【恋愛:異世界】あっきコタロウさん作「そしてふたりでワルツを第十四話 ☆リインカーネーション(1)」より
あっきコタロウさん作
「そしてふたりでワルツを第十四話 ☆リインカーネーション(1)」 https://ncode.syosetu.com/n9614dm/15/
開いたファイルのページから、黒い文字がカミィの目にとびこんでくる。
「なにこれ……?」
ファイルに顔を近づけると大小の文字たちが、わたしがわたしがと競うようにおしゃべりを始めた。
――そう、見て!! ……捜査資料……
――この場所で、あったことなんだ!! ……オフィーリア城……
――これは現実だよ!! ……日付、同一犯の手口……
カミィの頭の中で濁流のようにわんわんと声がひしめく。
「れん、ぞく……さつじん……?」
「何をしてる」
叱りつけるような声に、頭の中がぴたりと静かになった。
びっくりして顔を上げると、扉の前で王様が仁王立ちしている。
王様は額にかかる月色の髪を手で振り払い、近づいてきた。
「だ、だまって部屋に入ってごめんなさい。トーマス様とおはなしがしたくて来たのっ。そしたら鍵があいてて、それで……」
「それで、勝手に覗き見を?」
部屋のあかりもつけぬまま、王様はカミィの後ろに着いた。
背中から手を伸ばし、まるで汚い物にさわるみたいにファイルをつまみ、パタリと閉じる。
「あっ、あのねトーマス様、前の王様が殺されたってほんとぉなの? 病気でいなくなっちゃったって聞いてたのに、ここに全然違うことが、書いて、あっ……て……」
振り返って見た王様の顔は窓から差す月明かりの影で真っ黒だ。
顔の半分を覆うマスクの縁だけが、鈍く銀に光って見える。
なんだか怖くて、声が震える。
「捜査資料を見たんだね。そう、殺されたんだ。でもそれを聞いたら国民はどう思う? 兄たちが不幸な病気や事故で次々と亡くなった後だ。残された王族は僕と父上の二人だけ。その父上が死んだのが病気のせいじゃなく殺人だなんて知ったら、国民は不安になるばかりだろう。嘘も方便だよ」
「でも、これには同じ手口だって、連続殺人だって! ほんとぉは王様のお兄さんたちもみんな殺され……」
王様のマシュマロみたいな甘い声色にホッとして、カミィは胸にしまった疑問をぶつけた。
途端に見上げた王様の目が三日月みたいに細くなる。
まるで黒猫。
流氷みたいに冷たい瞳がカミィを刺し抜く。
「なんだ、全部読んだのか。好奇心は猫を殺すと忠告したはずだがな。賢く立ちまわれ、とも」
「ほわぁ……ネコ?」
甘い声が氷柱に変わる。
「ちっ、余計な詮索しやがって。その頭に詰まってるのはスポンジケーキか? 甘ったるくて吐き気がする。バカなくらいが妃にするにはちょうど良いと思ったが……お前の使えなさは想像以上だ。生ゴミめ。」
氷柱は次々にカミィを射抜いた。
スポンジケーキ?
生ゴミ?
カミィには王様が一体何の話をしているのかもわからない。
「お前、何が目的だ。ちょろちょろ嗅ぎまわって。何を企んでる」
「そんな、なぁんにも。わたし、もっとトーマス様のことが知りたくって……」
「うるさい!」
王様の靴がカミィの腹を蹴り上げた。
よろけたカミィが腰を打ち、デスクの上のファイルが跳ね落ちる。
「……っ」
「いいか。お前は黙って俺様のいうことを聞いていればそれでいい。干渉は無用。二度と余計な詮索をしようとするな。そうすれば命くらいは保証してやる」
落ちた衝撃でファイルの留め具が外れ、ページが白い鳥のようにバサバサ舞った。
そしてすぐに静かになる。
籠の中の鳥がどこにもいけないことを知っているように。
この命の根っこは主人に握られているのだとわかっているように。
月明かりに照らされたページでは、殺人事件の黒い文字が沈黙している。
「でも……トーマス、様……?」
痛む腹を押さえながらカミィは王様を見上げた。
「命が惜しくはないのか。それともお前の鳥より小さな脳みそでは今の状況すら理解ができない? はは……ほんっとカスだな」
王様はカミィに顔を近づけ……それでも決して触れない距離を保ち、囁きかける。
「そんなに知りたいなら教えてやろう。殺人は全て俺様の計画だ。邪魔者は全員殺す。ふふっ父上の死骸を見たときなんか本当に愉快だった。これでもう俺様の邪魔をする奴はいない……くくっ……ふははははは」
くすんだ笑い声が高らかなファンファーレに変わる。
王様のつけたマスクには涙のもよう。
まるでピエロみたい。
王様の心は、どこにあるの?
「うそ…………でもぉっ」
気づいたらカミィの口から声が溢れていた。
王様の笑い声が軋む。
ぐにゃりと笑顔が歪み、引き攣れる。
「干渉するなと言ったはずだ! 言葉が通じないのか、クソが!」
王様は踏みつけるようにカミィの腕を蹴飛ばす。
「ひゃ!」
「それともバカはフリなのか? まあいい。どんなに探しても証拠など出ない。残念だがお前のようなバカの言葉を間に受けるものなど、どこにもいないぞ。お前の価値はせいぜい王妃という形にすぎないのだからな。いつでも交換可能な……。少しでも賢さがあるのなら黙れ。そして俺様に従え」
「でも、トーマス様、ほんとは……」
泣いているのでしょう?
スゥッと王様の瞳の奥が凍りつき、カミィの腕を踏みにじっていた足の力が抜ける。
「時間の無駄か。目障りだ。…………誰か! 誰かいないか!」
「はっ。およびですか王様」
王様が声を張り上げると、扉の向こうで控えていたらしい家臣が飛び込んでくる。
「王妃を部屋へ。外から鍵をかけ、見張りを立てろ。何があっても王の命なしには外へ出さぬように」
「まって! トーマス様、もう少しおはなしを……」
「さっさと連れて行け!」
「はっ。さぁ、お妃様、こちらへ」
家臣に強く腕を引かれ、カミィは部屋から引きずり出された。
扉が閉まり、鍵が重い音を立てる。
「やめて! 離してよぉ……トーマス様ぁ!」
扉はカミィの叫び声にもピクリとも動かなかった。
・・・・・ここまで
☆やってみてどうだったか学んだことレポート☆
各キャラクターの個性を地の文でも色濃く表現されている、個性的な表現の作品。
作者さんらしさ、キャラクターらしさ。
原文は一度読めば忘れられない印象的な文体ではないでしょうか。
ご指定いただいた「カミィパート」は一人称により近い、私をキャラクター名に置き換えればちょうどいい程度の三人称一元視点。
この一人称が脳内五歳児、体は十代の女の子。
非常に苦戦しました!!
昔低学年を主人公にした一人称小説を書いたのですが、これがもうメチャクチャに難しかった。
その時、十数名のグループで互いに批評をし合っていたのですが、「語りが低学年らしくない」という指摘を非常に多く頂いたことを思い出しました。
一人称ということは地の文にその子の頭の中身が書いてある。
ものの見方が書いてある。
なので年少一人称の地の文に「かそけき」、とか「おののく」などという単語があるのはおかしいという感じです。
極端な例ですけどね。
この辺りの語彙や、目に入る情報の理解度を表現するスキルが私には足りない。
人称の不自由さはずっと弱点としては自覚していて、これまで自作ではほとんど「三人称神視点」か僕私の「一人称」と極端です。
自作なら得意な型しかチャレンジしないことで誤魔化せるのですねw
しかしこうしてリメイクとなると、いろんな形の三人称にチャレンジさせていただくことになる。
今回は不得意な年少の子。
超試練。ありがたい機会でした。
まず今回は一旦自分の掴んだままにキャラクターの視線、感覚を私の手グセの語彙で書きました。
それからどうアレンジするかを考える。
原文は非常にポエミーで短文。
これに近づけたらせっかく題材を貸していただいたのに、リメイクの意味がない。
年少の子を主人公にした三人称一元視点の小説を探して色々と読んでみました。
そして出た結論が
キャラクターのらしさを地の文で表現するのは展開そのものを説明できないため、本当に難しい。
やりとりのみで表現しきれる自信がなかったので、キャラクターのらしさはセリフで表現し、地の文は三人称一元視点ではあるけど、少し引いたやや客観的なカメラで書こうということ。
これがまたブレるブレるw
とにかく人称の扱いに非常に苦労しました。
未だ視点カメラが引いたり押したりしているところを散見しますが、ひとまずこれで上がりとしました。
観月さんの小説の時にも人称で苦戦しましたが、三人称の視点を自由に表現できるとわかりやすさが格段にアップすると思うんですよね……。
あと何作かリメイクさせていただくので練習させていただこう。
自作ではとてもまだチャレンジできないw
地の文で表現できなかったぶん、カミィの五歳児らしさは地の文ではなく思考回路、セリフ表現に込めることにしました。
また、トーマスの心理をつかむのにも苦戦しました。
彼はやりたい放題でいて自分を自分ごと騙す嘘つきなキャラクターだと思っています。
計算高いように見えて非常に感情の揺れが激しい。
激流を抱えています。
なので一体どうしたいのか、何がしたいのか行動が結構揺れるのです。
それを五歳児カミィは天性で見抜き突いてくる。
退けたくてたまらない。
と同時に無意識下では侵入されることを望んでいるような。
真逆のメッセージを感じるように描きたかったのです。
なのでカミィの地の文が五歳児では困難というのもあったりして。
多分言動行動は残虐ですが、トーマスはどM……(私見ですw)
いや、Mじゃないな。
やっぱり感情の振り幅でイラッとして全てを台無しにしているだけのような気もする!
こんな風にずっとトーマスのことを考えてましたw
未だ揺れてます。
あっきコタロウさんだいぶ勝手な解釈を織り交ぜての改稿となり、失礼じゃなかったかな〜と思いましたが、思い切り胸を借りて表現させていただきました。
おおらかに受け止めてくださりありがとうございました!




