第10話-気まずさMAXのお知らせ
どんよりとした気まずい空気が流れていく。
クラスの連中は、俺が柏木 皐月の事を嫌いで、柏木 皐月も俺の事嫌いって知っているのに、誰もフォローしてくれない。
せめて、誰かが皐月に話しかけてくれたら、空気は変わるのに。
もしかしてこいつも嫌われてんの?
あ、今授業中だ。
そりゃ、誰からも話しかけられない訳だ。
そんな事を考えていたら、何処からか、小さく、可愛らしい声が聞こえた。
「あ、あの.....これからよろしく......」
柔らかく優しく、でも何処か機械的な、無機質な声で俺に話しかけてきたのは、樫村 杏子という、今回の席替えで、俺の後ろの席に配置された女の子だった。
「?」
俺は疑問符を浮かべ自分自信に指を指した。
杏子は少し不機嫌そうに頬を膨らませコクリと頷いた。
「あ、うん。よろしく」
少し間を空けそう言うと、杏子は少しだけ頬を赤くしてニコリと笑った。あまり表情に変化のない子だったが確かに笑ったと思う。
女子は嫌いだが、俺に危害を加えてこない限り、無駄に傷つけたり、無駄に優しくしたりはしない。それが俺のモットーだ。
そして、昼休み。みんなが昼食を食べる時間。
俺は、古枝と駄弁っていた。
「新しい席はどうよ?」
俺は皮肉交じりに質問した。
「なんだ?愛微、妬いてんのか?」
「今の質問でどうしたらそう解釈できんだよ」
「なんだ。違うのか」
肩を落とし、続ける
「あ、そうだ!久しぶりにお前んち、行っていいか?」
「お、おう。別にいいけど、急にどうした?」
「いや〜。なんか、最近、彼女が冷たくてさ。相談乗ってくれよ」
何を言いだすかと思ったら、リア充自慢かよ。爆発しろ。
「そういう事なら断らせてもらうよ」
「なんでだよ〜」
「理由は3つある。まず一つ目は、俺のアドバイスなんぞあてにならんからだ。生まれてこの方彼女無しだぞ!」
「わ、わりぃ。で、2つ目は?」
悪いと思ってるなら聞くなよ...
「もし、俺のアドバイスで仲直りしたとしたら、友達のリア充化が浸透してしまうからだ」
「ひでー」
「で、3つ目は、俺のアドバイスでもっと仲が悪くなったら責任が取れないからだ」
「あれ?仲悪くしたいんじゃ無かったの?」
「お前はバカか?俺はあくまで勝手に爆発してもらいたいんだよ」
と、言いながら古枝の額を人差し指の爪でツンと突いた。
「そっか。分かった。じゃ、保芦さんに相談してみるよ...」
「よし!放課後直ぐに俺んちこい!」
もし、古枝が菖蒲に相談して、菖蒲の家に上がり込んだら俺は立ち直れなくなる。
俺より先に菖蒲の家に入るなんで絶対に許さない。
そんな事を考えていたら自然と口が動いていた。
「そうこなくっちゃ!」
古枝は満面の笑みで答えた。