表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#にけリメイク  作者: 遠宮 にけ ❤️ nilce
2 にけ を リメイク
10/10

九藤朋さんのリメイク 【ヒューマンドラマ】 にけ作「星に願う 1 夕闇」より 

#みんなの文体をわたしの文体でリメイク 5

「九藤 朋」さんに「星に願う」第1話(https://ncode.syosetu.com/n1318ec/1/)をリメイクしていただきました。


 長編を書く時……つまりストーリー物を書く時私は「分かりやすさ」を最優先に考えます。


 放っておくとこんな感じであんな感じでと一文にいくらも言葉を詰め込み、一瞬の間に起こることのリズムを見事に失ってしまうからです。

 物事の優先順位を決めてわかるように書くというのがものすごくハードルが高くて、ストーリー物だとそれで目一杯になってしまうのです。


 前提になる情報を詰め込まなくてはならない冒頭は最難関。

 説明で目一杯で、描写のちからをうまく使えません。

 なかでも特に関係性の複雑な「星に願う」をお願いしてみました。




「九藤 朋」さん の印象は文章の人。

 文章そのものが個性的でオリジナリティがあります。

 美意識が高く、自分の好き、を明確に知っている人です。

 それだけにこの方だったらどういう言い回しで描くだろう、とよく思い浮かべます。


 では早速。


 出来上がりはこちら


 九藤朋さん(https://mypage.syosetu.com/476884/)リメイク


 にけ作「星に願う 1 夕闇」より

 https://ncode.syosetu.com/n1318ec/1/



 以下本文は九藤朋さんです

 蝉の声が響いていた。


 娘の七緒の幼稚園が夏休みに入る前、妹と園で会った。

 七緒を年長組の靴箱まで送り届けて帰ろうとした時、快活な声がした。


「久し振り!」


 妹の朝子が私の姿を見かけ、軽く手を上げ笑いかけてきた。甥の詩音が母である朝子の手を振り解き、勢いよく駆けてくる。この年頃の子供は何かにつけて猪突だ。


「おばちゃん、七緒は? もう行った?」


 尋ねたかと思えば、あっと叫んで走り去る。

 靴箱の前でお尻をぺたりとつけている七緒を見つけたのだ。


「もう、あのバカ」


 後から追いついた朝子は腰に手を当て、やれやれと言わんばかりだ。

 そんな妹に思わず微苦笑し、幼子二人に目を細める朝子を眩しく見る。


「七ちゃん、すっかり馴染んだな。物知りだから、クラスでマジ尊敬されてるって詩音が言ってたわ。あのバカ、俺のいとこだぞーって、自慢してるみたいだけど。家ではどう?」


 朝子の声は彩り豊かだ。

 そして最後の差し出すような問いに、妹の気遣いを感じる。


 七緒の転園はこれで二度目だった。

 今度こそ、上手くやり過ごして欲しい。

 これまでの経緯も私の不安も、朝子は知っている。


「うん。ブランクがあったとは思えないくらい、スムーズな一学期だったよ。詩音のおかげだね」


 上履きのかかとを踏みつけた詩音が七緒の隣にしゃがみ込み、お喋りしているのを眺めながら答える。

 七緒は詩音の話に聞き入り、上靴を持つ手を止めている。

 手を動かす、と聞く、の並立ができない。不器用なのだ。


「あんなバカでも、役に立てることがあって嬉しいわ」


 朝子の顔に笑みが咲く。

 文字通り朝顔のようで瑞々しく、爽やかだ。

 大らかで温かく、私とはまるで違う。


 七緒の母が私ではなく、朝子だったらなどと考える。

 七緒にとってはそのほうが幸せだったのではないだろうか。

 そんな思いつきは鋭利な閃きに似て、私は自身を切りつけた心地になる。

 こうした自虐が七緒にとっても良いものではないとわかっているのに。


 思わず首を振る。

 蝉の声が、一際大きく聴こえる。


「ううん、本当に。今の七緒があるのは、朝子と詩音のおかげだもの」


 私が笑うと、なぜか朝子は逆に困った顔になる。

 途端、それを見た私の胸に焦燥が湧く。急激にざわざわと。

 焦りのままに続ける。


「あの七夕会から一年が過ぎたんだし。気持ちも切り替わったよ。本当に」


 余計なことを言った、と冷や汗をかく。

 私は臆病で、子供の頃から人の顔色を窺い過ぎるのだ。


「そっか。良かった」


 朝子は私の言葉を鵜呑みにしない。

 けれど鷹揚に笑ってみせる。

 私の為に。


「姉ちゃん、夏休み暇でしょ? 一緒に遊びに行こうよ。莉音も詩音も喜ぶしさ」


 莉音は詩音の姉で、今年から小学生だ。

 年が近いせいか、七緒と三人合わせてとても仲が良いようだ。


「そうだね、近い内、連絡する」


 そう返すと、手を振って朝子と別れた。

 連絡などしない癖に。

 私は人が怖いから。実の妹であっても。

 自分からの働きかけができない。

 それを承知している朝子が、彼女から誘いの電話をかけてきてくれるであろうことに、甘えている。


 門を出た私の心は暗雲が満ちたように重かった。


 また、上手くやれなかった。

 もう一年も経つのに、七夕会の話なんか、どうして蒸し返してしまったんだろう。

 また、朝子に気を遣わせてしまった。

 人に負担をかけた。

 また。


 心が、夕闇色に沈む。



☆九藤朋さんよりリメイクした感想をいただいております☆


 ほぼリメイクの必要がないくらい、シンプルで整った文章でした。

 ちょこちょこ手を入れたくらいで、それも微々たるもの。

 読みやすさって大事だなあと改めて思いました。

☆リメイクを受けて、にけの感想☆



 最初の一文からカメラワーク、映画的なイメージをしっかりと持って描かれていることが分かります。


 蝉の声。


 それだけでただ「夏休みに入る前日」と書かれるよりもずっと確かに夏の日差し、むあっとした空気を感じることができます。


 特に第1話の一文目はとっても大事〜!


 蝉の声はもう一度使われています。

 内向的な主人公が自分の思考にはまり込んだ後の現実へ引き戻す音がそれです。

 冒頭と合わせて非常に上手い演出。これもまた映像的だと思います。


 映像的にうかべてから言葉に直すといいよ〜というのは他の何名かの方にも(カメラワークを意識、映画、漫画をイメージしてみる)アドバイスいただいたことがあるのですが、こうして自分の文章が表現し直されるとよりはっきりとその効果が分かります。


 良い描写、比喩表現は分かりやすさをより一層助けるものです。


 ありがとうございました!


 *****


 ☆ランキングタグのところに、ほかの方にもしていただいたリメイクをまとめたブログ記事があります。

 ご興味ありましたら合わせてどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ