遭遇
その道に迷いこんだのは、いつだっただろうか?
乗り物で侵入したことだけは、覚えている。幾つもの乗り物で辿り着いた道だった。
僕は今、一人で荒野にいる。遥か遠くを見ると雲行きが、怪しい。
ふと、足元に石盤があることに気がついた。
僕の名前が彫ってある。生まれた年も彫ってある。だけど、それ以外に数字は見当たらない。
文字が他にも掘ってあるが石盤が古くて読みづらい。
「若いの、どうなされた?」
振り向くと老婆がいた。
僕は、老婆に言った。
「僕は、この道から抜け出したいんだ」
老婆が少しだけ寂しげに見えた。
老婆は言った。「今から、この荒野に嵐が、やってくる。おまえさんは雷を見たことあるかね?」
僕は、頷いた。
老婆は続けていう。「今から、私が話をする。あなたは、自分のタイミングで、私の話を遮って走り出すのじゃ」老婆の顔から寂しさが消えたように見えた。
「いいかい、雷は光ってから音がする。そして雨風が強くなって・・・」
僕は、走り出した。
走った。とにかく走った。走って、走ったんだ。
でも、老婆の声が、まだ聞こえる。どうしてなんだ!?
スピードが足りないのか?
もっと速くだ!もっと速く走るんだ!
目の前の景色が歪んできた。まだ、老婆の声がする!
スピードが足りないのか?もう駄目だ・・・
疲れた、諦めよう・・
(続く)