと咄嗟に言葉として出掛けたが、どうにか喉元で堪えることに成功した。


「ねぇ、クリス。そんな些細なことよりも、まさかとは思うけど。私に【風魔】を押し付けて、リースと2人で遊びに行くつもりなのかしら?」


「そ、そんなこと絶対にしないから。絶対に。」

クリスは、必死に頭を左右に振る。


「え~!良いじゃない、クリス。だって、【風魔】討伐なんて野蛮でしょう。そんな任務は野蛮な性格のアイリスにピッタリだと思うでしょう?」


「へぇ~、誰が野蛮ですってぇ~!ねぇ、教えてくれるかしら?リース。それに、一刻も早くクリスから離れなさいよ!」


「あら、やだ。そんなこともわからないなんて、不憫を通り越して可哀想だわ。私、優しいから教えてあげるわね。誰が、どう見てもアイリスでしょう?ねぇ、クリスもそう思うでしょう?」


「え!?何で、ぼ、僕に振るの。」


「そうなの?クリス。」

アイリスは満面な笑みを浮かべているが、背後に見えていた般若が赤く染まり徐々に鬼へと変化した。


「ほら、本人も知りたがっているんだし。ここで、ハッキリと言ってあげるのも護衛役として主のためよクリス。」


「クリス、私は怒らないから正直に言っても大丈夫よ。」


(いや、この殺気と威圧感は絶対に「はい」とか言ったら怒られるを通り超して殺されてしまいそう。)

「え、えっと…。あっ、ところで、あそこの周辺だけ建物は崩壊して大きく大地が(えぐ)れて城壁まで伸びて崩壊しているけど何があったの?まさか、【四季風神】と戦った?」

クリスは、アイリスから視線を逸らして言い訳を考えていたら崩壊した場所に気付き話題を変えるために尋ねる。


「あ、そこはね。聞いているとは思うけど。ほら、【風魔】がドリヤードの加護を盗んだのよ。その時、私が追いかけて捕まえるためにソーラー・レイを放ったの。盗賊達は瀕死状態で全員捕まえたのだけど、ソーラー・レイよってドリヤードの加護が何処かに飛んで行ったみたいなのよ。全く、根性のない盗賊達で困ったものだわ。国宝級のマジックアイテムなんだから命懸けで守りなさいよね。そう思わない?お蔭で、探す羽目になって大変になっているわ。」

深いため息を吐くリース。


「リース、あなたの方が野蛮じゃない!」


「え?」

頭を傾げるリース。


「「え?」じゃないわよ!町中で大魔法使うなんて、あなた、馬鹿じゃないの!」


「馬鹿とは失礼ね!仕方ないじゃない、相手は弱いといっても8人もいたのよ。誰がドリヤードの加護を持っているかもわからないし、取り逃がすわけにはいかなかったのよ。それに、国民達は誰1人も怪我はしてないわ。私の膨大な魔力を感知して皆、慌てて建物から避難したから大丈夫よ。」


「それじゃあ、ドリヤードの加護は国内にあると断言できないね。国内だけでなく、国外も細かく捜索しないといけないね…。」


「ええ、だから、三分の二が国内の捜索と見回り兼、警備で残りの三分の一が国外の捜索しているのよ。」


「じゃあ、さっさと【風魔】の残党狩りして、ドリヤードの加護を探して見つけよう。アイリスはどうする?」


「はぁ、もう仕方ないわね。私も最後まで手伝ってあげるわよ。」


「ありがとうアイリス、クリス。」


「で、どうするのよクリス。今更、騎士団達を集めようとしたら時間が掛かるけど。それまで、敵さんは待ってくれるかしら?」


「……。仕方ない、今回は3人で捕まえよう。」

クリスは顎に手を当てて考えて決断した。


「流石、クリス。そうこなくちゃね!」


「でも、クリス。何か策でもあるの?」


「2人が争わないで済む方法があるから聞いて欲しい。まず…。」

クリスは腰を落として指で地面に絵を描いて説明し始めたので、アイリスとリースは腰を落とし、3人は自然と輪になって作戦を立てた。


「なるほどね。でも…。」


「今回は仕方ないわ。それで良いでしょう?リース。」


「はぁ、わかったわ。その代わり、今回だけだから。」


「うん、今回だけで良い。じゃあ、2人共、計画通りによろしく。」

クリスは立ち上がり、右拳を握り締めて前に突き出した。


「「ええ、任せて!」」

アイリスとリースは、頷きながら立ち上がり右拳を突き出した。




【ヨンダルク国・町中・教会の裏路地】


教会の路地裏に盗賊団【風魔】のメンバーが集まっていた。


「モーラン隊長、ドリヤードの加護は見つかりませんでした。」


「こちらも、発見できませんでした。」


「周囲の聞き込みはどうだったか?」


「いえ、誰も見てはいないみたいです。」



「そうか、騎士団達の行動を見た感じからすると、俺達の捜索とドリヤードの加護の捜索をしているみたいだ。国側も見つけてはいないようだ。」


「モーラン隊長、もうこれ以上の捜索は…。」


「ああ、騎士団達の見回りの人数も増えたから国内の捜索は厳しくなった。丁度いい、これほど国内を探しても見つからなかったのだ。国内にはないだろう。よって、今から国外の捜索にする。今まで通り2マンセルで、1班は国内の捜査と情報収集、残りの2班は俺と同じで国外の捜査の範囲を分担して取りかかるぞ。」


「「了解!」」


「待て!お前達。戦闘準備をしろ。左右から誰か来る。気を付けろよ。俺に悟られず、ここまで接近できた奴らだ。ただものじゃないのは確かだ。」


「「ハッ!」」

モーランの指示で盗賊達は武器を手に取って構え、殺気を放ちながらモーランを守る様に少し前に出る。


「流石、【四季風神】候補だった人ね。私達に気付くとはね。」

東側からリースが現れる。


「だけど、残念だけど、ここであなた達を取り押さえさせて貰うわ。」

西側からアイリスが現れ、盗賊達は挟まれた。


「「なっ!?」」

モーラン達は、リースとアイリスを見て驚愕する。


「な、なぜスノー・ランド国の【水の乙女】アイリスまでが、ここヨンダルク国にいるんだ!?」


「モーラン隊長!」


「くっ、逃げるぞ!」


「「ハッ!」」

盗賊達は、一斉に逃げようとする。


「「逃がさないわよ。」」


「アクア・ショット。」


「リーフ・カッター。」

アイリスとリースは、片手を盗賊達に向けて水弾と魔力で強化された葉っぱを複数召喚して放つ。


「「ウィンド・ウォール。今のうちに、なっ!?」」

左右の外側にいる盗賊は、隣にいる仲間と連携して風の壁を作り出して仲間達を逃がそうとする。


だが、アイリスとリースの水弾と葉っぱの刃は意図も容易く盗賊達が作った風の壁を貫通して風の壁を作った盗賊達4人に被弾して盗賊達は倒れた。


「今のうちです!」


「こちらです!モーラン隊長。」

盗賊2人は、教会の壁を乗り越えようジャンプする。


「「ぐぁ…。」」

突然、反対側からクリスが出てきて、盗賊2人は空中でクリスに蹴られて背中から落下した。


「「だ、誰だ?」」

盗賊2人は立ち上がり、クリスを睨む。


「すみませんが、大人しく捕まって下さい。もう、あなた達は逃げれません。手荒な真似はしたくないので。」


「ああ、そうだな。【水の乙女】と【豊穣の乙女】を同時に相手するのは無理だな。」


「賢明な判断です。理解して頂いてありがとうございます。」


「だが、ロック・ショット!殺れ!お前達!」

モーランは、両手を前に突き出して岩を複数召喚し、クリスに向かって放つ。


「「ハッ!」」

盗賊2人も追い討ちするべく、左右からクリスに襲い掛かった。



「はぁ、馬鹿な人達ね。」


「ええ、そうねアイリス。大人しく捕まれば、痛い目にあわないで済んだのに。」

アイリスとリースは、クリスの心配はせずに呆れた表情で成り行きを見守ることにした。


「交渉決裂ですか…。とても残念です。ハッ!トォ!」

クリスは飛んで来た2つの岩を右手と左足で弾き、左右から襲い掛かってきている盗賊達にそれぞれ岩を飛ばした。


「くっ…。」

左側の盗賊は、ジャンプしてどうにか躱した。


しかし、目の前にクリスが接近していた。


「なっ!?ぐぁ。」

クリスは盗賊の鳩尾に右膝を打ち込み、「く」の字になった盗賊の背中に右肘を決めて地面に叩き落とした。


「くっ、エア・ショ…。」

右側にいた盗賊は迫ってくる岩にエア・ショットで圧縮した空気弾を飛ばして破壊しようとした。


しかし、空中にいたクリスは飛んでいる岩を足場にして岩を蹴り、右側にいる盗賊の背後に回り込んで右足の回し蹴りで気付いていない盗賊の後頭部を蹴り飛ばした。


「がはっ…。」

後頭部を蹴られた盗賊はエア・ショットが不発に終わり、頭が迫ってきた岩とクリスの回し蹴りの間になり岩を砕きながら地面を転がって教会の壁に凭れ掛かるように倒れた。


「小僧!アース・アーマー。」

モーランは砂の鎧を纏い、ジャンプしてクリスの背後から飛び掛かった。


「ビック・アース・ガンドレッド!」

モーランは、空中で右手を挙げて土属性の大魔法ビック・アース・ガンドレッドを唱えるとモーランの右腕に砂が集まり圧縮していき巨大な砂の腕に変貌した。


「潰れて死ねぇ!」

モーランは、叫びながら巨大な砂の腕を振り下ろす。


「アクア・ビッグバン。」

クリスは振り向きながら右手の掌に高密に圧縮した巨大な球状の水の塊を生み出し、自らジャンプして空中にいるモーランに接近し右手を前に突き出す。


モーランの巨大な右拳とクリスの巨大な圧縮した水の塊が衝突した。


モーランの巨大な右拳は、クリスの巨大な圧縮した水の塊に飲み込まれる様に削られていき、そのままクリスの巨大な圧縮した水の塊がモーランに迫る。


「そんな、馬鹿な!馬鹿なぁぁ…。ぐぁぁ…。」

驚愕した表情を浮かべたモーランは、体全身にクリスの巨大な圧縮した水の塊にぶつかり、纏っていた砂の鎧は粉砕され上空に吹き飛ばされた。


そして、クリスが地面に着地してワンテンポ遅れてモーランが空から落っこちてきて地面に叩きつけられる様に落下した。


「お疲れ様、クリス。」


「クリス、その人生きているの?」

リースは微笑みながらクリスに歩み寄り、一方、アイリスは心配しながらクリスに歩み寄った。


モーランは、上半身の服は破れて火傷を負っており皮膚は赤黒く爛れ白目を向いて気絶していた。



「もちろん、大丈夫だよアイリス。全員、気絶させただけだから。」

クリスは、微笑んだ。


「あとは、この人達を拘束して牢屋に入れてドリヤードの加護探しで終わりかな?」


「そうね!」


「【風魔】を捕まえるよりも、ドリヤードの加護探しの方が大変そうね…。」


「アハハ…そうだね。まぁ、おそらくだけど国内よりも国外にある方が確率が高そうだと思う。」


「同感ね。」


「私も同じ考えだわ。じゃあ、早速、行動に移すわよアイリス、クリス。」


こうして、クリス達は騎士団達に報告してモーラン達を監獄の中に入れ、ドリヤードの加護の捜査を始めた。


しかし、日が落ちるまで捜査したが、結局、この日は見つかることはなかった。




【ヨンダルク城・大広間】


城内にはアクア学院の生徒や教師達がいるので、妃であるリオンの提案により、今夜はパーティーを開くことになった。


「なぁ、クリス。」


「ん?何か嬉しそうだね、ボル。良いことでもあった?」


「わかるか!クリス。だってよ、明日から緊急事態宣言が解除されて冒険者ライセンスの資格が取れるようになったんだぜ!憧れていた魔物退治ができるんだぞ!もう、早く朝にならないかと待ち遠しくてさ!」


「アハハ…。そうなんだ。」


「で、クリス。お前はどうするんだ?参加するのか?」


「参加って、冒険者ライセンス?」


「当たり前だろ。」


「バルミスタ国王様に聞かないとわからないよ。僕はボルと違い、護衛任務でヨンダルク国に来ているからね。」


「あ、そうか…。できたら、一緒に魔物退治したいぜ。」


「そうだね。」


「良いわよ、クリス君。」


「「え!?」」

クリスとボルは、声がした方に視線を向けるとシリーダとバルミスタがいた。


「えっ!?シリーダ妃様!それに、バルミスタ国王様!にアイリス様!」

驚愕したボルは、つい大声が出てしまった。


「良いわよね?あなた。」


「ああ、目的は果たしてくれたのだ。それに、せっかくヨンダルク国に訪れているのだからアイリスと一緒に学院の皆と過ごしても構わない。私達の護衛にユナイト達がおるから安心して行ってきなさい。」


「で、ですが…。」


「お父様も良いって言っているのだから、明日は学院の皆と冒険者ライセンスを取りに行きましょうクリス。」

アイリスは、クリスの右手を両手で優しく包むように掴んで胸元の高さまで上げて微笑んだ。


「わかったよ、アイリス。」

クリスも微笑んだ。


その後、クリスはアイリスとリースと一緒に笑いながら賑やかに食事を摂っていた。


だが、城内で誰もが楽しんでいる中、恐れていた事態が起こっているとは誰も気付かなかった。




【ヨンダルク国外・ペナンの森】


城内でパーティーが行われている夜中、冒険者ライセンスの資格で使用されるペナンの森。


ペナンの森は、木々が生い茂ており視界は悪いがゴブリンやウルフ、アグレッシブ・ラビットなど弱い魔物しかいないので、試験をするために使われたり、冒険者の成り立てや戦闘訓練するためによく使われていた。


しかし、山から森に掛けて流れている川から極希に、山に住み着いているイクシオンという半魚人みたいな魔物が現れることがある。


イクシオンは、種類によっては騎士団や上位の冒険者よりも強い個体すらあると言われている。


城から遠く離れたペナンの森の川は月明かりによって照らされおり、健やかに流れている川に次第に大きな影が映し出された瞬間、川からイクシオンの最上位であるイクシオン・ロードが飛び出てきた。


イクシオン・ロードは、周囲を見渡して獲物を探すと近くにいたゴブリン3匹を見つけた。


ゴブリン達は、イクシオン・ロードを見た瞬間、慌てて逃げ出した。


しかし、イクシオン・ロードは一瞬でゴブリン達に接近し背後から鋭い爪が伸びた大きな右手を振り下ろす。


イクシオン・ロードの右手のそれぞれの指には水流が発生しており振り下ろした瞬間、水流は水の刃として放たれゴブリン達の体を切り裂き、一瞬で肉の塊となった。


イクシオン・ロードは、肉の塊になったゴブリンの肉を左右の手で掴み取り(むさぼ)る。


食べ終えたイクシオン・ロードの口元は血で赤く染まっており、再び、川へとゆっくりと歩み寄る。


その時、草がぼうぼうと生い茂ている木の根元に月明かりによって何かが光っていることに気が付いた。


気付いたイクシオン・ロードは、方向を変えて光っている物を摘まんで拾い上げた。


拾い上げた物は、妖艶な緑色に輝くネックレスだった。


そのネックレスこそ、クリス達が必死に探していたドリヤードの加護だったのだ。


イクシオン・ロードは、妖艶に輝くドリヤードの加護に魅入られ、イクシオンの黒色の瞳が緑色に変わり、まるで操られたかの様にドリヤードの加護のネックレスを首元に近づけるとネックレスのチェーンが一瞬で伸びて装着した。


すると、ドリヤードの加護は緑色に輝き、光がイクシオン・ロードを飲み込んだ。


イクシオン・ロードの巨体が更に大きくなり、灰色だった皮膚が黒色に変化し、筋肉質だった肉体が更に強化され鎧の様な肉体へと変貌した。


「グォォ!」

変貌したイクシオン・ロードは、獰猛な雄叫びをあげながら膨大な魔力を解き放つ。


イクシオン・ロードが放った膨大な魔力は衝撃波となって、周囲の木々は弓の玄の様にしなり川の水は縁に乗り上げた。


変貌したイクシオン・ロードは、そのまま川へ飛び込み姿を消した。




【ヨンダルク城・大広間】


皆とパーティーを楽しんでいたクリスだったが、変貌したイクシオン・ロードの膨大な魔力を薄らとだったが感知し、険しい表情で大きな窓ガラスから森の方向を見た。


「どうしたの?クリス。そんなに険しい表情をして。」


「いや、気のせいかな?今、森から膨大な魔力を感じたんだけど。アイリスとリースは、どうだった?」


「私は、何も感じなかったけど?」


「私もよ。クリスの勘違いだと思うわ。だって、あの森はペナンの森と言ってゴブリンとかウルフなど弱い魔物しかいないもの。だから、冒険者ライセンスの試験とか新人冒険者、戦闘訓練などに使われているの。まぁ、極希にイクシオンが現れる時もあるけど、それでも、たかが知れているわ。それに、試験の時は、それぞれの班にベテランの冒険者や騎士団が2人ずつ付き添って行われるから大丈夫よ。」


「なら、良いけど…。」


「クリス、あなた疲れているじゃない?今日は、ゆっくり休みなさい。」


「そうだね、そうさせて貰うよ。ありがとう、アイリス。」


「なら、私の部屋で一緒に寝ましょう!」

リースは、クリスの手を取る。


「ちょっと待ちなさい!何でそうなるのよ!リース。いい加減、クリスを諦めなさいよ!」

アイリスは、クリスの手を取っているリースの手首を掴んだ。


「アイリス、知らないの?恋ってのは、奪って手に入れるものなのよ。」


「あなた、馬鹿なの?」


「あら、自信がないのが見え見えよ。」


「リース、あなた目が悪くなったの?ううん、目だけじゃなくって、頭も悪くなったみたいわね。」


「誰が、頭が悪いですってぇ!アイリス。」

アイリスの言葉によって、リースの額に血管が浮き出た。


「あら、自覚していたの?」


「この、カマトト女!」

リースの言葉にアイリスの頬が引き攣った。


「言ってくれたわね、あなたこそ、単細胞女!淫乱女!」

アイリスとリースは、お互いの額を当てたまま睨みつけ合う。


「~っ!誰が、単細胞で淫乱ですって!」


「誰が、カマトトよ!」

アイリスとリースは、怒りで魔力の制御が緩み膨大な魔力が解き放たれた。


「ちょ、ちょっと落ち着いて2人共。」

慌てて止めに入るクリス。


アイリスとリースの膨大な魔力によって周囲がざわめき出し、バルミスタとヨルズが慌てて駆けつけて無事に騒動がおさまった。


(リースは、ああ言っていたけど。やっぱり気になるな。何だか、嫌な胸騒ぎがする。気のせいだと良いのだけど…。)

クリスは、再び窓ガラスから森を見つめるのであった。

次回、冒険者ライセンス試験です。

もし宜しければ、ご覧下さい。

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