第2話-いじめ撲滅運動開始のお知らせ
高校生活が始まって約2ヶ月が経った。青春が終わって約一ヶ月が経った。
でも、藍微はそんなに学校が嫌いではなかった。
一人だが親友はいるし、勉強にも付いていけている。顔はあまり冴えないが、圧倒的なブサイクという訳でもない。
あの事件があってから、約一ヶ月経過し、最近は、女子の嫌な所を沢山見つけてしまうようになってきた。
陰険ないじめ。
陰口の言い合い。
見え見えのぶりっ子。
そんな中を渡り歩けるメンタルを持ってる奴は、凄く強い子なんだな〜。などと思う。
ただ、それが奴らの普通であり、その中を生きづらいと感じる人は、ほとんどいない。
藍微は、その感覚に麻痺してしまったら、終わりだと思っている。
そして今、藍微のいるクラスでも、女子間での、いじめという大きな問題があった。
6時限目が終わり、終学活の準備を終え、担任が教室に来るのを待ってる時間の事だった。
「菖蒲ちゃーん。あんた、最近ちょっと調子のりすぎじゃね?」
一見、真面目そうに見える黒髪ロングの女の子が、普段はあまり目立たず、顔を綺麗な茶髪で覆い隠している子の髪の毛を掴み、理不尽な暴言を投げかけていた。
髪を掴んでいる方の名前は柏木 皐月。学級委員長だ。
髪を掴まれている子は、保芦 菖蒲。何処にでもいる陰キャというやつだ。
あ、人の事いえねーわ...
「ごめんなさい...もうしません...」
理不尽ないじめに対する、理不尽で意味不明で無意味な謝罪が、菖蒲の口から出た。この子なりの保身だろうが、この状況的では、逆効果だ。
涙が一粒、菖蒲の頬を伝う。
この子は今泣いている。なのに、誰も止めない。
「何に対して謝ってるかちゃんと言えよ!」
「うわー。こいつ泣いてる」
「キッモ」
こんな風に、一人の人間に対して大人数で攻撃する事、それを誰も止めない事に対して、俺は疑問と怒りを同時に覚えた。
「てめーら、ダセェ真似してんじゃねえよ」
あーあ。またやってしまった。という思考が頭をよぎる反面、言いたい事を、言わないといけない事を言ってやった感があってスッキリした。
「あんたになんか関係あるの? 部外者は黙ってて」
「黙らねぇよ。お前ら全員が菖蒲に謝るまで俺は言い続けてやるよ!」
もう、ここまで言ってしまったんだ。後戻りはできない。
最後まで責任を持って片を付けよう。っと覚悟を決めた瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。
「お前ら〜、終学活始めるぞ〜」
そう言いながら担任が教室に入ってきた。
多分、担任は俺たちの会話を全て聞いていた。なのに、そこには一切触れず終学活をすぐ終わらせ、全員に、早く帰宅するように。とだけ伝えて、すぐに職員室へ戻っていった。
「無責任な教師だな」
誰かが、ボソッと呟いた。
そしていじめていた集団はすぐに帰り、空っぽの教室には、俺と菖蒲の二人だけが残っていた。
「三瀬疾くんは、なんであんな事言ったの?」
「なんとなくかな。あと、苗字で呼ぶのやめてくんね?」
俺は、昔から自分の苗字が嫌いだ。父親が嫌いだったからだ。
因みに藍微という名は母が付けてくれた。
「…答えになってないよ。....アイビ..くん...」
少し間を空け、照れながら菖蒲は俺の名前を呼んだ。『急にキャラ変わり過ぎだろ!』と突っ込みたくなったがその気持ちは抑えた。
俺自身が呼ばしといてなんだが、凄くはずかしくなったからだ。
「俺は、女といじめが嫌いだからあの時は止めた」
「アイビくんは優しいね」
菖蒲は無表情でそう言い放った。いや、無表情ではないのかも知れないが、俺には分からなかった。その表情の裏に、どんな気持ちが込められていたか。
「なんでだよ。俺は女が嫌いだって言ってるんだぜ」
言ってる事が理解できてないのかと心配になった。
「でも、アイビくんは私を救ってくれた。女子の事を好きって言うくせに助けてくれない人より、女子の事を嫌いって言いながらも助けてくれるアイビの方がよっぽど優しいでしょ?」
その発言に対して俺は少しイラついた。
他の男子と比べらた結果優しいという結論にたどり着いたからだ。
「お前は何であんな事されてたんだ?」
感情を抑えようとして適当に話をそらした。
「アイビくんだって名前で呼ばしてるんだから、私の名前もちゃんと呼んでよ!」
「じゃあ、名前教えろよ」
「私を助けてくれた時、言ってたじゃんか!いじわる」
少し拗ねた顔が可愛いと少し思ってしまっ....てない!
断じて違う!
この俺が三次元の女の子を可愛いと思うはずがない!
そう自分に言い聞かせた。
「で、菖蒲はなんであんな事されてたんだ?」
俺は改めて、保芦 菖蒲に質問する。
「廊下を歩いてる時に、サツキちゃんと肩が当たっちゃって、サツキちゃんの飲んでたジュース、こぼしちゃったの」
「くだらね〜。だから女は嫌いなんだよ」
そんな事で絡んでいくのはガラの悪いヤンキーか性格の悪い女子しかいない。
「ま、菖蒲も、女子のうちの一人なんだし、まともに話をするのは今日だけだ。明日から話かけんなよ」
「じゃあ、今日の内はセーフって事で、アイビくんの家に遊びに行ってもいい?」
冗談でも心臓にわるい。
「ぜったいにダメだ!」
「えへへ」
菖蒲の笑った顔は、まるで天使のようだった。
また、不覚にも可愛いと思ってしまった自分を許せなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだ、描き始めたばかりで、文脈がおかしい所もあると思いますが、暖かい目で見てやってください!