生
希望が見えるも届かず永遠に絶望を彷徨い続ける。終わりの見えないこの永遠。死こそがゴール。だが死ぬ気はない。歩みを止めようとは思わない。仲間は道具、使用後は餌。友の肉は後で食らうための食料。血液は水分。用が済んだらすぐ食らう。裏切られたショックと痛みのなか仲間だった者の悲痛な叫びが空を切り裂く。罪悪感はある。悲しみも覚える。だがこの瞬間が恐ろしい程に好きで好きでたまらない。
ある日僕は一人の女の子に出会い、恋に落ちた。彼女のためなら何でもしようと決心し、生き方も変えると誓った。それからは楽しい日々が続いた。絶望に投じていたこの身だが、確かな幸福や希望を見出していた。
だがある日。懐かしい感覚に目を覚まされた。皮膚に当たる鋭いもの。物質的な感触と触れなくとも分かる殺意。彼女は顔を歪ませる程の笑顔で僕の首にナイフを当てている。だが悲しげな顔をしている様にも見えないこともない。そんなのはどうだっていい。今僕は目覚めたのだ。一瞬で夢から醒めた僕は躊躇わず彼女を突き飛ばし、昨日までからそれ以前へと戻り堕ちゆく。やり方は身体が覚えている。倒れて仰向けになった彼女も膝の皿を踏んで割り、その後馬乗りになる。肩が砕けるまで拳を振り下ろし続け腕を奪う。そして自由を奪われた脚と腕の骨を一本一本懇切丁寧に砕いてゆく。やめてやめてと泣きながら懇願する彼女の声が耳につん裂かんばかりの悲鳴。目に浮かべる大粒の涙。彼女が苦痛であればある程、それは僕の快楽となる。彼女は僕に仮初の夢を見せてくれた。そして現実にも戻してくれた。そんな彼女をただ記憶の中、その他の人と同じ過去のニンゲンとしてしまうのは失礼に価する心得ている。彼女には最大限の敬意を払わねばならない。ギリギリまで彼女には生きていてもらおう!動かなくなった彼女の脚と腕を身体から引き離し、止血をする。簡単に死なせはしない。彼女の前で彼女の肉を喰らう。彼女はその光景に驚き泣くのも止まった。そうか!僕に食べられて嬉しいんだね!腕と脚を完食し彼女に僕は叫ぶ。大好き。意識が朦朧としている彼女に声が届いているかは分からない。だが僕は大好きと告げ続ける。そして左手で彼女の首を絞め、右手で柔らかな皮膚を裂き内臓に触れる。そして十回めの大好きと同時に思い切り力を入れ声帯を握り砕き、内臓を引きちぎる。全身が濡れる程の血液!生暖かさは彼女の生きた証の温度。喉の渇きを潤し、屍の顔を見る。笑っている。笑いながら死んでいる。今思えば苦痛から解放される安堵だったのだろうが、その時の僕は「僕の肉になれて嬉しいんだね。」と微笑んだ。