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転移してもいつになれば痩せれるのか  作者: 猫泉満月
第1章 変わらないことと変わったこと
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4.悩み事

「…ナ!ンナ!リンナ!ってば!」



声が聞こえる



「えっ?」

「えっ?じゃないわよ!!掃除が終わらないじゃない!」

「ちょっと考え事を…」

「なによ?考え事って」



…昨日の光る本の続きが気になるなんて言えない。

いつも親身になって悩み事を聞いてくれるムツミ。

でも、昨日のことを話したって私だって信じられない。

光る本なんて、普通ないし。

悩んでるのを見透かしたのかムツミが提案をした。



「今日、バイト休みだし夕ご飯食べて、運動しに行こうか?イツキもバイトないし、護衛につけよう」



イツキとは鈴木五樹すずきいつき、ムツミの双子の兄だ。

今の悩み事とは違うけど、ムツミはわたしがいつも体重が減らないことを気にしてるのを知っている。



「ありがとう。何時にする?」

「早くご飯食べてね!18時にしょう!!部活もないしさ、そうだ!うちでご飯食べる?お母さん今日家にいるし言えばすぐ作ってくれるし!」

「ありがたくご馳走になろうかな。今日、ママ遅いんだ」

「じゃ!決まり!一緒に帰ろう!」



ムツミの家族とは小さい頃から仲がいい。

自営の鈴木家と母子家庭の私の家。

鈴木家はとても優しくて、仕事が忙しい母の代わりに家族のように仲良くしてくれている。

ムツミを見習って夏休みにバイトをしたら、成績がギリギリになってしまいお金は大丈夫だからと母は塾まで行かせてくれた。少し放任なだけで母のことは大好きだ。

鈴木家がとても優しかったからシッターさんを雇うと言った母に泣きついて辞めてもらったこともあった。


 母子家庭でも母は会社役員だし、父は会社の社長だからお金に困ってはいないようだけど自分のお小遣いくらいは稼ぎたかったのに。頭が悪い自分が恨めしい…。

両親の職場は今でも一緒なので夫婦としてはうまくいかなくても仕事のパートナーとしてはとても良好な関係みたい。

最近は学校が忙しいから父には会えてないけどよく電話している。


 ムツミと一緒に帰るので、隣のクラスのイツキに帰り際に声をかけた。



「イツキ!」



ムツミの登場でクラスがざわついてる。

学年でも1、2を争う美人だ。巻き込まれる視線が痛い…。

本人は気にせず話している。



「ムツミにリンナもどうした?」

「今日バイトないんでしょ?ご飯食べたら運動いくよ」

「なんだよ。ないけどなんで俺がお前の予定に合わせなきゃ…」



リンナがイツキの首に腕を回して話し始めた。

私には聞こえない。何を話し始めた?



「わかったよ…」

「わかればよろしい」



話しは終わったようで顔を上げたイツキが照れてるようにも見えたが気のせいかな?



「リンナ、護衛は任せろ。ちょうど俺も運動したかったんだよ。今掃除も終わったから一緒に帰ろう」

「ありがとう、イツキ。ムツミも。廊下で待ってるね」



廊下に出てムツミに聞いた。



「さっき、イツキになんて言ったの?」

「あれはねー、やる気になるおまじないの言葉」

「?」

「イツキにとってはすごーくやる気になるのよ」

「ムツミ!余計なことは言うな」

「言ってないわ」

「待たせたな。行こうか」



私たち3人はムツミとイツキの家に向かった。

昔はよく遊んだけど、イツキとはクラスが違くなって私は塾があるしイツキもバイトで学校ではあまり話さなくなった。

イツキも1、2を争うイケメン、血は争えないと思う。

仲良く話すと周りの女子の視線が痛い…。

さっきだって男子からの視線に女子からの視線もすごかった。

 

 でも、ムツミとイツキは自分たちが原因で嫌がらせやいじめになるのが嫌だからとみんなに伝えてるらしい。

伝えるだけで無くなるのかと思うが不思議と嫌がらせを受けたことはなく、話してる時だけ視線だけが痛い。

帰る時も視線だけすごかったけど…。

3人で近況を報告し合い鈴木家に到着した。



「リンナちゃ〜ん!待ってたのよ!さぁさぁ上がって!りんなちゃんの大好きなご飯を用意したのよ。最近遊びに来なくなっちゃったからママさみしくて!いつでもウェルカムなのに〜」



ドアを開けた瞬間飛びついてきた。



「お母さん!はしゃぎすぎ!」

「母さんリンナがびっくりしてる」

「もぅ〜2人ともママって呼んでっていつも言ってるのに〜」

「ママさん!お久しぶりです。今日は急にすみません」

「いいのよ〜いつでも毎日でも来てくれてイツキも喜んでるし」

「母さん!」

「怖いわ〜リンナちゃんに嫌われるわよ。お腹空いたでしょ。ご飯にしましょう」

「お母さん、これ、すごいご馳走だけど大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。さっきリンカさんが食材を届けてくれたのよ。また、お世話になるからって。

昔からいいって言ってるのにお金だとぜ〜たい受け取らないけど買っちゃったしこのままだと食べ切れないからって言われると断れないのよね」



リンカさんとはわたしの母。三葉鈴加みつばりんか

1時間ほど前に鈴木家に行くと連絡しただけなのに食材を届けてたとは。

さらに短時間でこれだけのご馳走を作れるとはママさん見た目と喋り方からは想像もつかない。



「冷めちゃうから食べましょう♪もう少ししたら他の子たちも帰ってくるし。まず、手を洗わなくちゃね。」

「洗面台借ります」



3人でで手を洗いに行き、ご飯を食べ始めた。



「「「いただきます」」」



ママさんのご飯はとても美味しい。

さすがこの町1番の定食屋さん。

鈴木家のパパさんも同じくらいご飯を作るのが上手で夫婦で経営をしている。

夜も人気で忙しいんだけどパパさんの方針で、ママさんはランチタイムと経理、パパさんはディナータイムと人事で役割分担をしているから小さいときもどちらか家にいてわたしの面倒も見てくれた。

パパさんとママさんは1人増えたところで変わらないとのこと。

この言葉はその時のわたしにとってとても嬉しかった。

パパさんはディナータイムといっても絶対21時までには帰ってきた。

ちゃんとおやすみを子どもたちに言っていく。

わたしの両親とは違っていた。


 小学生に上がるまではママと長い時間いた記憶があるけど、それ以降は鈴木家にお世話になっていたし、両親は出張も多かったからほぼ居候。

鈴木家は嫌な顔せずに私を家族の一員として接してくれた。

ただ、中学生になってからは早く自立して大人になろうと泊まる回数を減らしてみたりしたがムツミが泊まりに来てくれたり、パパさんやママさんが迎えに来てくれて結局ほぼ鈴木家にいた。

 

 流石に今は高校生になったので泊まらないし、塾もあるので遊びにも来れていなかった。

半年ぶりのママさんのご飯。懐かしいし、美味しい。

涙が出そう。 



「何泣いてるんだよ」

「美味しくて…」



本当に涙を流していた。



「リンナが来るの久しぶりだもんね。半年くらいかな」

「泣かないでリンナちゃん!いつでも作るからねっねっ!私たちに迷惑かけないと頑張ってくれてるけど、迷惑なんかじゃないしかえってさびしいのよ〜戻ってきていいんだからね」

「ごめんなさい。とってもとっても美味しくて!」



笑顔になり、パクパク食べてしまった。

隣でイツキがこれから運動するんだろって言ってるけど聞こえない、聞こえない。


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