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犯人達の工作  作者: 髙橋朔也
モルグ街の殺人
12/17

操人る~あやつる~ その肆

 宗弥と康成が殺されたという事件は瞬く間に村中に広まった。もちろん、昼には私と小室の元にも広がってきていた。小室は直ちに私を五号室に招き入れた。

「とうする?」

「どうしましょう」

「安田は呼んである。今、事件を綿密(めんみつ)に調査して僕にそろそろ伝えに来るはずだ」

「なるほど」

 その時だった。扉が二回ノックされて、安田が入ってきた。

「やあ、小室君」

「安田警部補。何度言ったらわかるんだ。二回ノックだとトイレだ。三回ノックしろ」

「ああ、わかってるって。それより、わかったことがある」

「事件のことか?」

「もちろんだ」

「話せ」

「殺したのは康成だ。康成は宗弥を包丁で刺して、それから自分を刺した」

「なら、事件じゃないな。犯人は康成で決まりだ」

「それが、そうもいかない。三笠家の人達が騒ぎ立ている。康成は殺すはずがない、と。だから、君に解決してもらいたい」

「なるほどな。最悪、康成が犯行を行う動機さえ見つけたら良いってことか」

「そういうことだ」

「つまり、康成をどうやって操るか」

「催眠術で誰かに人を殺させる、というのはほぼ無理だ。警察側でも、それは考えていた」

「なあ、気になること聞いて良いか?」

「ああ、いってみろ」

「ここは千葉県だろ?」

「ああ」

「なんで警視庁のあんたがいるんだ?」

「いろいろ手引きした」

「なるほど...。で、何か他に不可解な点はあるのか?」

「ある。非常にある」

「いってみろ」

「前日、つまり昨日だ。昨日、宗二が怪談を行った」

「怪談?」

「ああ。宗二は老後の道楽で怪談をしたりしている。で、その怪談の内容と宗弥康成死亡事件の内容は酷似(こくじ)している」

「ほお?」

「面白くなっただろ?」

「ああ。怪談の内容通りに康成を操ったということだな?」

「そういうことだ。な? 興味深い事件だろ?」

「久しぶりに手応えがありそうな事件だ。マリオネットのように、どうやって康成を操ったか」

「もしくは、操ったように見せかけたか」

「だな」

 小室は立ち上がると、隅に向かった。

「安田。現場の状況と康成の部屋の状態、もしくは写真でもいい」

「わかった。まずは写真を渡す。これさ康成の部屋の写真だ」

「ああ」

 小室は安田から写真を受け取って、じっくりと見た。

「時計が壊れているな」

「ああ。康成はヒステリーの可能性が高い」

「なるほど。あと、何だ? この線香」

「ああ。何か、康成は最近眠れなくなったらしい。そのことを宗二に相談したら、宗二特製の線香を渡されたらしい。良い香りで眠りやすかったと康成が言っていたと証言がある」

「なるほど、なるほど」

 小室は写真を安田に返した。

「次は現場の写真。あと、細かい説明」

「ほら、写真」

「ああ」

「現場の状況はひどい。回りに血が飛び散っている。しかも、宗弥は胸のあたりを滅多刺しだ」

「ほお?」

「死亡推定時刻は警備員が変な声を聞いた時間と一致する。死体におかしな点はない」

「...。大体わかった」

「何が?」

「事件概要だ」

「なるほど。で、次はどうする?」

「もっとくわしく調べてから、また伝えに来い」

「わかった。では、また来るよ」

「ああ」

 安田は手帳を胸ポケットにしまって、五号室を出て行った。

「あの、今のが?」

「唯一の知り合いの刑事だ」

「ああ、わかりました」

「さて...」

 小室は本棚に向かうと、一冊の本を取りだした。

「僕は安田が来るまで本を読んでいるよ」

「わかりました。では、私はこれで」

「待て」

「どうしました?」

「面白いから、安田に着いていけ」

「わ、わかりました」

 私は小室に言われた通りに、安田を追って現場に着いていった。

「井草君は民間人だから、死体は見せられない。証言の聞き取りくらいだ」

「わかりました」

「うむ。では、着いてきたまえ」

「はい!」

 安田はまず、怪談を話した宗二に聞きに行った。

「宗二さん」

「刑事さん」

「どうも。まずは、怪談を聞かせてもらいませんかね」

「かまわんよ」

 宗二は咳払いをしてから、話を始めた。

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