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犯人達の工作  作者: 髙橋朔也
クローズド・サークル
15/17

招死く~まねく~ その壱

「おにいちゃん! 三枚あるんだったら、三人で行こうよ」

「それもそうだな」

「で、どんな離島なの?」

「千葉県の沖にあるらしい『八坂島(やさかとう)』っていう離れ小島って説明にはあった」

「おお! 凄そうだね」

「ああ。面白そうだな」

「あの、私も行って良いんですか?」

「もちろん、行って良いに決まってる。仁は僕の助手だからな」

 それから、三人で離島旅行の準備を始めた。

「井草さん!」

「どうしましたか、桂家ちゃん?」

石鹸(せっけん)は固形石鹸か液体石鹸のどっちがいいかな?」

「こぼれたらベトベトしますから、やはり固形石鹸ではないでしょうか? ですが、長期間滞在する場合は長く持つ液体石鹸の方が良いでしょう。なら、二つとも持って行ったらどうでしょうか?」

「わかったー! 二つとも持って行こー」

 桂家ちゃんは固形石鹸と液体石鹸を袋の中に入れて、キャリーケースにしまった。

「駄目だ! キャリーケースがあと三つは必要だ!」

「小室さん! 本の数を減らしてくださいよ! ホームズシリーズ全巻いらないでしょう?」

「いや、ホームズシリーズはそこまで厚くないぞ?」

「いえ、十分かさばっていると思えますが?」

「だって、ホームズほど推理力のある探偵はいないだろ?」

「オーギュスト・デュパンとか明智小五郎(あけちこごろう)とか、加賀恭一郎(かがきょういちろう)だってずば抜けた推理力があるじゃないですか?」

「それは認める。だがね、明智小五郎なんて現場にいたにも関わらず犯人が被害者を殺すまで動かないじゃないか! それに、真実を隠して犯人を捕まえようとしない。『何者』とか読んだことあるか?」

「いや、ホームズだって『青いガーネット』で最後に犯人をわざと逃がしたじゃないですか!」

「あれは証拠不十分だからだろ!」

「そうかもしれませんが──」

 その後、一時間ほど論争が続いた。桂家ちゃんは(あき)れて見ていたが、やっとの思いで本の数を減らすことに成功した。


 同月二十三日。私達は八坂港に向かった。八坂港にはすでに他のメンバーも(そろ)っている。私達三人を会わせて八人。私達以外の五人のうち二人は女性で残りは男性だった。

「どうも」

 停まっていた船からスーツをちゃんと着た白髪の男が顔を出して挨拶をした。その男は頭を下げてから、話しを続けた。

「私は八坂島管理者様からご指名されて、今回の宿泊参加者のご案内をさせていただく社錠(やしろじょう)と言う者です。八坂島管理者様からは気軽に『シャーロック』と呼ばれております(ゆえ)に皆様もシャーロックとお呼びください」

 社さんがシャーロックと呼ばれているのはおそらく、(シャー)(ロック)だからだろう。まあ、小室は名前の『錠家』で(ロック)(ホーム)なのだが...。それに、『小室』はホームズ関連だと『小室泰六(こむろたいろく)』を連想させる。

「では皆様、船にお乗りください」

 全員が船の入り口に向かった。船の中にはそれぞれ参加者一人一人専用の八つの個室があり、扉のプレートには名前が書かれていた。だが、なぜ私と桂家ちゃんの名前もわかったのだろうか? まあ、当選したあとで運営側が小室に参加する人物の名前を聞いたのだろう。

 私は『井草様』と書かれた部屋に入ると、荷物を降ろした。

 別に船で二、三時間ほと海を渡るだけだが実に豪華な部屋である。運営側はかなりの成金と見た。

 そんなことを考えながらベットで横になっていると、小室と桂家ちゃんが部屋に入ってきた。

「仁。入るぞ」

「入ってから言うんですね」

「私は入ってまーす!」

 この兄妹、実に呑気(のんき)である。

「さて。何をすれば良いんだ?」

「さあ、わかりませんね」

「じゃあじゃあ、トランプしようよ」

「いや、前回ファミレスで食べたときにやっただろ? 別の遊びをしよう」

「なら、どんな遊びにしましょうか? あまり持ってきていませんが...」

「なら、しりとりぐらいしか思いつかんな」

「じゃあ、しりとりしようよ!」

 という流れでしりとりになった。一番が私で小室、桂家ちゃんという順番だ。

「ええと、リス」

「スイカ」

「怪物」

「積み木」

金木犀(キンモクセイ)

「待って、おにいちゃん。キンモクセイって何?」

 ここでしりとりが中断された。

「キンモクセイってのは、お前の名前『桂家』の由来だ」

「そうなの?」

「そうだぞ。お前の目はイギリス人の親父に似てオレンジ色だろ?」

「うん」

 へぇ。小室兄妹の父親はイギリス人なのか。つまり、ハーフだから桂家ちゃんの目はオレンジ色のような金色のような感じなのか。

 ちなみに小室がハーフとわかる部分はないだろう。顔立ちからして日本人としか思えない。

「キンモクセイはオレンジ色の花だ。そのキンモクセイを『桂花』と言って、『桂花』の『花』の漢字を僕の『錠家』の『家』と同じにしたんだ。お前は生まれたときから目がオレンジ色だったんだ。

 まあ、キンモクセイじゃなくて木犀属全体を『桂花』って呼ぶんだがその頃の僕は博識じゃなかったわけだ」

「おにいちゃんが私に『桂家』って付けたの?」

「ああ、当然だ」

 という感じでどんどん話しが脱線していった。そして、話しが終わる頃には八坂島に到着していたのだ。

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