悪夢は永遠に
何回も……
何十回も……
何百回も……
何千回も……
何万回も……
時を超えて、あなたを救いたい。
あなたを救って見せたい。
不条理と不合理と理不尽から。
あなたを救ってみせたい。
違う、本当はそんなことを言いたいんじゃない。
あなたと一緒に居ることのできる未来を築きたい。
火薬と死臭の臭い。
街は焼け、人は死に、希望は潰えた。
未来を夢見ることは不適切だとされ、誰もが下を向いて生きることしかできなくなっている時代。
そんな時代もまた、誰かの手によって過ぎ去った過去とされようとしていた。
私の大切な人を奪いながら。
操縦桿を握る手に力が入る。
目の前の黒い戦闘機械が背中から広がる翼へエネルギーの充填を始める。
「動いて……お願い!」
反応を示すことのないモニターを怒りのまかせて拳で叩く。スーツ中は既に血まみれであるが、生命維持装置のおかげで痛みを感じることはない。
「返事をして……瞬っ!」
既に煙を上げて倒れている戦闘機械へ向けて通信をかける。愛しい彼からの返事は帰ってくる様子を見せなかった。
『諦めろ。彼は死んだ。山瀬 瞬は死亡した。彼は私にとってどうしようもなく死んでもらわなくては困る存在だったのだよ。最も、彼には関係のないことから、私に恨まれているのかもしれないがね』
オープン回線から聞こえてくる声に耳をふさぎたくなった。
アイツが何を言おうとも、恨みが募るばかりだ。
黒い戦闘機械が黒く鈍く光りだす。
「私……何度やっても守れない……」
諦めの言葉が漏れる。
その時だ。目の前に忽然と輝く光が浮かび上がってきたのわ。
その光を私は知っている。私はその光に希望を見出して、絶望を知らしめられた。
「あと何回やれば……違う、あと何回やろうとも絶対に……!」
諦めの言葉を飲み込み、私は光へと飛び込んだ。
行く先はわかっている。そこで、どんな出会いがあるのかも理解している。
私はきっとまた、彼に最初は邪険に扱われるのだろう。
私が守りたいと願った、夢にみた彼は目の前で何度も死んでいる。
それでも今度こそは……絶対に明日を共に歩みたい……!
彼女は光の中へと飛び込んだ。
記憶が流れ込み、流れ出す。それは時を超える現象。なぜ起きるのかは誰のもわからない。誰かの陰謀なのかもしれない。
捻じれた時代を夢を叶えるために私はただ、あなたへと会いに行く。
永遠の悪夢を終わらせるために……