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異世界に召喚された聖女は呼吸すら奪われる  作者: 里尾るみ
第五章 披露目
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7.披露目(2)


 色取り取りの光る花が部屋いっぱいに舞い散る様に出現し、会場内は歓喜の声に包まれた。

 練習の際は黄金色に光る花だけだったので、これはある意味レヴィアスから桜へのサプライズであると言えた。

「聞いてなかったんですけど」

 小さく、背後にいるレヴィアスに言えば、ぽんと肩に手を置かれた。

「笑顔笑顔。上手くいって良かったな」

 にーっこりと顔に笑顔を貼り付ける。

「…ありがとうございます」

 礼を言うと、頭を撫でられた。

「今日はカイも帰って来てるし、少し話して来ると良い。私とヴィルヘルムで、会場内なら大丈夫にしておく話にはなっている」

 主には、ヴィルヘルムが桜をピンポイントで探知して、魔素を取り除いているのだが。

「ありがとうございます」

 優しく細められたスカイブルーの瞳を見上げた。

 開会の挨拶を終え、聖女として桜の紹介も終えた。

 一通り貴族達の挨拶も終わり、会場は和やかな歓談の場となっている。

 今回、他国から来た聖女は3人だった。

 リーファ王子のセクドル王国から来た聖女が、王宮にいる間に是非お茶の会をといってくれたので、聖女4人でお茶会を開く事が決まった。

 レヴィアスも先程勧めてくれたが、最近カイがよく城にいないので、彼に聞きたい事は山程あった。

 大方の魔法の詠唱等はヴィルヘルムについて習ってはいるが、闇魔法についてはヴィルヘルムは使えないので、桜も習えてはいない。

 しかし、闇魔法の詠唱他、魔法の講義内容は、披露目の会場で話す様な内容では無い。

ーまたお出掛けされるかもだし、いつなら予定が大丈夫かだけでも確認しておこう。

 令嬢や各国の使者達に囲まれはじめたレヴィアスの側を辞して、桜は会場の前方壁際に立つカイのもとへと歩いた。

ー? 誰かしら。

 カイの横には、体格の良い、長い黒髪を編んで肩に垂らした、朱金の瞳の男が立っていた。

 たまに会話を交わしている様で、目が合っている様だ。

 カイは、いつも言葉少なく静かにしている印象が強く、親しげに会話をする姿は珍しい。

ー知り合いとお話ししてるのなら、もう少し後にした方がいいかしら?

 歩み寄りながら、歩く速度を落とした時。


「サクラ様。今、宜しいですか?」


 背後からかけられた声に、桜は素直に振り返った。

「セクドルの…」

「カテリーナ・ボリスと申します。カテリーナとお呼び下さい」

 優雅に淑女の礼をされて、桜も慌てて礼を返そうとすると、やんわりと制された。

「サクラ様に礼などさせては、(わたくし)、怒られてしまいますわ。そもそも、召喚された聖女と私達(わたくしたち)のような聖女には格差がございます。是非ご記憶に留めておいて下さいませ」

 口を挟めずに目を大きくしていると、カテリーナの横に立っていたプラチナブロンドの青年がアイスブルーの瞳を細めて微笑んだ。

「カテリーナ殿。サクラ殿が驚いていますよ」

 レヴィアスやカイ、アーダルベルトやヴィルヘルム等、キラキラした方々を最近見慣れてはいたが、それでも綺麗だと驚く程、整った目鼻立ちをしている。

「先程、リュイ侯爵様とご一緒に…」

「ええ。ルイーズ・フォン・リュイと申します」

 美しく礼をして、桜の手を取り、キスをした。


 この挨拶には、いつまで経っても慣れない。

 

 桜は、素早く握手の形に手を持ち替えて、軽く握手した。

「九条桜と申します。サクラとお呼び下さい」

 桜とルイーズが挨拶を交わしている間に、カテリーナが飲み物を取って来てくれたようだった。

 さり気なく渡してくれるピンク色のドリンクを受け取って、桜は一口飲んだ。

「苺の味がする」

 ほのかに甘い味に、桜は思わず口を押さえた。

「ティアの実のジュースです。あまり口にされた事はありませんでしたか?」

「初めてです」

 桜の周りにいる男性陣は主にお茶を好んだ為、お話や講義の友にはお茶を頂く事が常だった。


 くらり と、少し目がまわった気がした。


「…?」

 足元がふらついて、思わずルイーズの腕に手を添える。

 謝ろうとするが、頭が回らない。

「大丈夫ですか?」

 身体を支えられて、桜は何が起こっているのか分からないままルイーズに寄り掛かる形になった。

「気分がお悪い様ですね。会場から出た方が良さそうだ」

 腰に手を添えられて、会場の扉へと誘導される。


ー私、この会場からは出られない…。


 必死にまわらない頭を回転させて、見慣れた顔を探そうと会場に目をやろうとするが、周囲はさりげなく背の高い男達に囲まれているようで、視界が阻まれて誰も見えない。


ーヴィルヘルム様が私を探知して下さっている筈だわ…。


 促されて歩を進めながら、何とか意識を保とうとする。

「大丈夫ですよ。カテリーナも、魔素を取り除く光魔法は使えます」

 にこりと微笑んで顔を覗き込んでくるルイーズに、桜はぼんやりと疑問を覚える。

「人が多すぎて、疲れてしまったのかも知れませんね。休める場所へ移動しましょう」


 カテリーナが、桜の手を握る。


ー何故、ルイーズ様とカテリーナ様が、私の体質の事を知っているの……?


 意識が暗闇に落ちて行くのを感じながら、桜は考えることを諦めた。

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