表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

目覚める禁忌の力

アイリスはクリスと2人で氷華の花の採取に行きたかったがクラスメイトに知られており、仕方なく護衛に騎士団達も呼び皆で一緒に採取しに山へと向かった。


探索していた時、クリスが人の気配に気付き、見渡すと盗賊団【風魔】を発見した。


クリス達は、すぐに探索をやめて国へ戻ろうとしたが、【四季風神】第4席であるバルダス達に囲まれる。


クリスと騎士団達は、アイリスとクラスメイト達を逃がしたがバルダスと盗賊6人がアイリスの後を追った。


クリスはヤンバレを倒し、バルダスを追うのであった。

【スノー・ランド国・山の中】


「「ハァハァ…。」」

一面雪に覆われて真っ白の中、盗賊から逃げるため道を覚えているアイリスが先頭を走り、後ろにはクラスメイトの男子6人が白い息を出しながら必死に走って山を下っていた。


「ハァハァ…。糞、何でこうなるんだよ!」


「ヒィヒィ…。ぼ、僕…も、もう走れないよ…。い、今、思ったんだけどさ。僕達で盗賊達を倒せるん…じゃない?」


「ハァハァ…。そ、そうだよな…。あの無能のクリスでも倒せたんだからな…。か、隠れて、お、同じ様に不意打ちすれば勝てるよな?」


「ハァハァ…だな。アイリス様が追手は7人と言っていたし、俺達が盗賊の手下を1人ずつ倒せば7対1にできるぜ。」


「ヒィヒィ…そうだよ。形勢逆転できて、国民のヒーローになって、も、もしかしたら、この中でアイリス様と…結婚できるかも。国王様になれば…アイリス様だけでなく、王室は側室も認められているはず…だったから可愛い女の子とも結婚できるはず…だよ。」


「「おお!!」」

大きな喜びに男子達の疲労が飛んだ様な声をあげる。


(はぁ、丸聞こえなのだけど…。男の子って、本当に下衆ね。少しは、クリスを見下さずに見習いなさいよ。クリスの爪の垢を煎じて飲ませたいほどだわ。)

「あなた達、馬鹿なことは考えずに逃げるわよ。それに、あなた達では無理よ。」

一度ため息したアイリスは、後ろに振り返りながらキリッと睨みつける。


「しかし、アイリス様…。」


「絶対に失敗するから、このまま走って逃げるわよ。」


「「……。」」

男子達は、お互いに無言で頷いて足を止めて、クリスが不意打ちをした時の様に近くの木々に登って身を隠した。


「ちょっと!?あなた達、何しているの!?お願いだから、言うこと聞きなさい。あなた達では絶対に無理だから!」


「ハァハァ…。大変、失礼ですが、アイリス様は俺達のことを見くびってますよ。」


「ハァハァ…。アイリス様、見ていて下さい。盗賊7人は無理でも最低でも3人は倒してみせますから!」


「フー、盗賊が来たらアクア・ショットで倒すぞ。」


「「わかった」」


「~っ!」

アイリスは男子達を見捨てることもできず、歯を食い縛りながら腹をくくるしかなかった。



「ん?どうした?なぜ、逃げなかったのだ?【水の乙女】。観念したか?それとも、まさかとは思うが、ただのガキと一緒に俺様達を迎え撃つつもりなのか?」


「「~っ!?」」

魔力と気配を消しきらず身をだけを隠して隠れているつもりの男子達は、気付かれて息を呑んだ。



「ここで、私があなた達を倒すわ。」



「まぁ、良いぜ。相手が【水の乙女】なら相手に取って不足はない。俺様を楽しませてくれるよな?その前に、まず隠れているつもりのガキを落とすか。それで、隠れているつもりか?ガキ共!エア・カッター。」

バルダスは、右手に握っている剣を大きく横に振り抜いて風魔法エア・カッターを放つ。


「ウォーター…。くっ。」

(バルダスだけじゃなく、魔法を唱えた直後に部下6人から一斉に襲われたらキツイわね。)

アイリスは水魔法ウォーター・カッターで迎撃しようと思ったが、盗賊の部下6人がアイリスの隙を窺っていたのでジャンプして避けるしかできなかった。



バルダスのエア・カッターは、前方の広範囲の木々を切断した。


「「なっ!?」」

「う、嘘だろ!?何で、俺達の居場所がわかったんだ?うぁ~。」

「「痛っ」」

木々の上に登って隠れていた男子達は、驚愕しながら落下して背中やお尻から落下した。


「ククク、アハハ…。魔力と気配を消せない奴が、一丁前に不意打ちしようと思うなんてな。ガキは、これだからな。まぁ、好きだぜ。勝つために挑んでくる、その根性と度胸はな。そうだな、特別に魔法攻撃をしてみるか?俺様は避けずに食らってやるぜ。お前達は、【水の乙女】だけ警戒しろ。」

「「ハッ!」」

手で顔を覆って笑ったバルダスは、両腕を開いてゆっくりと歩み寄る。


「俺達を見くびるな!やるぞ!」


「「わ、わかった。」」


「「アクア・ショット」」

男子達は両手を前に出して水魔法アクア・ショットを唱えて、テニスボールぐらいの小さな水玉を1個ずつ召喚して飛ばし、バルダスに当てた。


「どうだ!参ったか!」

「俺達は、アクア・ショットが使えるんだぜ!」


「ククク…。何だ?この攻撃は?全く水弾が圧縮されていない。これじゃあ、まるで水鉄砲だな。服を濡らすだけだ。まぁ、確かに嫌がらせにはなるな。」

バルダスは、無傷で嘲笑った。


「な、何で無傷なんだよ!?確実に当たったはずだろ…?」


「やはり、ここにいるガキは普通のガキみたいだな。魔力とは何なのか全く理解していないみたいだ。死ぬ前に教えてやる。魔力は魔法が使えるだけじゃないんだぜ。魔力は、身体強化もできるんだ。こんな風によ。俺様の部下を倒したガキは、信じられないが実戦だというのに魔力の身体強化していたぜ?魔力での身体強化は魔法の身体強化と比べ、段違いに難しい。なぜなら、魔法の身体強化は唱えれば意思で解除するか気絶や絶命、強化を超えるダメージを負うまで、唱えた時の魔力が切れるまで維持できる。だが、魔力の身体強化はずっと意識して維持しないといけないんだ。だが、メリットがある。強化度は魔力での身体強化の方は一点集中できる分、大幅に強化できるんだ。魔力での身体強化は俺様みたいなベテランでも難しく、実戦では使いきれないほど高難度の代物だ。何せ、少しでも集中が切れたら、身体強化は切れて致命傷になるからな。かといって、身体強化に意識をしていたら目の前の対処が遅れてしまう。特に不意打ちされた時など、どうしようもない。最後、魔法が全てだと勘違いしているみたいだから教えてやろう。さっきも話したが魔力を一点集中させ、それを更に圧縮すれば…。」

バルダスは右拳に膨大な魔力を集中させて圧縮することで、右拳を覆っている魔力がバチバチとスパークする。


「下手な魔法よりも、威力が勝るんだぜ!」

バルダスは、笑みを浮かべながら右拳で近くの巨木の幹を殴った。


轟音と共に巨木の幹は抉れてミシミシと音を立てながら巨木が倒れ、鈍い音を立て積もっている雪が盛大に舞散った。


「「~っ!?」」

巨木が倒れるのを見た男子達は、呆然と立ち尽くして顔を青く染めて恐怖で体が震えあがり息を呑んだ。



「ククク…。どうした?先ほどまでの勢いは、何処へいったんだ?体が震えているぞ?」


「ぼ、僕は、まだ死にたくないよ。」

「ま、待って!お、俺を置いていくなよ!」

「「うぁ~。」」

男子達は、アイリスを置き去りにして必死に逃げた。



「はぁ~、これだからなガキはよ。全く興が削がれたぜ。【水の乙女】、お前には同情するぜ。まさか、姫様を置いて逃げるとはな。で、お前は逃げなくって良かったのか?」


「あなた達が諦めて見逃してくれるなら、一番良かったのだけど。」


「残念だが、見逃すはずないだろ。」


「でしょうね。だから、私が逃げた場合、クラスメイト達が追いつかれてしまい人質になってしまうでしょうし。それなら、無駄に体力を消費せずに戦って堂々とあなた達に勝って、心置き無く帰った方が良いと判断したまでよ。」


「言ってくれるな。だが、懸命な判断だ。流石【水の乙女】だな。ククク…。俺様も一対一で戦いたかったんだ。精霊を宿した相手とな。お前達は、手を出すなよ。」


「「ハッ!」」

盗賊の部下達は、邪魔にならない様にバルダスの後ろに下がった。


「良いの?せっかく、有利な状況なのに。」


「良いのさ。もともと、部下達には一切、手を出させないでいたからな。部下を連れてきたのは、お前を逃がさないためだ。」


「一対一で、私に勝てるとでも思っているの?」


「思っているさ。だからこそ、こうして一対一で戦うのさ。」


「私も嘗められてものね。」

アイリスは、膨大な魔力を解放すると同時に周囲に水流が渦巻く。


「やはり、精霊を宿している奴は他の猛者よりも比べ物にならないほど魔力が凄いな。ハハハ…。」


「その身を持って思い知りなさい!アクア・ショット!」

アイリスは、右手を前に出して無数の圧縮した水弾を放つ。


「エア・アーマー。」

バルダスは身体中に風を纏い、風は鎧の形になった。


風の鎧を纏ったバルダスはスピードが上がり、右側に移動しながら水弾を避ける。


(くっ、速いわね…。)

アイリスは、水弾をバルダスに向けて放ち続けた。



避けられた水弾は、雪が積もっている地面を深く抉り木々を貫通し、岩に穴を開けていく。


「ハハハ…。やはり、本気は違うな。先ほどよりも威力もそうだが、弾速も速くなっている。エア・カッター。」

バルダスは楽しそうに笑い、走りなから剣を3回振って3本の風の刃を放った。


「ウォーター・カッター!」

アイリスは右手を横に振って1度に3本の水の刃を放ち迎撃する。


水の刃は風の刃と衝突して打ち勝ち、そのままバルダスに向かったが避けられて周りの木々を斬り倒した。


「これ以上は近づけそうにないな。ならば、サイクロン!」

バルダスは剣を内側から外側に振りながら中級風魔法サイクロンを唱え、竜巻を発生させて積もっている雪を巻き上げる。


舞い上がった雪により周囲一体がホワイト・アウト現象が起き、視界が真っ白に染まり何も見えなくなった。


「くっ。」

アイリスは、左腕を顔の前に出して雪を防ぐがバルダスの姿を見失った。


視界が悪くなった状態に陥ったアイリスは、固唾を飲んで周囲を警戒する。


(右側から魔力の気配。)

「うっ。」

魔力感知をしたアイリスは振り向いたが、風の刃がアイリスの左腕を掠め血が流れる。


(ここに留まっていたら、不味いわ。)

「逃がさないぜ、【水の乙女】。」

アイリスはここから離れようと移動するが、バルダスは高速で移動しながら風の刃を放ってアイリスの行く手を塞ぐ。


四方八方から次々に風の刃がアイリスを襲った。


「うっ。」

アイリスはギリギリで避けることが精一杯で掠り傷がどんどん増えていき、アイリスの足下にはアイリスの血が飛び散り赤く染まっていく。


魔法で迎撃しようにも周囲は雪で真っ白で視界が悪いだけでなく、ただでさえ風の刃は透明で見づらい分、アイリスの対応が遅れていた。


逆に反撃しようにも、魔力感知でバルダスの魔力は追えるが動きが素早いので追いつくこともできず、また魔法を当てることは難しく、広範囲の大規模な魔法攻撃に転じた場合、発動までに時間が掛かるので、その時に風の刃が来たら避けきれないと判断して回避だけに集中することしかできなかった。


(このままだと、相手の思うつぼでジリ貧になるわ。どうにかしないと…。運頼りは嫌いだけど。一か八か、広範囲の大魔法で一発逆転を狙うしかないわね。)

「アクア・ウェー…。えっ!?嘘…。」

アイリスは水大魔法アクア・ウェーブを唱えようとしたが、先にバルダスが風の大魔法エア・イーグルを唱えており、アイリスの目の前には大きな風の鷹が低空飛行で大きな鋭い(くちばし)でアイリスの体をを(つらぬ)こうとしていた。


(何で、大魔法を使うための魔力の兆候がなかったのに。くっ、そういうことね。膨大な魔力をわかりにくくするために大きな魔力を発しているサイクロンの間近で大魔法を使ったんだわ。私としたことが、こんな単純なことに気付けなかったなんて。)

「クリス…。ごめん。」

回避が間に合わないと判断したアイリスは目を瞑り、涙を溢しながらクリスの姿を思い出して謝罪をした。


「きゃ。」

目を瞑って覚悟したアイリスだったが、痛みではなく、誰かに抱かれて驚きの声をあげた。


アイリスが目を開けると空高く飛んでおり、サイクロンで巻き上げた大量の雪エリアから抜け出して夕日でオレンジ色に染まったクリスの姿があった。


クリスは、アイリスをお姫様だっこして高くジャンプしたことで風の鷹をギリギリ躱すことに成功していた。


避けられた風の鷹は、そのまま低空飛行で一直線に飛び大きな音を立てながら木々を凪ぎ払っていった。



「く…りす…。」

「ごめん、アイリス。お待たせ。」

呆然としていたアイリスは、クリスの笑顔を見た瞬間、涙を浮かべながらクリスに抱きついた。


「よっと…。ここまで来れば大丈夫かな。」

高くジャンプしたクリスは、アイリスをお姫様だっこしたまま枝に着地し、アイリスをソッと下ろした。


「アイリス、傷だらけだけど大丈夫?」

「うん…。掠り傷だけだから…。」

「……。ところで、クラスメイト達は?」

アイリスの怪我を見たクリスは、歯を食い縛り質問した。


「大丈夫よ、私を置いて先に逃げたわ…。」

「……。」

クリスは、ギュッと右拳に力が入る。


「あとは、僕に任せて。僕が残った人達を押さえるから、アイリスは先に逃げて。」


「私も戦うわ。直接、戦ってわかったけど【四季風神】の強さは伊達ではないわ。」

「流石に勝てるとは思ってないよ。時間を稼ぐだけだから。もし部下の人達が追ってもアイリス1人なら逃げ切れるよね?」


「そんなの嫌よ!クリス、お願い。私と一緒に戦うか、一緒に逃げて。お願いだから…。」

アイリスは胸騒ぎがしており、ここでクリスと離ればなれになれば二度と会えなくなる様な予感がしていたので、クリスの右手を両手で握って必死に懇願した。


「アイリス…。」


「クリス、お願いだから…。」




「ちっ、せっかくの一対一に水を差すなよ。ガキが!」


「申し訳ありませんが、今度は僕があなたの相手をさせて頂きます。」


「お前がいるということは、ヤンバレの奴は負けたんだな。ちっ、あいつ、油断しやがったな。あれほど忠告したんだがな。まぁ、良いだろう。ヤンバレを倒した褒美だ。特別に俺様が相手をしてやる。だが、その対価は高いぞ。お前の命を貰う。」


「仕方ないです、ここは絶対に退けませんので。」


「確認するが、お前がここにいるということはヤンバレを倒したんだよな?」


「はい、倒させて頂きました。」

にっこりと微笑むクリス。


「ククク…面白い!来いよ、ガキ。お前達は、【水の乙女】を逃がさない様にしろ。あと、邪魔立てもさせるな。負傷している今の【水の乙女】なら、お前達でも十分に対等に戦えるはずだ。」


「「ハッ!」」


「アイリス、ごめん。何も手を出さないで欲しい。バルダスと一対一で戦わせて欲しい。」


「ダメよ!」


「頼むよ、アイリス。」


「……。はぁ、わかったわ。でも、無理はしないこと。良いわね?」

クリスの真剣な表情を見たアイリスは、渋々と了承するしかなかった。


「もちろん。僕が少し頑張れば、きっとクラスメイト達が騎士団達に報告してくれてるはずだから援軍が来るはずだし。」

クリスは、拳を前に突き出す。


(そうだと良いのだけど。でも、悪いけど、私を置いて逃げた人達が本当に報告してくれるとは到底思えないわ。正直、期待できないわね。まぁ、クリスがピンチになったら割って入れば問題ないし。)

「……ええ、そうね。バルダスは任せたわよ、クリス。」

アイリスは右拳を突き出して、お互いの右拳を軽く当てて木の枝から下り、クリスは枝から枝に跳び移ってバルダスに迫る。


「エア・ショット!」

バルダスは、走りながら自身の周囲に無数の圧縮した空気弾を召喚してクリスに向けて放つ。


しかし、クリスは魔力の身体強化をしてスピードを上げて圧縮した空気弾を躱わしていく。


「ククク…。やはり、お前は魔法での身体強化じゃなく、魔力での身体強化だな。それは、諸刃の剣だ。メリットは大きいがそれ以上にデメリットがあり、実戦で使うとは馬鹿げているぞ。エア・カッター!」

バルダスは、剣を振り風の刃を放つ。


クリスは木の枝から飛び降り、雪が積もっている地面に踵落としをして雪を噴水の様に舞い上がらせる。


「目眩ましか?だが、甘い!エア・ショット!」

バルダスは無数の圧縮した空気弾を放ち舞い上がった雪を軽々と貫通させたが、そこにはクリスが居なかった。


「いないだと!?~っ!?」

バルダスは驚愕したと同時に本能が警告を鳴らしたので慌てて後ろに振り返るとクリスが右手を内側から外側へ振ろうとしていた。


クリスはバルダスの首筋を狙って手刀を繰り出すが、バルダスは本能によって逸早く気付きギリギリ左腕を上げて防ぐことに成功した。


クリスは、バルダスの体勢が整う前に手刀から蹴りに繋ぎ連続攻撃をして追い打ちをする。


「くっ。」

クリスの連続攻撃はスピードと威力があり、バルダスは防ぐことしかできず、時々、クリスがフェイントを織り混ぜてくるのでクリスの拳や蹴りが時折だが決まる。


しかし、バルダスは風の鎧を身につけており、クリスの攻撃は弾かれて決定打とはならなかったが風の鎧の形が崩れていき、衝撃が緩和されないようになりバルダスは吐血して怯んだ。


(ここだ!)

「ハァァ!」

クリスは拳で怯んでいるバルダスの鳩尾、次にくの字になって下がったバルダスの顔面を殴り、横腹を蹴った。


「ぐぉぉ…。」

「あまい!」

バルダスは苦悶の表情を浮かべながら剣を横に振ろうとしたが、クリスは片手で止めて掌底打ちでバルダスの顎を下から上に打ち抜いて連続攻撃する。



「糞が~!調子に乗るな!ガキガァァ!ウィンド・ウォール!」

「うぁ。」

バルダスは、鼻血と口から血を流しながら自身を中心に風の壁を起こしてクリスを弾き飛ばした。


「ぐっ。」

クリスは雪が積もっている地面を転がったが、途中で体勢を整えて両足と左手をついて後ろにズリ下がりながら踏み止まった。


「ぐっ、糞。ペッ、まさか、俺様がこれほど追い詰められるとは予想外だったぜ。認めるのは尺だが、接近戦ではお前に分がある様だ。だが、納得できた。ヤンバレのことだ、攻撃重視で防御を疎かにして戦って負けたんだろうな。ククク…。それに、今の戦いでわかったことがある。お前、魔法が使えないか、使えたとしても大した魔法が使えないだろ?」

バルダスは右腕の袖で口元と鼻血を拭き取り、血が滲んだ唾を吐いて胸元から金属の筒に入ったハイポーションを飲んだ。


バルダスの掠り傷や小さな打撲でできた腫れなどが治っていく。


「さぁ、どうでしょう?」

(回復されたのは、キツイな。)

クリスは頭を傾げながら微笑むが、内心は険しかった。


「まぁ、良い。今度はこちらから行かせて貰うぞ。サイクロン。」

バルダスはハイポーションが入っていた金属の筒を投げ捨てて袖で口元を拭い、再びサイクロンを唱えて周囲の雪を舞い上がらせて辺り一体の視界を塞ぐ。


「ククク。これで、どうしようもないだろ?」

嘲笑いながらバルダスは、舞散る雪で姿を消した。


「クリス、気を付けて!ただでさえ、バルダスの風魔法は透明で視認が困難だから魔力感知で対応するしかないわ!」

再び、ホワイト・アウトになったアイリスは、心配して大きな声で忠告する。


(【水の乙女】、もう遅いぜ。こうなれば俺様の勝ちは確定したのも同然だ。ん?あのガキは何処だ?)

口元を緩めて勝利を確信したバルダスだったが、クリスが魔力と気配を消したので、バルダスはクリスを見失った。


(この状況は、ヤバイ。逆に接近されかねない。)

バルダスは、直ぐにサイクロンを解除したが舞い上がった雪は直ぐには落ちずに周囲を漂っており視界は悪いままだった。


「糞、何処だ?後ろか!」

小さな雪を踏む音を聞き逃さなかったバルダスは、クリスの居場所に気付いて振り向いた。


クリスはバルダスに魔法を唱えさせないために右足でジャンプキックをしたが、バルダスが後ろに下がったので空振りに終わった。


しかし、クリスは空中で体を捻り左足の回し蹴りに繋げた。


「チッ。」

バルダスは両腕をクロスにしたクリスの回し蹴りを防ぐと同時に魔力を高める。


(来る!)

クリスは、バルダスの魔力が増大したので魔法がくると判断してバック・ステップして離れようとした。


しかし…。


「もう遅い。この辺り一帯は、俺様の攻撃範囲だぜ。こいつからは、もう逃げ切れねぇぜ!あらゆる物を切り刻めハリケーン!」

バルダスは邪悪な笑みを浮かべて風大魔法ハリケーンを唱え自身を中心に巨大な竜巻を起こす。


だが、その竜巻の大きさはサイクロンとは比較にならないほど巨大であったため、クリスは巨大な竜巻に飲まれた。


「ぐぁぁ…。」

巨大な竜巻に飲まれたクリスは風の渦に抗うこともできず、バルダスの周囲をグルグルと回りながら無数の鎌鼬で全身を切り裂かれて上昇していく。


「ハハハ…。これで終わりだ!エア・イーグル!」

バルダスは両腕を挙げて魔力を集中させ、クリスが巨大な竜巻から弾き出されるのを待ち、クリスが弾き出された瞬間、両腕をクリスに向けて風大魔法エア・イーグルを放った。


「クリス!避けてぇ~!」

アイリスは、悲鳴をあげた。


「うっ…。」

弾き飛ばされた空中でクリスは体を捻り向きは変えれたが空中では身動きが取れず、下から迫る風の鷹を避けることができなかった。


「ハァァ!」

クリスは、限界まで魔力を高めて身体強化の強度を上げる。


そして、風の鷹の鋭い嘴を両手で受け止めたが、押しに負けて風の鷹と一緒にグングンと上昇していく。


「まさか、受け止めるとはな。だが、これで、終わりだ!()ぜろ!」

バルダスが左腕を上に伸ばして左手を強く握り締めた瞬間、風の鷹は球体状に大爆発をした。


「きゃ。」

アイリスは右腕で顔を隠し、左手でスカートを抑えて衝撃波に耐える。


風の鷹が大爆発したことにより、衝撃波に発生して空に浮かんでいた空は一瞬で吹き飛び、木々は弓の玄の様に(しな)り、地面に積もっていた雪はあっという間に吹き飛び茶色の土が顕になった。


空から、クリスが真っ逆さまで頭から落ちてくる。


「クリス…。」

呆然と落下するクリスを眺めていたアイリスだったが、我に返って逸早くクリスを救出するために衝撃波で倒れている盗賊達の間を通ってクリスに駆け寄る。


「アクア・ウォール。」

アイリスは、両手を上げて噴水の様に大量の水を地面から上昇させクリスを受け止めた。


アイリスは水の量と圧力を調整しながら、ゆっくりとクリスを下に下ろしたがクリスの傷を見て言葉を失った。


クリスの全身は鎌鼬によって切り傷があちらこちらにあり、特に風の鷹の大爆発を間近で受けた胸元は酷く皮膚が(ただ)れていた。


「クリス…。ねぇ、クリス。お願いだから目を開けて…。」

アイリスは、気を失っているクリスを膝枕をして涙を溢しながらクリスを抱き締める。



そんなアイリスに、バルダスと盗賊6人が歩み寄る。

「とんでもない化け物だったぜ。だが、頼みのガキは、もう目を覚まさないぜ。大人しく捕まれ【水の乙女】。お前に、もう勝機はない。」


「……そうね。だけど、条件があるわ。大人しく捕まってあげる代わりにクリスは見逃してくれないかしら?もし断るなら、勝てないとわかっていても私はこの命が尽きるまで戦うわ。」

アイリスは、クリスを見つめて決心した。


「まぁ、良いだろう。そのガキは、見逃してやる。」

バルダスは頷いた。


「わかったわ。ありがとう、クリス。こんな姿になるまで、命懸けで守ってくれて。ごめんね、私、あなたを裏切る形になってしまって…。」

アイリスはクリスに口づけをして、優しくクリスの頬を撫でた後、太股からクリスを下ろして立ち上がりバルダスのところへと歩み寄る。


「これを、腕につけろ。」


「何これ?ブレスレット?」


「ああ、ブレスレットだ。だが、ただのブレスレットではない。古代の貴重な品物さ。それをつけた術者は、魔力が一切使えなくなる代物だ。まぁ、精霊を宿した者なら多少は魔法は使えるが、それでも一般人程度になる。」

バルダスは胸元からブレスレットを取り出してアイリスに渡した。


「……。」

(私の分まで生きて幸せになって、クリス…。)

アイリスは、クリスを優しい眼差しで見て目を瞑りブレスレットをつけた。


「物分かりが良い奴は好きだぜ。気に入った国に帰国するまで、俺様の女になれ。手始めに、誓いの熱いキスしようぜ。」


「ふざけないで!誰が、あなた何かと!」

アイリスは、バルダスの頬をビンタした。


「いてぇな。だが、俺様は気が強い女は好きだぜ。そうだ、お前に良いもの見せてやる。」

バルダスは邪悪な笑みを浮かべて指を鳴らすと盗賊の部下達は嘲笑いながら抜刀してクリスに歩み寄っていく。


「ま、待って!約束が違うじゃない!」


「良いこと教えてやる。約束なんてものは、破るためにあるもんだぜ。殺れ!」


「クリス!クリス!目を覚まして!お願いだからぁ!」


「うっ…。アイリス…。」

アイリスの声が聞こえ目を覚ましたクリスは、ゆっくりと起き上がる。


「クリス!」

立ち上がったクリスを見てアイリスは、歓喜の声をあげる。


「「~っ!」」

クリスの姿を見た盗賊達は怯み、足を止めた。


「ちっ、その傷で立ち上がれるとか本当に化け物だな。お前達、接近するな!そいつは危険だ!接近せずに魔法攻撃して、この場で確実に殺せ!後々、俺様達の驚異になるからな!」



「「ハッ!」」

「クリス~!」

「「エア・ショット!」」

アイリスの悲鳴と共に、盗賊達は圧縮した空気弾を放つ。


「……。」

意識が朦朧としているクリスは、立ち上がっているのがやっとの状態だったため、無防備で圧縮した空気弾が次々に当たり、ふらつきながら後ろの木の幹に凭れ掛かった。


それでも、盗賊達は攻撃の手を緩めず圧縮した空気弾を放ちクリスに直撃する。


「止めて~!クリスが死んじゃう!」

アイリスは慌ててクリスに駆け寄ろうとするが、バルダスに手首を捕まれて近づけなかった。


「何言っているんだ?さっきも言ったが、殺すために決まっているだろ?あのガキの強さは、正真正銘の化け物だからな。将来、驚異になるのは目に見えている。ここで、確実に息の根を止めるんだよ。さぁ、【水の乙女】お前も目を逸らさずに目に焼き付けるんだな。あのガキの最後よぉ!」


「いや~!やめてぇ~!お願いだから!」


「ククク…アハハ…。」

アイリスが悲鳴をあげる中、バルダスは嘲笑った。


(もう体が動かないし、感覚も全くない…。アイリスと約束したのに守れそうにない…。ごめん、アイリス…。僕は…もう…。)


「諦めちゃダメよ、クリス。私達の最愛の子、クリス。」

クリスは意識が飛びそうになった瞬間、透き通る様な懐かしい女性の声が聞こえた。


「誰?」


「今は、私のことよりも守りたい人のことを考えなさいクリス。あなたなら、きっと大切な人を守れるわ。だって、私とイエティの子供なんだから。自分の力を信じ、自信を持ちなさいクリス。私達の…最愛のクリス…。」


「ハァァァ!」

失いかけた意識を取り戻したクリスは、雄叫びをあげながら体を起こして魔力を限界まで高める。


クリスが発する膨大な魔力を前にした盗賊達、バルダス、アイリスは目を大きく見開き唖然として立ち尽くす。


「まだまだだ!僕は…こんなものじゃない!!」

クリスが限界を超えようとした時、クリスの足元に複雑で高度な魔法陣が現れると鎖が出現し、クリスの両腕、両足、胴体に絡みつく。


「こんなものぉ!うぉぉぉ!」

クリスは両手に拳を握り締めて力を入れて引きちぎろうとすると鎖から重い重厚感のある音が鳴る。


力ずくで鎖を引きちぎろうとするクリスは、鎖が接触している部分から血が飛び散るが、それでも、お構いなしに引き下がらずに鎖を引きちぎろうとする。


「ハァァァ!」

クリスは強く歯を食い縛り、口から血が滲む。


そして、右腕、左腕、右足、左足と順に鎖を引きちぎっていき、最後の胴体に巻きついていた鎖をも引きちぎった瞬間、魔法陣が銀色に輝き出して垂直に光の帆柱が発生した。


光が終息していき雪が降り出し、魔法陣から雪の嵐が吹き荒れる。


荒れくる雪の中、巨大な影と金色の鋭い眼光が光り、次第に雪が落ち着いてクリスの姿が顕になった。


「クリス…なの…?」

アイリスは、口元を押さえながら信じられない表情を浮かべて呆然と立ち尽くす。


クリスがいた魔法陣の場所には、人とはかけ離れたクリスの姿があった。


クリスの姿は巨大な白い毛のゴリラの様な生き物。


そう、お伽噺に出てくるイエティそのものだったのだ。


「な、何だ…。この、ば、化け物は?それに、この異常に膨大過ぎる魔力…。まさか、あのガキも精霊を宿していたというのか?そんなこと、一言も聞いてねぇぞ!おい!」

クリスが放っている膨大な魔力を前にしたバルダスは、体が震えながら訴える。


その隙に、アイリスは走ってバルダスから逃れた。


「「ヒィ。」」

間近でクリスが放っている膨大な魔力と威圧感を前にした盗賊達は怯んで尻餅をつき、そのままお尻を引きずりながら下がる。


「グオォォ。」

「「ぐはっ。」」

クリスは一瞬で盗賊達に迫り、巨大な右拳で盗賊2人をまとめて殴って吹き飛ばした。


「「ヒィィ…。」」

残りの盗賊4人は、腰が引けたまま四つん這いで必死に逃げようとする。


「グオォォ。」

「「ぐぁ。」」

クリスはジャンプして盗賊達を飛び越し、盗賊達の逃げ道を防いで右腕で物を払うかの様に外側から内側へと腕を振るって、盗賊達まとめて吹き飛ばした。


「糞、死ね!化け物!エア・カッター!」

バルダスは剣を振って4本の風の刃を放ち、後ろを向いているクリスの背中に直撃した。


だが、クリスの体が切れるどころか掠り傷すら付かず無傷だった。


クリスは、ゆっくりとバルダスに振り向く。


「む、無傷だと…。そんな馬鹿な…。」


「ならば!これなら、どうだ!エア・イーグル!」

バルダスは風大魔法エア・イーグルを唱えて、巨大な風の鷹を放つ。


風の鷹は、一直線にクリスに襲い掛かる。


クリスは右腕を挙げて拳を握り締めて振り下ろし、接近する風の鷹を叩きつけて消滅させた。


クリスは、ゆっくりとバルダスに近づく。


「な、何だと!?こうなれば、エア・アーマー。吹き飛べ!あらゆる物を切り刻め、ハリケーン!」

バルダスは風の鎧を纏い、巨大な竜巻を発生させてクリスを飲み込む。


しかし、クリスは吹き飛ぶどころか鎌鼬が荒れくる巨大な竜巻の中にも関わらず、何事もないかの様に無傷でバルダスに歩み寄り距離を詰めていく。


「糞、糞!吹き飛べぇ!刻まれろ!」

バルダスは両手を上げ、魔力を限界まで高めてクリスを吹き飛ばそうとするが、巨大な竜巻の中から、クリス鋭い金色の眼光が光ると同時に巨大な右拳が現れ、物凄い速さでバルダスに襲い掛かった。


「がっ。」

魔力を上げることに集中していたバルダスは、反応が遅れてクリスの巨大な拳が直撃し、風の鎧は意図も簡単に粉砕され消滅し、バルダスは白目を向いて吐血しながら吹き飛ばされ、木に衝突したが勢いがあり木が折れ、次々に木々に衝突しては木々を折っていき、最後、遠く離れた絶壁に衝突して止まったが既に息絶えていた。


「ク…クリス…。」

アイリスは、ゆっくりとクリスに歩み寄る。


「アイリス、こっちに来ないで見ないで欲しい。僕は…もう、この通り人じゃないんだ。この姿、おぞましいだろ?」


「ううん、どんな姿になってもクリスはクリスよ。私は、クリスが好き、大好き!」

アイリスは、クリスに抱きついた。


「アイリス…。」

クリスは前屈みになり、優しくアイリスを抱き締めた。


「言い忘れていたわ。ありがとう、クリス。命懸けで守ってくれて。」

アイリスは、両手でクリスの頬に当てて背伸びをして口づけをした。


アイリスが口づけをした瞬間、クリスの体が光り元の人間の姿に戻った。


「アイリスが…無事で…良…かったよ…。」

限界を超えたクリスは気を失い、アイリスに凭れ掛かった。


その様子を木の影からマミューラが剣を握ったまま見守っていたが剣をおさめてアイリスに姿を見せた。


「姫様、ご無事でしたか?」


「マミューラさん!はい、クリスのお蔭で私は掠り傷ですみました。ですが、クリスが…。」


「クリスは、私が担ぎましょう。一先ず、城へ帰りましょう。」

「はい。」

マミューラはクリスを担ぎ、アイリスと共に城へと戻ることにした。


「あの、マミューラさん。」


「何でしょう?」


「いつ頃から見てました?」


「フフフ…。姫様がクリスに告白しているところからですかね。見ている私が恥ずかしいほどでした。」


「~っ!」

「フフフ…。冗談です。とても良い雰囲気でしたよ。」

恥ずかしさのあまり、アイリスは口をパクパクさせながら顔を真っ赤に染まる。


そんなアイリスを見て、マミューラは微笑んだ。


暫く、お互いに無言で歩いていたが、アイリスはマミューラに聞きたいことがあったので覚悟を決めて尋ねることにした。


「あ、あのマミューラさん。お聞きしたいことがあります。クリスの、その、何と言えば良いのかわかりませんが、クリスの正体を始めから知っておられたのですか?」

アイリスは、足を止めて自身の胸ぐらを掴んで尋ねる。


「……。」

マミューラも足を止めてアイリスに振り向き、直ぐには答えずに一度目を瞑った。


「知っていましたというよりも、クリスを拾った時に、おそらく、そうだろうなとは思っていました。なぜなら、クリスを拾った日、突然、膨大な魔力を感知した瞬間、何百年と雪が降っていないはずの雪が降り始め、私は様子を窺うために足を運んだ先に血が付着した赤ん坊のクリスとクリスの首にかけられたクリスの文字が入っている銀のプレートのネックレスを見て確信しました。」


「お父様達は、知っているのですか?」


「はい、私自身が直接にご説明しましたのでご存知です。ですが、【六花】のメンバー達は「クリスは危険だ!クリスを直ちに処分するべきだ。」と国王様に進言しました。ですが、国王様と妃様は「クリスは、何も悪くないから。」と仰りましたが、私を除く【六花】メンバー達は納得しませんでした。ですから、私が納得しない他の【六花】メンバー達に、もしクリスが復讐するために国王様方に牙を向いた際、私が責任持ってクリスを処分するという条件付きで他の【六花】メンバー達も渋々でしたが納得してくれました。それで、私がクリスを引き取り育てることになりました。」


「なるほど、そうだったのですね。だから、他の【六花】メンバー達は、いつもクリスを邪険にしていたのですね。」


「はい。」


「最後に、もう1つ。始めからクリスが精霊を宿していたことは知っておられたのですか?」


「それは、推測で宿している可能性は十分に高いと私や国王様達は思っていました。なぜなら、お伽噺に書いていましたがイエティは精霊を宿しており殺害されたのに精霊が暴走したとか封印したとは一切書かれていませんでした。考えられるのは3つ。1つ目は、騎士団達が勝手に坪に封印した場合。2つ目は、騎士団達の中の1人が勝手にアリア様と同じ器になった場合。3つ目は、精霊がクリスに移動した場合が考えられます。1つ目の坪に封印したのならば現在も封印の坪はあるか存在しているはずですがないですし、もし売ったのであれば何処の国か、もしくは誰が宿したのか、すぐに公になるのですが全くないのが現状です。なので、除外されます。次に2つ目の騎士団達の中の1人がアリア様と同様に己の身に宿して封印した場合、騎士団程度の器だと精霊の力に耐えきれず死ぬ可能性が非常に高く意味がありませんので、ほぼ可能性が0です。そこで、3つ目のアリス様とイエティの子供クリスに転移の可能性は十分にあると私や国王様達は判断しました。」


「あの、マミューラさん。お父様達に今回の件のこと、クリスのことも話すのですか?」


「はい、それが約束ですので。」


「~っ!お願いします、マミューラさん。今回の件ことは話しても構いません。ですが、クリスのことだけは報告しないで下さい。お願いします、報告しなで…。もし、クリスが精霊の力に目覚めたと知ったら…。きっと、クリスは…。」

アイリスは深く頭を下げ、アイリスの足元はポツポツとアイリスの涙で濡れていく。


「姫様、残念ですが約束なので報告させて頂きます。ですが、ご安心して下さい。きっと、報告しても大丈夫です。寧ろ、報告した方が良いと私は思います。なぜなら、クリスは姫様を守るため、こんなボロボロの姿になるまで、本当に命懸けで姫様を守ったのですから。」


「……そうですよね。」

アイリスは、涙を拭きながらマミューラの背中に担がれているクリスの顔を見て微笑んだ。


そして、無事にアイリスとマミューラは城へ戻った。


後に、先に町に逃げ戻ったクラスメイトの男子達は、アイリスを置き去りにしたことがバレない様に誰にもバルダスが率いる【風魔】盗賊のことを話してはいなかった。


アイリスとクリスは特に気にしてはいなかったが、男子達はアイリスを見る度、後ろめたさを感じて居づらくなり、家族ごと他国へと移住するのであった。




【スノー城・玉座の間】


クリスとアイリスは手当てをして貰い、マミューラと国王、妃、【六花】メンバーはアイリスから詳しく事情を聞くために待っていた。


クリスは目を覚ますことはなかったのでベッドで安静になり、手当ての終わったアイリスは玉座の間でヤンバレ、バルダスの【風魔】のこと、そして、複雑な面持ちでクリスがイエティになったことを正直に全員に報告した。


「そうか…。クリスは、とうと記憶を取り戻したのか…。報告ありがとう、アイリス。」

妃は両手で口元を当てながら不安な面持ちになり、一方、国王は手を顎に当てて頷く。


国王と妃は、クリスを実の息子の様に接してきていたのでアイリスの報告を聞いた瞬間、どうにかならないのかと思考していた。


「……はい。」

クリスの処分が気になっているアイリスは緊張しており返事が遅れ、慌てて左右手で左右のスカートの裾を軽く摘まんで会釈した。


「国王様、直ちにクリスを処分するべきです!」

【六花】第2席のユナイトは、大声を出して申告する。


「そうです!ただでさえ、あのヤンバレを倒しただけでなく、風の国の【四季風神】第4席バルダスを追い詰めるほどの力を持っているだけでも驚異だというのに、よりにもよって、精霊の力に目覚めたなどと、もう既に我々でも手に負えなくなっている。眠っている今なら簡単に精霊を抜くことができます。」

【六花】第3席ユーリアは、クリスの殺害処分に賛成だった。


「やむ得ないな。」

「そうだな。」

「仕方ないですね。」

残りのマミューラを除く【六花】メンバー達も賛成した。


「そんな!クリスは、あんなにボロボロになるまで、それこそ命懸けで私を守ってくれたのよ!それなのに処分するって、可笑しいわよ!」


「姫様、前と今とでは状況が全く違います。今までは、クリスは自分がお伽噺に出てくるクリス本人だとわかっていなかった。だが、今は違う。クリスは己を知ってしまった。ならば、いつ我々を裏切り、両親の復讐を果たしても可笑しくはない。しかも、その力は十分に備わっているのですよ?これは、国の危機、いや存続に関わる重大事項です。俺は以前からクリスを鍛えることに反対していました。なぜなら、あの時も言いましたが、こんなことが(いず)れ起こり得ると思っていたからです。」

ユナイトは、アイリスに振り向いて話した。


「それは、そうだけど…。でも!」


「姫様、そろそろ自身のことだけでなく、周りのことも考えて下さい。」


「でも、可笑しいでしょう!命懸けで助けて貰った恩人を殺すなんて!」


「確かに姫様の命の恩人でもありますが、クリスは、それ以上に国を転覆させるほどの危険分子でもあります。」


「クリスは、そんなことはしないわ!」


「では、何処にそんな確証があるのですか?」


「それは、今まで間近に接してきた私ならわかるわ!私が保証するわ!」


「姫様、それだけですと何の保証もないと同じですよ!しかも、先ほども言いましたが…。」


「落ち着け!お前達!」

国王の大声で場が静まり返る。


「両者の言い分は(もっと)もだ。そこで、クリスが目を覚ました際、一度、本人に直接尋ねてみてから決めるとしようではないか。それで、良いな?」


「「ハッ!」」

【六花】メンバー達は、片膝を床について敬礼をした。


「……わかりました、お父様。」

(クリス…。もし、あなたが処刑されるなら、私と一緒にこの国を出ましょう。ううん、あなたが国を出ず処分を受け入れたとしても無理矢理にでも私が連れ出すわ。)

このままではクリスが処分されると思ったアイリスは意気消沈になっていたが、クリスのことを考えると意思が強くなった。



その後、アイリスはクリスが目を覚ますまで、ずっと傍に付きっきりで看病し続けた。


深夜、メイド長であるサリアはドアを少し開けて部屋を覗いた後、部屋に入って、微笑みながら椅子に腰掛けたままクリスのベッドに凭れて寝ているアイリスにソッと毛布を掛けて静かに部屋から出ていった。


そして、事件から3日が経ちクリスは目を覚ました。


「ん?ここは…。アイリス?」

クリスは目を覚ますと目の前に心配しているアイリスの姿があった。

アイリスは、ずっと両手でクリスの右手を握っていた。


「クリス!良かった、目を覚ましたのね。もう、本当に心配したんだから!このまま、ずっと目を覚まさないかと思ったじゃない!」


「心配させてごめん、アイリス。」


「ううん、無事で良かったわ。ところで、大丈夫?何処か他に痛いところとかない?」


「アハハ…大丈夫。特に、そんなに痛いことろはないよ。だけど、まだ身体中が少し痛いし、寝たきりだったから怠いかな。それより、アイリスが無事で本当に良かったよ。」

クリスは、上半身を起こして笑顔を浮かべた。


「クリス!もう、心配したんだから…。」

アイリスは涙を浮かべてクリスに抱き、クリスはアイリスの頭を優しく撫でた。


「だけど、そうか…僕は…。」

自分が何者なのかを思い出したクリスは、表情が暗くなる。



「え!?クリス!?その瞳、どうしたの!?」

アイリスは、クリスの瞳を見て驚愕する。

前までのクリスの左右の瞳は、アイリスと同じ青色だったのだが、今のクリスの左目だけ悪魔の瞳と言われて恐れられている金色になっていた。


「瞳?」

クリスは頭を傾げると、ノックする音が聞こえた。


「どうぞ。って、アイリス?ちょ、な、何しているの?」


「良いから!ジッとして!」

アイリスは、慌ててタオルでクリスの左目を覆い隠して後頭部で結んだ。


「アイリス。あのさ、片目隠されると見えにくいんだけど。」


「我慢して!クリス。お願いだから絶対にそのタオルを取らないで。」


「……わかったよ。」

クリスは全く訳がわからなかったが、深刻な表情のアイリスを見て何も言わずに納得した。



「失礼します。お取り込み中、申し訳ありません。姫様のお声が聞こえたので、クリスが目を覚ましたと思いまして。」

部屋の前に待機していた騎士団達が、部屋に入ってきた。


「騎士団の皆さん、無事で何よりです。」


「ああ、クリス、お前も無事で良かったぞ。お前のお陰で俺達だけでなく、姫様も助かった。本当に感謝している。だが、すまねぇ、クリス…。」

騎士団達は、クリスの右手首にバルダスが持っていた魔力を封じるブレスレットを、両手には手枷、右足に鉄の重りがついている足枷をつけた。


「これは、いったい何のつもりなの!あなた達!これじゃあ、まるで犯罪者扱いじゃない!」

アイリスは、激怒しながら大声で騎士団達を問い詰める。


「大変、申し訳ありません姫様。ですが、【六花】様方のご命令ですので、ご理解贈りますようお願い致します。本当は、私共もこんなことはしたくはありません。ですが…。」


「ですがって、何よ!」


「ありがとう、アイリス。気持ちは嬉しいけど、でも、騎士団の皆さんを困らせるのは良くないよ。あの、僕は構いませんので、皆さんも気にしないで下さい。」

クリスは動揺することもなく、素直に受け入れた。


「すまねぇ、クリス。」

「私も同行させて貰うわ!良いでしょう?」

「……はい。」

圧倒的なアイリスの威圧感を間近で受けた騎士団達は、頷くことしかできなかった。


こうして、クリスとアイリスは騎士団達から玉座の間に案内された。




【スノー城・玉座の間】


玉座の間には、一番奥に国王と妃が椅子に腰掛けており、前にはマミューラを含む【六花】メンバー6人が勢揃いして立っていた。


「クリス、目を覚ましたばかりだというのに本当にすまないな。」


「いえ、僕の方こそ、自分がついていながらアイリスを危険な目に合わせてしまっただけでなく、怪我を負わせてしまい。大変、申し訳ございません。僕の力不足が原因です。」


「いや、気にすることはない。そんなにボロボロになるまで命懸けでアイリスを守り抜いてくれたことに心から感謝する。」

国王は頭を下げた。


「私からもお礼を言わせてクリス君。ありがとう、あなたのお蔭でアイリスは無事に助かったわ。」

妃は、立ち上がって頭を下げた。


「ところで、クリスよ。なぜタオルで片目を隠しているのだ?怪我ではあるまい、怪我なら眼帯だからな。」


「そうだぞ、国王様方の御前で在られるんだ!タオルを外せ!無礼者が!」

ユナイトは、クリスを指差して忠告した。


「わかりました。ごめん、アイリス。取って良いかな?」


「……ええ、わかったわ。」

アイリスは、ゆっくりとクリスに巻き付けたタオルを外した。


クリスは、閉じていた左目を開ける。


クリスの左目を見たアイリス以外の全ての者は驚愕した。

「何だ!?その瞳は…。金色だと!?」


「悪魔の瞳…。」

【六花】ユナイトと3席ユーリアが同時に動き、剣を抜刀してクリスを襲う。


「~っ!?アクア・ソード。」

「落ち着きな、ユナイト、ユーリア。」

アイリスは慌てて水の剣を召喚してユーリアの斬撃を受け止め、マミューラは剣を振り下ろそうとしたユナイトの手首を掴んで受け止めて睨みつけた。


「これが、落ち着いていられるか!総隊長のあなたなら、わかっているはずだ。俺達の怒りを!」


「もちろん、知っているさ。だが、その相手はクリスじゃないだろ?あなた達兄妹が憎んでいる相手は【炎帝】のはず。同じ片目が金色だからといってクリスに殺意を向けるのはどうかと思うさね。」


「そんなことは関係ない!悪魔の瞳の持ち主は、早めに摘んだ方が良いに決まっている。皆も知っているだろ?クリスと同じ片目が悪魔の瞳の持ち主である【炎帝】、【氷帝】は独裁主義で、逆らう者は皆、処刑をしている。悪魔の瞳の持ち主は異常な強さと強欲を持ち、まともな奴はいないんだ!」


「そうよ!あんな悲劇が起こる前に、処分した方が皆のためになるわ!」

過去を思い出したユーリアは、兄ユナイトに強く賛同して剣に力を込める。


「ちょっと、何で、そうだと勝手に決めているのよ!あなた達、馬鹿じゃないの!クリスはクリスよ!あんな馬鹿な王達と一緒にしないで頂戴!」

アイリスは、鍔競り合いながらユーリアを睨みつけながら力を込めてユーリアを弾き飛ばす。


「姫様、剣技も上達してますね。ですが…。」

ユーリアは踏ん張って体勢を整え、アイリスに襲い掛かろうとする。


しかし…。

「おい、今、僕じゃなく、今度はアイリスに手を出そうとしたよな?」

魔力を封じられているはずのクリスが魔力で身体強化しており、一瞬で移動してユーリアの目の前にいた。


「「~っ!?」」

ユーリアだけでなく、マミューラを除く全員が驚愕して息を呑んだ。


(おや、とうと取得できたんだねクリス。)

マミューラは、クリスの成長を間近に見て感心して微笑んでいた。


身体強化しているクリスは、自身の魔力で身体強化しておらず、自然の魔力を体内に吸収して身体強化をしていたのだ。


この世界で唯一、マミューラしか取得できていないため、神の御業や奇跡と言われる技であった。



クリスは足枷され重りがついている右足で、全く反応できていないユーリアの側頭部にハイキックしようとする。



「クリス!ダメ~!」

アイリスの大声によって、クリスは右足をギリギリでユーリアの側頭部の位置で止めて直ぐに足を下に下ろして重りをユーリアに当てない様にした。


勢い良く足枷の重りが床に落ちたことで、大きな重厚な音を立てながら床にヒビが入った。


「あ、すみませんユーリア様。あと申し訳ありません、国王様。床にヒビを入れてしまい…。どうしよう…。」

(あれ?僕は何で、こんなに苛立ったんだろう?いつもだったら、間に入って止めるだけだったのに。アイリスが止めてくれなかったら、確実に攻撃をユーリア様に当てていた。僕は、一体どうしたんだろう…。)

クリスは、あたふたしながら謝罪をし、自分の心境の変化にも戸惑った。


「やはり、貴様は危険だ!」

「お前達、そこまでだ!」

我に返ったユーリアはクリスの首を狙って剣を振ろうとしたが、今度は国王が大きな声を出して止める。


「「くっ。」」

ユナイトとユーリアは、剣をおさめて元の位置に移動した。


「クリス、そなたを呼んだのは、そなたの心が知りたかったのだ。」


「心ですか?」


「そうだ、クリス。己を知った今、私達を恨んでおらんのか?」


「へ?あの、僕が国王様やアイリスを恨んでいるって、どういうことですか?僕は、国王様達に感謝していますけど。」


「感謝だと?」


「はい。だって、おそらくですが国王様達は僕の正体を薄々気付いていたと思うのですが?」


「まぁ、そうだが。」


「それなのに、僕を殺さずに優しく接して育ててくれましたので感謝しています。」


「だが、そなたの両親を殺めたのは…。」


「いえ、僕の両親を殺めたのは、あのお伽噺に出てくる国王です。なので、気に病まないで下さい。それよりも、重大なことがあると思いますが?」


「重大なことだと?」


「え?僕はてっきり、風の国との関係をどうするのかを尋ねられるかと思っていましたが。盗賊【風魔】の正体は風の国の騎士団だったことや、特に大きな問題はアイリスを狙った件や【四季風神】第4席のバルダスを倒してしまったことだと思うのですが?」


「~っ!ゴホン、ああ、そうであったな。一先ず、この件、クリスの処罰はなしとする!良いな?」

国王達はクリスの件で頭が一杯だったため、風の国との関係をどうするのか忘れていた。


「「ハッ!」」

【六花】メンバー達は一斉に頭を下げた。

ユナイトとユーリアは、頭を下げたままクリスを睨みつけながら歯を食い縛った。


その後、風の国にアイリスを狙った件は国の方針なのか、【四季風神】の第4席バルダスを倒したことなどの内容を書いた手紙を送ることにした。



【風の国・ユートピア国・ユートピア城・玉座の間】


玉座の間の奥には椅子が2脚置いてあり、女王でる姉の【風の戦姫】と言われている風の精霊シルフィを宿したエアリナとその弟【疾風のソニック】と言われている風の精霊ソニックを宿したエアロが椅子に腰かけており、2人の前には【四季風神】の3人が膝を床につけて敬礼している。


「あ~あ、失敗したみたいね…。」

エアリナは、スノーランドから送られてきた手紙を目を通して、どうでも良いような興味がない声で呟きながら右手に持っている手紙を軽く上に放り投げた。


放り投げられた手紙は、周囲に小さな風の渦が発生して粉々に刻まれて紙くずへと変わり床に舞散った。


「どうした?姉さん。」


「大した問題じゃないわ。ただ精霊ウンディーネの回収にバルダスが失敗して倒されたみたい。」


「そっか。」

弟のエアロも大したことはないかの様に軽い返事をして【四季風神】達を一瞥する。


「ええ、問題ありません、エアリナ様、エアロ様。バルダスは俺達の中で一番弱かったので大した被害ではありません。」


「そうですよ。元々、バルダスは【四季風神】から外れ、バルダスより力のあるバルダスの妹のバルシナが第4席に入れ替わる予定でしたし、何の問題もございませんわ。」

【四季風神】第1席のバハードは力強い瞳で報告し、第2席のネーラは肯定した。


「そもそも、今回の任務ウンディーネ回収はバルダス本人が言い出したことですし。成功した暁には【四季風神】に在籍させて欲しいと、自ら条件をつけたのに失敗するとは情けない奴です。」

第3席のナイルは、ため息を吐いた。



「ナイルの言う通り、情けない話だ。バルダスの奴、出国する前に精霊を宿していても相手は子供だから余裕とか言って豪語していたのに失敗するとは。俺達【四季風神】の顔に泥を塗りやがって!もし生きてノコノコと帰って来ていたら、どの道、俺が処刑していたところです!」

バハードは激怒し、膨大な魔力と殺気を放った。


「まぁ、落ち着きなさいバハード。今回の件は、私にとってはどうでも良いことの。バルダス何かのために、報復とか面倒だからしないわ。だけど、予定通りバルシナを【四季風神】第4席にしてあげなさい。あとバルダスの件も教えてあげなさい。良いわね?お前達。あとは任せたわよ。」

エアリナは、指示を出した。


「「ハッ!」」

バハード達は、一斉に頭を下げた。


「で、姉さん。これから、どうするんだ?いつ、スノー・ランドの連中に報復するのか?」


「先も言ったけど、今は気分が乗らないからどうでもいいの。だから、報復なんて面倒なことしないわ。まぁ、もし気が向けば全勢力で完膚無きまで叩き潰せば問題ないし。いつでも、潰せる国だから、ほっといても特に問題ないわ。」


「まぁ、姉さんがそう言うなら俺は良いけど。その代わり、もし潰す時は俺にあの【武帝】と言われているマミューラと戦わせてくれよ。」


「別に構わないわよ。好きにしなさい。」


「よっしゃ!サンキュー、姉さん!約束だからな!」


「はぁ、わかったわよ。」

エアロは力強く拳を握って喜び、エアリナは面倒くさい様な表情をして弟のエアロを見てため息を吐いた。

もし良ければ、次回もご覧下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ