5.鈴木家
「あー美味しかった!」
制服を脱ぎ捨ててムツミのベッドにダイブする。
勝手知ったる他人の家なのだ。
ムツミも姉妹の様に育ったので気にしてない。
でも、今日は違った。
「あっ!これから運動に行くのに!ゴロゴロしない!」
「はーい」
そうだ忘れてたわ…。ごめん、ムツミ。
「ジャージお兄ちゃんのでいい?」
「ありがとう。入るなら大丈夫」
お兄ちゃんとは1番上の一樹さん。
鈴木家の中では恰幅が良く身長も190を超える長身。
もちろん裾も腕もまくらなければ引きずる。
名門大学を出て大手企業に就職してる。
きっと会社の人に知られたら命はないかもしれない…
さすが長男。色気が凄まじく、女性ならイチコロ。
今は一人暮らししているけど、荷物は残ってるのもあるみたい。
ムツミからジャージを受け取って着替えた。
イツキが待っているはず。
見た目に似合わず律儀な男なんだ。
だからさらにモテる。
脱ぎ捨てた制服をハンガーにかけて玄関に向かった。
「ママさん行ってきます!」
「遅くならないでね〜。今日泊まっていくんでしょ?お風呂用意しておくから〜」
ママさんが手を握ってふりふりしてくる。
他の人が見たら彼氏にしているみたい。
24歳の子どもがいる様には見えない容姿。
ママとは大違いだ。
「リンナねぇーいってらっしゃい」
ダイニングから声がする。
「トキ!久しぶり!ちょっと大きくなったね」
「リンナねぇーはよこ…」
ごちん!
イツキのゲンコツかトキに落ちた。
「いて!兄貴なにするんだよ!」
イツキが睨んだら何も言わなくなっちゃった。
「トキ、部活頑張ってるのね!楽しい?」
「あぁ楽しいよ」
ちょっと拗ねてるトキが可愛い。
十樹は鈴木家の1番下の弟。
この子もとても美少年で天使の様なんだけど、性格と言葉遣いが容姿とあってない。
「今度の大会でも選手に選ばれたんだ観に来てよ。」
「来月の都大会ね!一年生なのにレギュラーに選ばれるなんてやるわね。」
トキは小学生からバスケットボールをやってる。身長は低いけど、スピードとジャンプ力で得点を荒稼ぎするからレギュラーに選ばれない方が不思議。この選抜は必然だろう。
「えへへ」
トキが頭に手を当てて照れている。この子は自分がどれだけ強いのか自覚が無いのか、本当にバスケが好きなんだと思う。