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異世界に召喚された聖女は呼吸すら奪われる  作者: 里尾るみ
第八章 掴みたい未来
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4.『儀』のはじまり

4.『儀』のはじまり


 『はじまりの地』に、現在の魔王である(カイ)と、神々の代表としてユリシズと、新たな聖女である桜が集まり、顔を合わせた。

 聖女は人間代表なので、桜は聖獣であるレヴィアスの傍へ行く。

「お久しぶりです。レヴィアス殿下」

「……久しぶりだな。元気そうで何よりだ」

 落ち着き凪いだスカイブルーの瞳を桜に向けてくる。

 ユリシズに連れられて王宮を出てから、桜は結局の所、一度も王城へは戻らなかった。

 母と父のそばに居たかった事もあるが、『儀』で、母と繋がった後、どうすれば母を助けられるのかを、昼間は王城で働くカイと毎晩顔を突き合わせて話し合っていた。

 祖父は黙って見守っていてくれたが、祖父にとって最愛の人だった金の女神の娘の創った『壁』を失くす話し合いに、祖父を巻き込むのは気が引けた。

「良い案は出たか?」

 レヴィアスの問いに、桜は苦笑した。

「まずは母と繋がれるか。『壁』とは繋がらず、再生維持はしないと意思表示して、その旨の『諾』をユリシズからも頂けたら、母と魔力を通して生命が繋がれるかを試します」

 サクラの母親は、(カイ)の後ろに控えているウォルディアスが抱き抱えて連れて来ている。

 遠目だが、サクラに少し面影が重なる気がする。

「サクラとサクラの母上が繋がれても、母上が、『壁』と繋がったままでは、サクラの魔力も生命も結局は『壁』と繋がって持って行かれてしまうのでは?」

 ぐっと、サクラが表情を引き締める。

「その恐れがあるので、私の生命が母を通して『壁』に触れる瞬間に、私ごと母を『壁』から、殿下の力と繋がった時のアレを使って引き剥がして欲しいのです」

 

 母ごとサクラまで『壁』に繋がってしまっては、元も子もない。


ーーまた、難題を。


 心の中で苦笑して、レヴィアスは桜を優しく細めた眼差しで見つめた。


「……それがサクラの望みならば」


「出来ますか?」

 問い掛けに、

「初めてだからな。やってみる……としか」


 それは、桜と確実に繋がれるであろう…そして、何度か暴走させ、失敗した事のあるレヴィアスにしか頼めない事だった。


 母と同時にレヴィアスも繋がり、力を暴走させて、『壁』からの干渉を弾き返そうと。


 桜の中の力と繋がって力を暴走させれば、何度か失敗した時の様に強い力で弾かれる。その反発する力を使えば、繋がろうとするであろう『壁』を(はじ)き返し、同時に母親と『壁』との繋がりも引き()がせるのでは、と。


(カイ)と私では、出せる案はこれで精一杯で」

 この案も、昨晩思い付いたくらいなのです。


「ぶっつけ本番だな。得意だ」

 

 何とも心強い(?)言葉に、桜がレヴィアスの右手を両手で包み込んだ。

(カイ)では、何度魔力を繋いでも、レヴィアス殿下の時のように暴走する事が無かったのです。恐らくは、私の魔力の封印に(カイ)の魔力が使われていた事もあってか、私と(カイ)の魔力は馴染みすぎていて」

 兄妹(きょうだい)だからという事もあるのかも知れない。

 昨晩思い付いたというこの方法を、2人は何度も試してみたに違いない。

「でも、これは、私達家族の問題です。もし失敗したとしても、絶対に責任は感じないで下さい」

 

 無理な相談だと、分かっているのだろう。

 そう言った後、桜がレヴィアスの手を額に当てて小さく震える声で「ごめんなさい」と呟いたのを、レヴィアスは聞き逃さなかった。


「きっと上手くいく」


 レヴィアスは桜を優しく抱き寄せて、額にキスを落とした。


 一瞬で離れた柔らかな感触に、桜は慌てて額を両手で押さえた。


「あっあの…‼︎ 先日のお返事は、『儀』の後でさせて頂きたいと……‼︎!」

「ああ。『儀』が終わったら、ゆっくり話そう」

 レヴィアスの綺麗な微笑みを見上げて、桜も微笑む。


 2人で何かを成し遂げようとするのは、2回目だ。

 披露目で光の花を咲かせたあの時と、今回と。


ーーお母様を助けられたとして、私の生命は後どれくらい残るのかしら。


 人として過ごせるくらいには残るのか。

 人以上に長く生きる時間が残るのか。

 それとも。

 全く残らない可能性だって、ある。


ーーもし、それでも許されるなら。


 私も、レヴィアス殿下と共に、歩いて行きたい。



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