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異世界現実ショート  作者: さかうあら
1/1

主人公1

 洗面台の前で身だしなみを最終確認し、よしっ! と、眠気を気合で吹き飛ばす。髪のセットは大切だ。みんなはやってるかな? やらないとイジメられるよ? いや、マジでね。

 

 「行ってきまーす」

 

 玄関からいつもの様に一歩を踏みだすと、その先は毎朝見る光景の筈だ。早々変わるものではない。そんなことわかってるって? いや、こう言っておかないと勘違いさせちゃうだろう? 高校生にもなれば、そうなるのかって。

 多感な時期なんだ。現実逃避したい時なんて腐るほどあるんだ? 俺だってそうさ。でもね。こうなるのは俺だけさ。


 「おぉ! ようこそ! 我らがモデルよ! 見よ!皆の者! 0,01%の壁を越えて我らは異世界人を呼んだようだ!」


 こんな事態には普通ならないだろう? 玄関を出たと思ったら豪華絢爛な異世界部屋だ。まぁ、突然テレポートした地球のどこかだって可能性もないことはないけど、既に異世界人とか言われてるしね。ほぼ間違いなく別世界だろうさ。でもって、そのセリフを吐いたのが如何にも中世のイケメン貴族だ。テンプレ、テンプレ。中世風ってだけで充分テンプレ範囲内かな。そしてイケメンのセリフで大勢の人間が歓声を上げる。うん、煩い。

そこそこ広い部屋に見渡す限り人がいるのだ。一斉に声上げるもんだから、そりゃ煩いし、険しい表情にもなる。でもって、それが困惑している様にでも捉えられたのかな?


 「いきなりのことで混乱しているでしょうが、どうか我らに協力してくれないでしょうか。異世界の友人よ」


 イケメンが申し訳なさそうに声をかけてくる。良い人っぽいね。イケメンで性格も良いとか流石異世界ってところ。あ、これは個人的な感想なので、お気になさらず。


 「いや、まぁ慣れてるんでいいですけど」

 「おぉそれは良かった! 異世界人の方は説明を納得していただけるまで大変苦労すると文献には載っていたもので」


 そうそう、体質なのかな、召喚みたいなことは、よくあるんだ。何事も慣れだね。例えば世界のことやら、俺にやって欲しいこととか、教えてもらう訳だけど、慣れると要点だけしか聞かなくなるんだよね。今回はファッションショーのモデル。チームごとに召喚した人を着飾り、採点。上位チームが多くの魔力と名誉を褒美に貰えるっていう、この国一の祭典だとかなんとか。ちなみに他のチームはこの世界の人間らしい。要するにファッションが全てにおいて優先で、優劣が決まるってだけ。価値観は色々、国もいろいろ、でもって異世界は様々だね。 


 「ってことは着替えるの?」

 「もちろんですとも!」

 

 それからはもう、地獄だね。着せ替え人形よろしくに、いろんな服を着せられる。しかも、あれだよあれ、メイドさんとかじゃないのね。細いのからゴツイの、フリフリドレスから露出過多まで、様々なイケメンに着せ替えられるわけ、地獄でしょ?

 

 「ねぇ、男の人しかいないの?」

 「2年ほど前には女性も1人くらいはいた気もしたんですけど、今はいませんね」

「子供いなくならない?」

「子供は木から採れるでしょう?」

 

 そういうことらしい。何とも不思議ではあるけれど、いちいち考えてたら異世界なんてやってけない。大事なことだ。そして一番大事なこと。これは外しちゃいけない。

 

 「モデル終わったら帰れる?」

 「えーっと……それが……」

 

 おっと……歯切れが悪いな……

それから話を聞くと理由は分かった。どうやら上位3チームに入賞した際にもらえる魔力がないと帰れないらしい。


 「全力は尽くしますが、入賞できなかった場合は生活の保障は我々がいたします。申し訳ない」


 男たちの内1人がそう答える。……まぁ、大丈夫でしょう。


 「勝てるでしょ。チートあるし」

 

 それからも、ひたすら着せ替え人形。1週間くらいかな、何不自由なく過ごした。何ら面白いことはなかったね。寝て起きてご飯食べて着替え、着替え、着替え、男たちは相当迷ってた。どの服で俺を参加させるか、をだ。

 

 「制服でいいんじゃない?」


 あんまりにも迷ってるから言ってみた。


 「ですが……我々が作ったものではないですし……」

 「作ったことにしとけば?」

 「まぁ……出来なくはないですが……」


 随分悩んでたけど、最終的には意見は通った。


 それでもって、フッションショー当日。とはいってステージに立ってじろじろ見られるだけなんだけどね。うーん、なかなかに恥ずかしい。


 「すばらしい!」

 「革新的だ!」

 「言葉にできない!」

 「これは真似できん!」


 はい、審査員のみなさんのお言葉でした。絶賛だね。












 「と、言う訳で無事帰って来てやっと玄関からの一歩を踏み出したわけだ」


 得意げに答えてみる。

 

 「うーん。微妙な夢だね」


 夢じゃないんだけどね。 答えるのは友人で同級生の鈴木美佐すずきみさいつも通り、ほんわかフワフワしてる。長い黒髪もサラサラで、いつ見ても美少女だよなー。憧れちゃうね。


 「そこは褒めてほしいとこだよね。俺、ファッションショーで1位だったんだよ?」

 「言葉使い!」

 「うい…」


 毎日のように言われるけど治んないんだよなー


 「男しかいない国で制服女子高生でしょ? そりゃ愛ちゃんが優勝だ」


 美佐が笑う。


 「でしょ? 女子高生はチートなんだよ」


 俺の名前は遠野愛とおのあい16歳の女子高生ってね。


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