ep5-お弁当の具をイカリングだと思って大事に取っておいたらオニオンリングだった時の悲壮感--
「ああ……最悪だ、穴があったら入りたい。ないなら掘ってしまいたい」
盛大にやらかしてしまった僕は、後悔と自粛と憤りの想いから自分の教室に帰りうなだれていた。
『上手くいったんだから良かったじゃないですか』
「なぜか上手くいったのか今でも分からないよ、昼休みにどんな顔して柏本さんに会えば良いんだ……」
結果から言うと上手くいった。
その場の流れに身を任せダッシュアンドターンでランチの誘いをしたところ、明らかに怯えすくんだ表情ながら笑顔を作り僕の誘いを受け入れてくれた。
「今思えば柏本さんの顔が引きつってたし、怖がらせてしまって冷静な判断ができなくてOKしただけかもしれないぞ」
『あれほどの事を見せつけたのです、人とは一味違うイケメンに見られたかもしれませんよ』
「人とは一味違うヤバい奴に見られたかもしれないだろ」
というかそう考える方が普通だよな。
それから相手にどう思われたか、なんて言われてしまうのか、柏本さんと同じ教室にいた人達はどう捉えるのか、そんな事が頭を堂々巡りしていった。
『隼人様、隼人様!』
気持ちが重い考えれば考えるほどに、想像が止まず消えない。
『隼人様!……聞こえてますか隼人さーん? はやえもん、それゆけ!はやパンマーン?』
何度目か分からないため息を吐いた。
吐けば気持ちが軽くなるわけではないが、吐かずにはいれなかった。
『……仕方ないですねこれは』
―――――――――ドンッ!!!!!!
爆発のような音が瞬間的に耳をつんざく、いきなりの事に意識の処理が追い付かない。
「ああああっ! なんだ!? えっ! これ!?」
訳がわからなくて周囲を見渡す、だがいくら視点を横に流しても目に映るのはキョトンとしたクラスメイト達だ。
『聞こえますか、オーバー?』
「えっ!?聞こえてるけどさっきのなに!?」
『先ほどから心ここにあらずだったので少々大音量で爆音を流しました』
えっとさっきから僕が咲の話を無視するような事をしてしまっていて、目を覚ますためにイヤホンから音を流したってことか。
なんだか急に冷静になってきた気がする、周囲からの奇異な目線を浴びてクールダウンしたのもあるけど。
『そろそろ約束の時間ですよ』
「えっもうそんな!? 数学の授業は?」
『もう終わりやがりましたよ……まったく私を無視して』
こりゃ本当に重症だったらしい。
あと咲がすごく不機嫌そうだ、家に帰って顔を合わせたら頭を下げて謝ろう。
「えっとごめんな、心ここにあらずだったみたいで」
『いいですよ隼人様のことなんて気にしてませんから……まったく』
明らかに不機嫌だよな、指摘したら余計に悪化しそうだけど。
『ではカバンにお弁当を入れておいたので、それを持って約束の屋上に。二人前は極上の食事を仕込んでおいたので問題ないはずです』
「ありがとう、恩に着る」
『あっ、それと後ひとつ』
なんだろう、やっぱり今回のことはいろいろ言いたいことがあるのだろうか。
僕が悪いのだからどんな言葉も受け止めなければいけないのだけど。
『周りの人の心や考えを把握するなんて出来ません、つまり考えるだけ無駄です。気にするだけ無駄な周りからの見られ方なんて気にする必要ないんですよ』
なんだろう、一瞬泣きそうになった。
本当に僕なんかとは人としての出来が違うんだな、今度本当心からに謝って心からお礼しよう。
「ありがとう行ってくる!」
僕は前だけを見て勢いよく教室をあとにした。