第7話-最初で最期のお節介開始のお知らせ
「俺の過去も教えたんだし、菖蒲の過去も教えろよ」
俺の家と菖蒲の家との間は、役1Kmほど離れている。菖蒲はどうやら自転車に乗れないらしく、徒歩で通学している為、菖蒲を送って帰っている間、会話がもたなくなる。
「え?え?もしかしてアイビくん、私の過去が気になるの?」
こいつは何なんだ...
煽ってきてるのか?
こんな事を笑顔で言える辺り、俺には理解出来ない。
「別に答えたくないならいいよ。俺もこれ以上、深入りはしねえから」
「嘘嘘!ごめんなさい!ちゃんと話すから!」
やっぱりコイツはちょろい。ちょっと冷たくしただけなのに凄く動揺する。
だから嫌がらせをしたくなる。
「別にいいよ。興味ねえし」
「そんな事いわないでよぉ...」
まん丸で綺麗な目をウルウルさせ、泣きそうな顔で俺の顔を見てきた。可愛い。可愛すぎる。いっそ持って帰りたい。...ん?俺いつからこんなになったんだ?
出会って2日の人を俺が好きになる訳がない。筈だ...
「おいおい!聞いてやるから泣くなよ!」
「ほんとぉ?」
やっぱり可愛い。なんだよ。めんどくせぇなあ...俺がお前に惚れちまったらどうするんだよ。
「お、おう!だから直ぐ話せ!」
何必死になってんだよ。俺。
「えっとね、私、小学4年生の時に両親が離婚して、それ以来、ずっとパパと二人暮らしなの。そんな事があって学校には行かなくなっちゃったの。でね、中学生になって、学校行ってみようかなって思って頑張って登校してみたんだけどね、オドオドしてたら、いじめられちゃって、お家に引きこもってたの」
「そうか...」
俺はそんな事しか言えなかった。なんて言っていいか分からなかった。俺とこいつは意外にも似ているのかもしれないな。
「でもね、私は学校が好きだった。誰も味方してくれなくても、ずっと大好きだったよ」
「なん..で.だ.よ...」
「私はずっと寂しかった。ママが出て行って直ぐパパは再婚した。誰も私を見てくれなくなったんだ。どんな酷いことされても、誰かの眼の中に写っている事が嬉しかったんだ...。まあ、パパが『学校に行くな』って言ったから不登校になったんだけどね」
こいつがちょろかった理由が分かった。菖蒲はずっと寂しかったんだ。純粋で真面目で誠実で馬鹿だ。こんな子が一人で居たら、絶対悪い大人に騙される。だから俺はこいつの側にいる。こいつを守る。そう、自分自信に誓った。
「お前に、学校で俺に話しかけていいという許可をする。毎日一緒に帰ってやる。だからもう、そんな顔するな。俺の目に悪い」
「うん!」
菖蒲は元気よく、笑顔でそう答えた。また、こいつの事を天使と思ってしまった。でも、それでいいんだ。良いはずなんだ...
そんな事を自信なさげに考えた。こいつの幸せは俺には理解出来ない。こいつの不幸も俺には理解できない。だから、俺はこいつの事を理解するまで好きって気持ちは抑える。こいつの事を理解するまで、何度でも世話をやいてやる。柄じゃねぇが誰かにお節介するのもこれで最後だろう。なら、最後までこいつの面倒を見てやる。
俺の大好きな人を。
俺の大っ嫌いな人を。