俺と兄貴とチュートリアル3
不味い、まだ何が出来るのか、何をしたら良いのかさえわからない状況で敵が出てくるとかテンプレかよ?!
兄貴のうろたえ方からしてこれは不味い気がする。
「弟よ!気をつけろ!ダイアウルフだ!」
「ちょっと待った兄貴、なぜ言い直した」
「こっちの方がそれっぽいからだ!」
ピンチなのに何言っているんだ…取り敢えず出来る限りをするしかない!
さぁ、何処から来る!
「その方が異世界に来たー!って感じだろう弟よ!」
「兄貴!今大事な所だから黙ってて!」
そう言った途端に死にそうな顔になる兄貴、何でだよ!ってか地球にも居たからねダイアウルフ、絶滅したけど。
そうこうしているうちに前方の茂みから生物が出てくる。
こいつが…ダイア…と思ったら犬耳なお姉さんが出て来た。
着物を着崩した感じだが変な気品が有る。
背中に装備しているやたら大きめな太刀が気になるが…。
ん?兄貴がじっとこちらを見て何か伝えようとしている。
「兄貴?どうしたんだ?と言うか凄い美人な犬耳のお姉さんが!」
なんだろう、兄貴がウィンクしだした、一生懸命手とか足も動かしてる。可愛い。
「あぁ兄貴さっきの黙っててはそう言う意味じゃないよ」
「よく分からんが喋って良いんだな、そのダイアウルフは凄く危険だから離れておいた方が良いぞ、弟よ」
ん?何言っているんだ?異世界的には亜人とか獣人とかじゃないのか?
と思いつつすじっと見てみると何やら犬耳のお姉さんに何か凄く見られてる…殺意とかじゃなく観察されてる感じ、ゾクゾクする…。
すると頭の中に直接兄貴の声が響く。
[大丈夫だ弟よ、敵ではない]
兄貴っ脳内に直接?!
[安全なのか兄貴?]
[便利だよなこの能力]
感想を聞いているわけじゃないんだか…ん?
名前がダイアウルフ(犬耳のお姉さん)になってて黄色いドクロマークが名前の横についている。
[兄貴、名前の横に黄色いドクロマークあるけどこれ何?]
[黄色は警戒はしているが敵対はまだしていない感じだろう、ドクロマークはそのまま戦うと死ぬって事だろうな弟よ]
「きょ…」
「…兄貴だ。」
犬耳のお姉さんが喋った途端に兄貴が言葉を被せる、恐らく兄貴の名前を言おうとしていたとは思うんだけど、知り合いだろうか?
「失礼した、その方がずっと言っていた…?」
「そうだダイアよ、やっとだ。先程会えた…。」
この人ダイアって言うのね、犬耳のダイアだかれダイアウルフってか、兄貴浮かれ過ぎじゃね?と言うか同時に来たと思ったけど俺の方が倒れてた時間は長かったのか、一緒に探してくれてたのかなこのダイアさん。
「兄貴、この人…ダイアさんだっけ?知り合いなのか?」
「ただの顔見知り程度だ、弟よ。」
あ…ダイアさんの尻尾がしょぼーんと垂れていく、ショックだったのかな…。
「兄貴、その言い方は駄目だろ。それは俺も言われたら傷付くよ。」
あ、何か名前がダイアに訂正されて黄色いドクロマークが段々青くなっていく…ドクロマークはそのままかよ。
「…少年、お前は良い奴だな。」
なんで涙目なんこのダイアさん。
[兄貴…何か隠してないか?]
[まぁアレだ、合流するのに少し手間取っただけだ弟よ。何、気にすることは無い]
何だろうやたらピリピリしてる、何か隠してる時の兄貴だなぁ。どうせ問い詰めても喋らなくなるだけだからほっとくしかない。俺もそうだしなぁ…。
「取り敢えず兄貴、腹減ってきたから何か食べ物を探そうぜ?」
「確かに、簡易ではあるが食事にしようか。ダイア、休憩出来そうな場合はこの辺に有るか?」
「はっ!すぐそこに有りますので直ぐに案内いたします!」
「ダイア、言葉が硬い。もっと普通で良い、弟が気を使ってしまう。」
「…こっちやで、足元気いつけてな。」
唐突な関西弁ってリアクションに困る。




