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犯人達の工作  作者: 髙橋朔也
まだらの紐
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使蛇う~つかう~ その伍

 俺が松方先輩を見て絶句していると、誰かが話しかけてきた。

「あの、すみません」

「...」

「あ、答えなくても大丈夫です。私は小室探偵事務所の井草仁」

「あぁ...俺は竜哉」

「では、竜哉さん」

「は、はい」

「松方修さんはトリカブト毒のアニコチンにより死にました。何か心当たりはありますか?」

「な、ないっす」

「なるほど」

 井草と名乗る人物は顎に手を当てていた。そして、ある人物にそのことを伝えると、そいつが俺のところに来た。

「僕は私立探偵の小室錠家だ。あんた、昨日クサリヘビを会社に持ち込んだろ?」

「!」

「そして歯にはアニコチンを塗っていた」

「!」

「推理してやるよ。あんたは死にたかったんだ。そして、コナン・ドイルの『まだらの紐』を知った。そして、まだらの紐と特徴が同じクサリヘビを購入した。だが、購入してからクサリヘビは出血毒だと理解したんだろ?」

「!」

「顔に出てるぞ」

 こいつは俺が松方先輩を殺したと疑っている。だが、俺は殺していない。クサリヘビは購入した。だが、今もカバンに入っている。

 カバンにあるか確認しよう。

「ない!」

 蛇がいない!

「あんたはクサリヘビに噛まれても即効性がないとわかってから、山に行って自生しているトリカブトを取った」

「!」

「クサリヘビの歯にはトリカブトから抽出したアニコチンを塗ったんだ。そして、昨日クサリヘビを会社に持ってきた。そして、死ぬことを松方修に伝えるために小っこい方の会議室で待った。だが、松方修に伝言ミスしたんだ。大きい方の会議室に松方修が来ていた。あんたはクサリヘビを逃がしたが気づかず、隣りの会議室にいた松方修をクサリヘビが噛んだ」

「確かにそうかもしれない。だけどさっき警察官から聞いた。クサリヘビは死んでいたんだろ? アニコチンは即効性の毒だ。クサリヘビの体内にアニコチンを入れても、クサリヘビはすぐに死ぬから松方先輩を噛むことは出来ない」

「そう。お前はクサリヘビに噛まれて死にたかったんだ。だが、アニコチンにをクサリヘビの歯に塗れば、先にクサリヘビが死ぬことを知っていた。だから、テトロドトキシンもクサリヘビの体内に入れたんだ」

「何のことだ!」

「トリカブト保険金殺人事件だ。あの殺人事件のアリバイトリックはこうだ。アニコチンとテトロドトキシンを少しずつ調合したらアニコチンの毒性を少し遅らせられるんだ。つまり、蛇の体内にはアニコチンとテトロドトキシンを入れた。歯にはアニコチンを塗った。これでクサリヘビはすぐには死なない」

「!」

「話せ。あんたが自殺するために用意したクサリヘビが松方修を殺した」

 もう、ここまでだ。

「俺は人生が嫌になって、自殺方法を考えた。そこでまだらの紐に出会った。すぐにクサリヘビを購入した。だが、即効性の毒じゃないことを知ったんだ。それからトリカブト保険金殺人事件のトリックを知ったから、自生しているトリカブトを取って、業者からフグも購入した。そして、二つを調合して実験に実験を重ねた。結果、完璧に出来た。早速クサリヘビに調合したやつを注射した。歯にはアニコチンを塗った。そして、会社に持っていった。そして、会議室で松方先輩を待ったんだ。だが、その間にクサリヘビが松方先輩を噛んで、それからクサリヘビも死んだとは...。

 俺の自宅を調べてくれ。毒の抽出に使った器具とか実験に用いたネズミがいる」

「わかった。安田警部!」

 俺が自殺するために行ったことが松方先輩を殺すことになったとは...。

 気づいていた。松方先輩の死体を見たときに、俺のクサリヘビが殺したんじゃないかって。

「西河原竜哉! 逮捕する」

「はい」

 俺は安田に身を任せた。


 あれから、西河原竜哉の自宅から器具やネズミ、トリカブトとフグがあった。これが決め手となって西河原竜哉は逮捕。

 小室は現場に来てすぐにトリックを私に話してくれた。それから、安田の部下がクサリヘビを最近購入したこの会社の社員を探して、西河原竜哉に辿り着いた。

「小室さんはすごいですね」

「あれくらいは普通だ。安楽椅子探偵として、聞いただけでトリックくらいは理解しないと」

「私は現場にいたのに気づきませんでした」

「なあに。慣れれば簡単だよ」

 小室は事務所でまたインスタントコーヒーを飲んでいた。

「まったく...。安田警部はまたお礼をしてこない。そろそろインスタントコーヒーもなくなるんだが」

「なら、私が買ってきますよ」

「悪いから大丈夫だよ」

「いつも、小室さんにはお世話になっていますし、命の恩人ですよ」

 すると、桂家ちゃんは反応した。

「ねぇ、おにいちゃん。井草さんの命の恩人ってどういうこと? 私、気になる」

「なら、仁と一緒に買い物に行けよ。ほら、仁。桂家に話してみろよ」

「わ、わかりました」

「じゃあ、井草さん。買い物に行きましょう?」

「は、はい!」

 私は桂家ちゃんと一緒に事務所を出ると、手をつないで歩き出した。緊張で手汗が出るが、インスタントコーヒーが売っているショッピングモールまでは徒歩十分だ。手を離すわけにはいかないから、手汗を出さないようにした。桂家ちゃんの手は柔らかいんだな。

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