表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

人型最終決戦兵器

 「むむむむむむっ。」


 正太を製作してから数日後、我が家では、リアがSF物のアニメを鑑賞中だ。

 画面から近いから離れなさいって。目が悪くなるだろ。いや、ロボットだからそんなのは関係ないのか?

 とにかく、手に汗握る程見入っている様だ。


 宇宙を舞台として、マイクロブラックホール生成装置的なものから莫大なエネルギーを取り出し、ワープをしたり宇宙怪獣と戦ったりするアニメだ。俺もSFものは結構好きだからこのアニメもよく知っている。どうやら再放送している様だ。

 こうしたアニメはスケール感がモノを言う。巨大戦艦の主砲やミサイルで数百、数千単位で敵勢力を殲滅したり、大型ロボットの質量に任せたパンチやキックで敵を殲滅する。


 「マスター! 私にも何か武器を搭載して下さい!」


 「何を戦うんだ、何と!」


 思わず突っ込みを入れる。何かに目覚めてしまった様だ。


 「それは勿論、宇宙怪獣や、未知の宇宙生命体です! もしかすると、私は、人類の最終決戦兵器として作られたのかもしれませんし!」


 いや、作ったの俺だし・・・。そんな大層な目的じゃないし・・・。


 「なら、まずは、それを探すことから始めないとな。」


 「むむむむむむーー。そうですね! 先ずは敵勢力を把握する事から始めなければ・・・。」


 アニメに見入っている人間に対し、冷静な突っ込みを入れるのは、大人げない対応とも言えるのだが、そもそもリアの場合は人間ではないし、そんな非科学的な事に熱中するとは、これ如何に、だ。確かに、いつか実現しそうな夢では有るのだが。


 リアの動力源は、水を燃料とした小型エンジンである。それこそ、コブシ大程度の大きさで、丁度心臓の位置に内蔵されている。正確にはエンジンの動力を元にモーターで発電を行っている。更に、最近になってからは、光による発電も行っている。これは、顔に3Dプリンタで印刷した極薄の太陽光発電フィルムを張り付けて、そこから発電を行っている。

 水と光で動作しているので、なんだか植物の様だ。当然、アニメのロボットの様な大出力は得られない。というか、戦闘を想定していないので、そんな大出力は必要ない。


 但し、せんとうといっても、銭湯というか、入浴などは想定しているので、防水対策は万全にした。試したことは無いが、一般的な入浴、海水浴、プールを楽しむ分には全く問題ないはずだ。

 そもそも、ロボットがそんな事をする必要があるのか? と言われれば、全く無いのだが、俺が楽しむ為には必要だ。

 もっとも、最初に防水を意識したのは、リアの製作当初、俺自身によって、リアを液体まみれにしてしまった事が切っ掛けだったのだが・・・。

 とは言え、最近はめっきりご無沙汰だ。最近というか、リアとして起動させて以来、そういったプレイには及んでいない。スキル、ぼっちの効果であるビビリーが発動しっぱなしなのだ。自分の不甲斐無さによるものなのだが、俺のリビドーは暴発寸前である。

 ではあるのだが、最初の一歩がどうしても踏み出せないのだ。なんて言えばいいのだろうか? そのまま迫れば、リアは受け入れてくれるのだろうか・・・? 拒否されたらどうしよう。

 などと、人以前に、ロボットに対しても尻込みしている有様なので、当分禁欲生活は続くのだろう。


 さて、俺がそんな事をグルグルと思考している間にも、リアは何やブツブツとSF的な何かの製作を企んでいるようだった。


 「EMドライブによる推進力を確保したとしても、動作させる為にはエネルギーの確保が必要で・・・。」


 「えっと、リアさん? 何の話ですか?」


 「はい、マスター。私の仮説によると、宇宙空間を突き進んだ際に起こる問題としては、恒久的なエネルギーの確保があり、その対策として・・・。」


 「はい、ストップ! オーケー、分かった。意味不明な事が分かった。つまりは?」


 「はぁ、マスター。ググってウィキって下さい。」


 そう言って、パソコンを指さすリア。丸投げである。

 あんた人工知能だろ。その位説明してくれたっていいじゃないか!


 「とにかくです。私たちが宇宙に進出する為には、現在の理論の延長線上だけでは、実現しないと言うか、まだまだ時間が掛かると言う事で、つまり、現状では難しいという事なのです・・・。索敵とかも。」


 若干しょんぼりとした表情で、そうつぶやくリア。というか、そんなに索敵したかったのか。

 しかしながら、興味というか趣味というか、そういったものを持つ事が出来たというこの事実は、重要なのではないだろうか? 料理にしても、あれは趣味というより特技に近い物があるし。


 「でも、リアならそういったSF的なモノも作れるんじゃないか?」


 「そんな簡単に実現出来ないのでSFなのだと思うのですが、試しに体験してみますか?」


 そういって、HMDを差し出してきたリア。ロボット製作では大活躍のヘッドマウントディスプレイであるのだが、これで何が体験できるというのか? まぁ、物は試しだ。


 「これを被って横になって下さい。」

 「では、スタートです。」


 目の前には、大草原が広がってるようだ。満点の星空がとても綺麗だ。

 そこに、白いラバースーツの様なコスチュームを身にまとったリアが現れた。体のラインが強調されており、中々にグッとくるものがある。


 「何でそんな恰好をしてるんだ?」


 「何を言っているんですか、マスター。宇宙ではこの様な服装と決まっているのですよ? マスターも色違いでお揃いなんですよ?逃げちゃダメですよ?」


 そうですか、決まってるんですか。

 中々に拘りがあるようだが、意味不明だ。色々なアニメがごっちゃになっている様だ。

 因みに自閉症は先天性の病である。


 「さて、マスター。これからSFで表現されている事象を、ここで再現致しますので、SFの世界観を現実で行ったらこうなる! 的なものを体験して下さい。」

 「まず、ここが私たちが住む地球として、上空をご覧ください。」


 空を見上げると、ひと際輝いている星が見える。


 「プロキシマbといって、発見された中では最も地球に似ている、と言われている惑星です。あの星までの距離は約4.2光年、つまり40兆kmです。光の速さで進んだとしても、4年以上もかかる距離です。宇宙空間における有人飛行のギネス記録は、アポロ10号の最高速度である時速39,897km、おおよそ時速4万kmとなります。このスピードで航行したとしても、単純計算で11,416年もかかる距離なのです。」

 「つまり、マスターが生きてあの星へ到達する為には、宇宙航行に関する技術革新(ブレイクスルー)等が起きて、光速並みの速度で航行を行うか、所謂ワープを行う必要があるのです!」(びしっ


 指先ポーズで力説するリア。


 「という訳で、光速並みの亜光速航法から試してみましょう。」

 「ベロを出した写真が有名なおじいさんが、100年以上前に発表した、現在でも有効な理論によると、質量を持った物質は、決して光の速度を超える事は出来ない、との事ですから、それを考慮して再現しますね。」

 「因みに、普段は真面目で大人しい性格だった様ですよ? おじいさん。」


 一瞬視界が暗転した後、今度は、視界の先に宇宙船のコックピットの様な場所が映っている。


 「さくっと行って見ましょう。3秒前、2、1・・・。」


 一瞬画面が暗転する。どうやら、また大草原に戻って来た様だ。


 「さて、体験して頂いたように、亜光速に移行する過程で発生する、加速に伴うG、及び、宇宙に存在する塵その他の物質との核融合により、マスターは宇宙船ごと分解されていしまいました。」

 「本来であれば、第一宇宙速度、第二宇宙速度といった感じに、段階的に速度を上げるのですが、折角なので一気にトップスピードにしてみました。」(にこっ


 いきなり!? 死んじゃったの俺!?


 「よく推進装置とか、主となる動力源については、アニメでも解説されたりするのですが、例え加速する事が出来たとして、暗黙の了解というか、突っ込んではいけない矛盾点を説明しますと・・・。」


 「矛盾点1、重力加速度」

 「車で急発進、急停止を行ったりすると、それに伴うGが発生します。それが大体0.5G程度となります。亜光速を、仮に光の速さの約99%と仮定すると、おおよそ時速10億7千万キロにも達します。勿論、急加速、急発進は行わない前提だとしても、年単位の加速と減速が必要になるでしょう。そうしないと中の人が耐えられません。」

 「参考までに、戦闘機が急ターンを行うと、約8G程度の負荷がかかりますが、これは、訓練を行っていない人間が体験すると、ほぼ全員が失神するレベルです。この点を踏まえ、亜光速まで1Gのまま加速すると1年かかかりますので、半年に短縮したとして、2G辺りが現実的な範囲でしょうか?」


 「矛盾点2、亜光速の世界」

 「時速9億7千200万キロという亜光速の世界では、宇宙に存在する塵や、分子、原子レベルで存在する物質であったとしても、その衝突エネルギーは莫大なものとなり、宇宙船の先端では、衝突した瞬間に、宇宙船とそれらの物質とで核融合が発生します。」

 「宇宙は真空と呼ばれていますが、完全ではありません。4.2光年もの距離を航行する過程においては、それらの物質が衝突する確率は、非常に高いと言えるでしょう。つまり、亜光速で航行する為には、宇宙船の推進面、または全体を、シールドというかバリア的な夢技術で覆う必要があるのですが、この分野の研究はあまり進んでいません。しいて挙げるなら、極めて限定的な環境下、具体的には核融合炉で使用を想定している耐プラズマシールド位でしょうか。」


 「矛盾点3、時間の流れ」

 「これは一部で再現しているアニメもありますが、ウラシマ効果と呼ばれるものがあります。相対的に見て、光の速度に近づけば近づく程、それを観測する人から見ると、時間がゆっくりと進んでいる様に見えるという現象です。簡単に例えると、亜光速で1時間航行し、元の地点に戻ってきたとすると、元の地点では7時間程経過する事になるのです。」

 「ですから、光年単位の距離を恒星間航行する場合、その距離が長ければ長い程、元居た場所との時間の流れにズレが生じてくる訳で、年単位の航行の場合、出発前には、搭乗者以外とは、今生の別れを行う必要もあるのです。」


 「以上の事を踏まえると、亜光速航法を実現させる為には、解決すべき課題が多くある、という事がお分り頂けたかと思います。」


 いや、相変わらずチンプンカンプンですよ。リア先生。


 「ですが! そんな山積みの問題を一挙に解決出来るかもしれない! それがワープ航法です。」(びしぃ


 またも興奮気味に指さしポーズで語るリア。いよいよ熱が入ってきた様だ。


 「ワープ航法とは、空間を歪曲させたり、ワームホールを開けたりと色々方法は有るのですが、総じて瞬間的に移動を行う事が可能となっております。」


 「では、これも早速試してみましょう。」


 フッと画面が暗転し、目の前には再び宇宙船のコックピットが映し出された。


 「ワープ5秒前、4、3、2、1」


 今度は、目の前がブラックアウトしたままだ。何が起こった? まぁ、あまり宜しく無い結果なんだろうけど。


 「現在、私たちは、プロキシマbに辿り付きました。但し、地中深くに埋まっている様です。」

 「ワープ航法では、目的地の座標計算が非常に重要になってきます。精度を上げて座標地点の演算を行ったのですが、残念なことに、どうしても、誤差が数百キロ程度発生してしまう様です。」

 「惑星というものは自転及び公転を行っており、出発点である地球(仮)も自転・公転を行っています。更に宇宙空間というのは膨張を続けているので、ワープする瞬間の相対的な座標を計算し、転移する必要があるのです。」


 そう言うと、リアがHMDを外して来た。見慣れた天井だ。


 「しかしながら、ワープ航法であれば、加速・減速に伴う衝撃や、ウラシマ効果等の問題も、一挙に解決可能ですので、どちらかと言えば、恒星間航行においては、亜光速航法よりもワープ航法の方が様々な問題を解決しやすいのでは? と思っています。」


 「と、ここまで長々と説明しましたが、結局、実現するのは、まだまだずっと先。という事です。」


 色々と説明してくれたのだが、俺の記憶にはリアの宇宙服姿しか残っていない。すまんリア。


 「でも、リアがさっきやったHMDでのバーチャル空間の投影は凄くリアルだったよ。もっと視覚的だけじゃなく、色々体感出来れば更にリアルなんだけどな。」


 取り敢えず、体験に対するフォローは入れておく事にした。


 「有難うございます。マスター。今後さらに改良を加え、マスターにご満足頂けるものを作成してみせます! あと、索敵も!」


 まだ諦めてなかったんだ。


 結局、リアには、護身用にと、指先から任意で100万ボルトの高電圧を発生させる、スタンガン的な機能を実装した。リアはロボットであるのだが、力は一般の成人男性並みしかない。万が一、暴漢に襲われた際にも、護身術は必要である。これだけの美少女だ、変な輩の目に付かないハズが無いのだ。

 さらに言えば、俺以外の男がそんな邪な気持ちで近づくのは、断じて許されない事だ。


 そうそう、今度リア用の服としてプラグ・・・じゃなかった。あの白い宇宙服(ラバースーツ)を作って貰おう。

 えっ? 俺の方がよっぽど邪な考えの持ち主じゃないかって? 俺はいいの! マスター特権なの!


 かくして、リアのハード面が少しだけ強化されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ