ep3 - 一時期のスパロボは声優の被りが酷い-
「では隼人様これを耳に」
翌日の朝いつもより少し早く起こされた僕は、着替え支度の最中に咲から小さな黒い物体を渡されていた。
「これは?」
「ワイヤレスイヤホンです、これで本日より隼人様の恋路をサポートいたします」
とりあえず渡されたコードのない小型なスピーカーを耳に刺し入れると、耳にかかっている髪に隠され鏡で見る限り外部から見えなくなった。
「隼人様の携帯のGPS位置情報に合わせて超遠距離から撮影するように設定した高性能小型空撮機で隼人様をモニタリング、それを見ながら音声などでサポートします」
なんか犯罪ギリギリだな、いや僕の為なんだけど。
「なんですかその犯罪ギリギリだな、とでも言いたげな顔は?」
目付き鋭く睨まれる、いや本当にそう思ったんだけど。あと当たり前のように心を読むなよ。
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」
「定期的に思うが咲って怖いよな」
「なに言ってるんですか? 私はとてもスマイリーですよ」
スマイリーだから怖いんだよ余計、さっきの発言だって清々しいほどに綺麗な笑顔で言いやがったし。
「ところでこっちから咲に話すことは出来ないのか? そちらからイヤホンずたいに声が聞けるのは分かったけど」
「それでしたら抜かりなく」
そう言うと懐から見慣れた物を取り出す。
「これがなんだか分かりますか?」
「えっと、僕がいつも登校時につけるネクタイだろ?」
「その通りです、そしてこのネクタイに様々な改良を施しました」
咲がクルっと手を返しネクタイの裏を見せる、そこには小さなマイクやらダイヤルやらあれこれ取り付けられている。
「こちらで周辺の音を拾っているので、マイクに話しかけて頂ければ会話も可能です」
「なんか本格的だな、腕時計に麻酔とかネクタイに変声機とか付きような勢いだ」
「変声機なら付いてますよ一応」
マイクの横にボタンがある、おそらくこれが変声機のボタンだろう。なんか事件でも解きそうだな。
「このボタンでいいのか?」
「ええそのボタンを押すと声が神谷明になります」
試しに押してみたら声がやたら高くシャウトになった。
「どうしたんです? これならゲッタービームも烈風正拳付きもゴットバードチェンジも北斗百列拳もやり放題ですよ?」
なんだろう、はっきり言ってこの機能いらない。
「…………なあ咲」
それと後ひとつ言わなければいけない事もある。
「なんですか隼人様?」
「毛利小五郎の声はもう神谷明じゃねぇよ」