俺と兄貴とチュートリアル その2
「で、だ、兄貴。何故兄貴は妖精になっていて俺はエルフなんだ?」
信じられない事に、兄貴はティンカーベルみたいな小さい妖精になっていたのである。
つまり俺もエルフになっていると言う事だろう…。
「異世界転生だからだ弟よ!」
「兄貴、それじゃ話が進まないから最初からチュートリアル口調で説明してくれ!」
取り敢えず、内容をまとめると俺たちは転生したみたいだ。
そこでの話を俺はまったく覚えてないが、兄貴曰く双子は魂が繋がっているから、また生まれる時も双子らしい。
ただし、本来なら記憶は無くなっているはずなんだが…何か兄貴がやらかしたらしい…が、その辺をはぐらかされる、何やったんだ兄貴…。
「んでこの種族の選択は神様がしたのか兄貴?」
「それは勿論俺だ!」
兄貴かよ…。しかし何だろう?兄貴の顔は良く覚えているのに…前の世界の友達とか、親の顔が、何故だかモザイクが掛かったかのように思い出せない。
「そんな事より弟よ!エロフだぞ!エルフ!」
「兄貴その間違え方はやめろ!」
「大丈夫だ弟よ!エルフと言うかより聖霊に近いハイエルフだ!性別が無いからエロ要素は難しいぞ!」
マジかよ、俺の大切な部位が… 。
「まぁ今更何言っても仕方ないか…取り敢えずチートな能力とかは無いのか兄貴?」
「種族全振りで使ったぞ弟よ」
兄貴!何やってんの⁈そこは色々貰おうよ!無双できるような強スキルとかさ⁈
「弟よ、ここは神が管理しているんだぞ?ガチで育ててる育成シミュレーションに、チートキャラ放り込むか?」
流石兄貴だ…そう言われると納得してしまう。
じゃあアイテムボックス!時間経過無しの容量無限とか⁈
「それこそ経済がめちゃくちゃになるだろう?魔法としては存在はするからそこをやり繰りだな」
マジか…まぁ種族は良いみたいだからそこで我慢しろって事か…。
「因みにハイエルフのスキル等の成長速度は一般の半分以下だぞ弟よ、かわりに寿命でカバーだな!」
大器晩成型だね!序盤で詰む典型的な奴!
「まぁ…スタートしちゃってるし取り敢えず町探さないとそのままゲームオーバーだぞ兄貴」
ん?何か兄貴の様子がおかしい、どうしたんだろう?
「弟よ、妖精の姿で町に入ったらヤバそうなので俺はハイド状態になるから宜しくな」
汚え!全部投げやがった!
言い合っても仕方ないし取り敢えずスキルとかを確認しながら探すしか無いか…。
「先に言っておくがステータスウィンドウとかは無いぞ弟よ」
マジか。
あ、考えたら頭に浮かんだ、何だろうこの感覚。
料理のレシピを頭で考えたみたいな?そんな感じ。
「兄貴スキルはどうやって発動するの?名前叫ぶの?」
「例えば剣道では小手って言わなくてもその動作は出来るだろう?使うスキルをイメージするとその動作とか現象が具現化する。より精度を求めるなら発言するのも良いかもしれんな」
成る程、最初はスキル無しからだから積み重ねた行動がスキルとして昇華されるみたいな感じか、ふむふむ。
つまり取り敢えず何かやっとけばスキルとして獲得出来る可能性はあるのか。
「取り敢えず周囲に注意をするんだ弟よ、警戒スキルと探知スキルは早めに取っとくといいぞ」
要するに耳を澄まして周囲をよく見れば良いのか。
ん?何か蜘蛛の巣に触った様な、そんな何かが反応した感覚…。
「マズい、狼に囲まれている!気を付けろ弟よ!」




