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トゥルーエンド

「ねぇ、起きて」

誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる

目を覚ますと高校生くらいの少女がいた

山吹色の夕陽に目が眩む

「君は、誰だ?」

なんだろう、思い出せない。そもそも今いる教室自体がまるで僕が知っている世界ではないみたいだった

「もしかして記憶喪失ごっこ?」

少女が尋ねる

相手を不安にさせるのもあれだし乗っておく

「そう、記憶喪失」

「私は浅生翔子、あなたの彼女なんですけどー」

翔子はむくれて僕の頬を引っ張る

「いてててて!」

その時殴りかかるように翔子との記憶が脳裏をよぎる

確か彼女は幼馴染で去年の夏に告白されたんだっけか

それでも僕の中には違和感が拭いきれない

「思い出したよ、翔子。ありがとう」

「そう、それはなにより」

翔子は視線をそらす

「どうしたの?」

どこか調子悪いのかな?それとも怒らせちゃったかな?

「別になんでもない!全くゆうちゃんのバカ!」

「ごめん」

僕はゆうちゃんらしい、ネームプレートには芳川悠貴と書いてある

「いいけど、帰りどうせ暇でしょ?ならパフェ奢ってよ」

「はぁ!?今月もうヤバいの知ってるだろ!?」

自然と言葉が出る

「知ってるけどそれ以上に女の子に恥をかかせたことのほうが大罪だよ」

ビシッと人差し指を突きつけられる

僕は諦める

「わかったよ、いつものところでいいよね」

いつものところ、って言うと急にその場所が思い浮かぶ

まるで何かによって強引に修正されているみたいだ

違和感は更に僕の心を塗りつぶすはずだったが徐々に薄れていく

「うん、じゃあ行こっか」

翔子は半ば強引に僕の腕を掴み立ち上がらせカバンを持たせると駆け足で教室を出る

「はやくはやくー!」

「はいはい」

ふと教室を振り返る

「!?」

視界の片隅に長い黒髪の少女がいた...気がする

その少女の目は金色で瞳孔が縦に切れていた

少女が何かを語りかけているように見えた

きっとクラスメイトだろう

僕は無理矢理納得させ翔子を追いかけた


「そんでさー、あのときって聞いてるのゆうちゃん?」

「ん?ああ、聞いてるよ。怪我しなくてよかったよ」

「本当だよ、私って結構ドジなのかも」

「翔子は昔からよく転んだりしてたからね」

「ゆうちゃんだって」

互いに昔話を語る

「そう言えばクラスに黒髪で金色の目をした人っていたっけ?」

僕が唐突に話を切り替える

「もしかして浅葱さんのこと?もしかして気になるとか?浮気とかダメだよ、そんなことしたら寝取られてやる!」

翔子がなにか物騒なことを言ってる

「そんなんじゃないよ、たださっき教室にいてさ」

「あの人いつもそうだよ、顔は綺麗だけど不気味なんだよね」

翔子は率直な感想を述べた

なんでだろう、何故かすごく気になった

「ありがとう」

僕は礼を言った

「浮気、ダメ!絶対!」

「しないって」


「悠貴」

翔子を送った帰り道、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえる

振り返るとその目の見覚えがあった

「浅葱さん?」

暗闇の中で金色の瞳が輝く。それがまるで人ではないなにかのようだった

「私のこと、少し知っているのね」

「うん、翔子....浅生さんから教えてもらったんだ」

「言い直さなくてのいいわよ」

浅葱さんは無愛想に言った

「それと私のことは浅葱さんじゃなくて美鈴でいいわよ」

「うん、じゃあ美鈴。僕になにか用かな?」

「ええ、貴方に忠告しておきたくてね」

なんだろう、その場の空気が少し冷えてきた

「忠告?」

僕は恐る恐る聞き返す。心の奥底では聞いてはいけないと警鐘を鳴らす、しかしそれとは相対的に抑えようのない好奇心が暴走する

僕は好奇心に負けていた

知りたい、知らなければならない。そんな気がしたんだ

「いい加減目を覚ましなさい。じゃないと飲み込まれるわよ」

この人は何を言っているんだろう。あまりに意味のわからない忠告だったが何かが引っかかった

「それと手を出して」

美鈴の言うとおり僕は右手を出した

美鈴の暖かい手が僕の右手を包むと何か冷たい物が手の上に落とされた

それを見る、鍵だ。タグがついておりアライハイツ204と書いてある

不思議だ、どこか懐かしささえ感じる。何故だろう、帰らなきゃいけない気がする

「この鍵は、なんなんだ?」

「現実よ」

「現実?何言ってるんだ」

美鈴は僕のほうへ歩くとそのまますれ違う

「私としてはその鍵を使って帰ってきて欲しい。でも無理強いはしない」

彼女はどこか悲しげな目をしていた

「またね、悠貴。学校で」

そう言って美鈴はいなくなった


「ただいま」

「お帰り、お兄ちゃん」

自宅に帰ると妹の明日香が出迎えてくれた

「お父さんとお母さんは?」

僕が何気無く聞く

「忘れたの?二人とも去年に死んだよ?」

その言葉に僕の脳が反応を示した

死んだ記憶がない

血塗れの部屋が脳裏に過ぎり激しい頭痛と吐き気が襲う

なにかがずれている

心配そうに見る妹に気づき僕は慌てて言い繕う

「ごめん、なんでもないんだ」

「お兄ちゃんが言いたいことわかるよ。私だってもしかしたら帰ってくるんじゃないかって思ってるもん」

気まずい空気が流れる

「そうだ、何か食べたいものないか?」

正直言葉が思いつかなかった、とにかくこの感じを壊したい

悪足掻きの末に思いついた言葉だった

「ん...じゃあカレー」

「待ってろ、すぐ作るからさ」

カレーを作りながらふと疑問を抱く

僕はなぜ“ここ”にいるはずなのに情報が圧倒的に少ないのだろうか

周りからは昔からいたように認識されている。しかし僕自身はというと一定のキーワードに疑問を抱いたとき、しかも半ばとってつけたようなちぐはぐな情報が入ってくる

さっきの明日香の反応もそうだ

いや、そもそも明日香とは誰だ?妹、だよな?

そう僕が考えると耳元で“妹だ”と誰かが囁きかけるように情報が入り込む

なんなんだろうこれは、僕はもしかしてみんなの知っている芳川悠貴ではなく全く別の芳川悠貴なのかそれとも僕は僕が本来いるべきではない世界にいるのか

考えるだけで頭がおかしくなりそうだった

額にはべったりとした汗が流れる

ハンカチを出そうとポケットに手を入れると冷たい物が手に当たった

美鈴の言葉を思い出す

「現実、か」

答えはこの鍵にあるのかもしれない、でも僕は怖くて使う気にはなれなかった

現実ってなんなんだ?今この目の前にある事実、風景、感覚が現実ではないのか?

考えるのをやめよう、そんなことを思っていると急に砂嵐の混じった映像が脳裏に浮かぶ

それは僕だった。でも今よりだいぶ年をとっている

僕は一人小さなアパートを借りて細々と生きていた

朝早くにバスに乗って職場に向かい携帯だろうか?機械をバラし分別し時間が来たら帰宅し何をするわけでもなく眠る、そんな毎日を繰り返していた

「!?今のは何だったんだ?」

夢、だろうか

それにしてはとてもリアルなものだ

今僕がいるここよりもずっと生々しいものだった

僕は何か大切なことを忘れているのかもしれない


「おはよう、ゆうちゃん!」

翔子が手を振る

この世界に来てから、って言うのもおかしいけど2ヶ月が過ぎた

鍵に触れた時に見た映像以来特に不思議なことはなくごくありふれた日常が続いた

僕らは通学路である山吹坂を登る

そこの中腹だろうか。ふと視界の隅に見覚えのあるものが見えた

アライハイツ、美鈴が言っていた現実への入り口がそこにあるのだろう

背中に嫌な汗の感触が心を蝕む

僕はポケットの中の鍵を掴む

これは確かめるチャンスじゃないのか?

だが足がすくんで動かない

「どうしたの?ゆうちゃん」

翔子の声にふと我にかえる

「ううん、なんでもないよ」

僕は慌てて翔子の腕を掴む

胸の中で恐怖がずっしりと重みを持って襲いかかる

「ちょっと、ゆうちゃん強引だよ!」

翔子が僕の手を振り払う

「ごめん」

翔子の腕に僕の手形が浮かび上がっていた

「痛いなぁもう」

翔子が腕を抑える

「ねぇ、あのアライハイツっていつからあった?」

いつもなら自動的に情報が入るはずだが今回は入らず逆に妨害されるように断片的にしか入らなかった

「はい?私たちが幼稚園のころにはあったよ?」

そんなバカな、昨日は見かけなかったぞ

やっぱりおかしい、この世界はどこか不完全に思えてくる

帰りにこの鍵を使おう

僕は決心した


「おはよう、悠貴」

美鈴が話しかける

「おはよう、美鈴」

「その顔は見たんだね」

彼女は僕の心の中を見透かしたかのように言う

「鍵はまだ使ってないよ。でも僕は一体誰で何者なんだ?それにここはどこかおかしいんだ」

「そう、答えに少し近づいたみたいね。なら次は何をするべきかわかるわよね?」

彼女は少し優しい口調で言う

「この鍵を使うのか」

「そうよ。でも気をつけて、その鍵を使えば貴方はきっと打ちひしがれてしまう」

まるで今まで見てきたような言い草だ

「だからもし怖かったら」

少し区切ると俯く

「逃げてもいいのよ」

何故だろう、それは諦めの言葉に感じたんだ

きっと僕のためを思って言ったのだろうけど美鈴自身にも言い聞かせている気がしたんだ

「ありがとう、僕は大丈夫だよ。それになんか不思議なんだ、前にどこかで君と出会ったことがある。そんな気がするんだ」

僕がそう言うと美鈴はハッとした顔で僕を見る

「き、気のせいよそんなこと!」

今まで冷静だった美鈴が慌てる

「そんなの、あり得ないわよ。だって私....」

そう言いかけると僕に向き合う

「いいわ、今日行くんでしょ?」

「そうだけど」

「なら私もついていくわ」

「え!?」

思わず裏声が出てしまった

「お願い行かせて、私は貴方を信じている。それにこの世界の終わりを見届ける責任があるの」

「なんだよそれ」

「ちょっといい?」

彼女は窓の外を指差した

「あの地平線の向こうになにがある?」

「なにって...」

なにもなかった、ビルも山もなにもない。霧がかかったように覆い尽くされていた。すると徐々に風景が映し出される

「気づいた?」

「風景が作り出されて行く....?」

「そう、この世界は貴方が認識した一定の範囲のみにだけ形成されるの」

「じゃあ他の人たち、翔子や明日香は一体」

「それはあの鍵を使ってから言うわ」

彼女はそう言って立ち去った


学校が終わって山吹坂を下る

隣には美鈴が何かのメモをとっている

横目で見てみる

“97人目”

それだけははっきり読み取れた

どういう意味かはわからない

アライハイツの前に立つ

ポケットから鍵を取り出し改めて確認する

「ここだよね」

「そうよ、ここが全ての始まり」

僕は意を決して204号室に向かう

扉には立ち入り禁止の張り紙が貼ってありここだけやたら寒い

恐る恐る鍵を差し込むと捻る

ガチャンと重い音を立て鍵が開いた

ドアノブに手を触れ一気に開ける

目の前に広がっていたのは何の変哲もない部屋だった

右手には洗濯機に台所、左手は風呂とトイレだ

床はゴミや物で散らかっておりとても人を呼べるような場所ではない

目の前には更に奥へと続く扉があった

僕は美鈴を見る。美鈴は開けなさいと目で指示した

扉に手をかける

錆び付いているのかとても重い

やっとのことで開く

部屋はやはり乱雑になっており壁にはアニメキャラのポスターが貼ってある。棚にはフィギュアやプラモデルが倒れたりしておりここの住民の無気力さが伺える

更に奥へ進むと布団が敷いてある。そこに視線を下ろすと僕はギョッとした

僕だ。僕が眠っている

でも今よりも年をとっている。無精髭を生やしたその顔はどこかやつれていて生気がない

「これは僕?」

「そうよ、これは貴方。この世界は貴方自身が作り出した夢よ」

ようやくこの世界に対する違和感の原因がつかめた気がする

あくまで推論だがこの世界がちぐはぐなのは現実の僕が経験したことがない風景や出来事、人物を強引に作り出して動かしあとから設定をつけたからだろう

ならどうして美鈴やこの204に対して情報がまともに流れなかったのか

つまりそれは現実で僕が出会い体験したものだからだ

「はは、はははははは」

僕は力なく笑った。全てが夢で幻

この小さな世界は一種の鳥籠のようなものだった

「悠貴...」

「教えてくれ、僕がどんなやつでどんな生き方をしていたのか。それとどうやったら僕は帰れるのか」

「わかったわ、覚悟はいい?」

美鈴が真っ直ぐ僕を見る

「ああ、もちろん。向き合うよ」

そのとき今まで無表情だった彼女が微笑んだ

「貴方の全てを知っているわけじゃない、私が知っているのは精々数年間の出来事だけよ」

「それでもいい」

「まず貴方は17歳ではなく22歳。大学受験のときに家庭の事情で諦めざるを得なかった。そして2年間やさぐれて引きこもる。その後仕事でいろんなところを転々とするわ。そんなある日貴方は両親が離婚をしたことと同時に彼女と別れる。それらの出来事でだいぶふさぎこんだわ」

「他人事ではないんだけどだいぶメンタル弱いんだね、僕は」

「そうね、でもとても優しい人だったわ」

美鈴は続ける

「そしてこの前一家心中があった」

「どういうことだよ....それ」

「父親が家に入り込み母親と妹たちを殺していった後自身を包丁で刺した。そのとき貴方はたまたま散歩に行っていた。帰って来た時には部屋中血まみれで貴方は泣くこともできずに叫んでいたわ。そして貴方はこの世界に来る直前に大量の薬を飲んだわ」

「え....?」

「貴方は自殺をはかったの。でもまだ意識がないだけで死んではいない。でも時間の問題ね」

「ウソだろ...」

「これが私の知っている本当の貴方よ」

「なんでそこまで知ってて何もしないんだよ!!」

僕は声を荒げる

「ごめんなさい、私の声はみんなに届かなくて、それに私ができることは高々しれてるの!」

彼女の目にはうっすらと涙がこぼれていた

「なんとしてでも助けたくて足掻いて願ってようやくここに辿り着いたの!やっと貴方と話すことができた、伝えたいこともたくさんあった、でもそんなに時間は残されてないの....」

「そう...だったんだ」

それ以上の言葉がなかった、彼女の金色の瞳は僕に対する想いでいっぱいだというのが嫌でもわかった

「ありがとう、美鈴」

気づけば僕は美鈴を抱きしめていた

「悠貴...?」

「ごめんね、君の気持ちも知らずに責めたり避けたりして」

「いいの、私は貴方さえ生きて幸せでいてくれれば」

そう言って美鈴は僕の胸に頭を預けた


204号室を出た頃には辺りは夜になっていた。僕らは手を繋いで歩く

「ここでいいわ」

美鈴が立ち止まる

「わかった、またね美鈴」

「またね、悠貴。明日帰る方法を教えるわ」

「ありがとう、何から何まで」

「いいの、お礼なんて」

僕らはそれぞれの家へ向かう

「悠貴!」

後ろから美鈴が僕を呼ぶ

「なに?」

僕は振り返る

「えっと....その....」

彼女はモジモジする

「やっぱりなんでもないわ」

そう言ってスタスタと帰って行った


「ただいま!」

僕は家に帰った。外はすでに暗くなっていた

「おかえり、翔子さんが来てるよ」

「翔子が?」

「うん、お兄ちゃんの部屋にいるから行ってあげなよ」

「わかった」

明日香に言われるがまま僕は自室に向かいノックをする

「はーい」

部屋から翔子の声が聞こえる

「入るよー」

「どうぞ」

扉を開けると翔子は漫画を読んで待っていた

「おかえりなさい」

「うん、ただいま」

僕は軽く挨拶するとベッドに力なく倒れこんだ

「大丈夫?」

翔子が心配そうに聞く

「大丈夫、じゃないかも」

あんなもの見て平気な方がおかしい

今でも思い出すだけで寒気がした

「なにかあったの?」

「あった」

「聞かせて?」

翔子が僕の隣に寝る

「でも信じてもらえないと思うよ」

「大丈夫だよ、私信じる」

「ありがとう」

僕は今まであったことを話した。目が覚めてからの違和感、浅葱美鈴の言葉、今日204号室で見たもの。現実世界での僕、この世界のこと

気づけば僕は泣いていた。怖かったんだ、ずっと誰かに甘えたかったんだ

「よく頑張ったよ、ゆうちゃん」

翔子が僕の頭を優しく撫でる

「うん、うん」

僕は頷くことしかできなかった

不意に翔子が僕の背中を抱く

「ゆうちゃん、どっかに行ったりしないよね?ずっとずっとそばにいてくれるよね?」

「ごめん、僕は元いる世界に帰らなきゃいけないんだ」

「そっか...」

僕を抱いていた腕が離れる

「ねぇ、ゆうちゃんお願いがあるの」

「なんだい?」

「もし現実で私にあったらまた仲良くして?」

「もちろんさ」

「ありがとう」


「覚悟はいい?」

「うん」

次の日の放課後、僕と美鈴は図書室にいた

「帰り方は簡単、おそらく貴方が望めばすぐにでも帰ることができる」

「それだけ?」

「そう、それだけ」

「なら今やってみるよ」

僕は帰りたい、目覚めたいと目を閉じて願った

沈黙が辺りを覆う

「悠貴!」

美鈴に呼ばれて目を開けると目を疑った

世界が...崩れている?

図書室が音を上げ崩れてゆく

「逃げよう、美鈴!」

僕は美鈴の手を引いて走る。亀裂が僕らを追いかけてくる

すれ違う人は亀裂に気づかないのか普段通りに過ごす。だがしばらくするとその人たちも崩れていった

夢が、世界が終わる

この小さな鳥籠のような世界が音を立てて崩れる


外へ出た。見上げれば空が落ちている

崩れた部分から真っ暗な闇が見える

目の前には光の柱が立っておりここへ行けば帰れる、そんな気がした

「ゆうちゃん!行かないで!」

翔子が僕を追いかけ僕をつかむ

「翔子!?」

「私、やっぱりゆうちゃんと一緒にいたい!だから行かないで!」

「離しなさい、悠貴は帰らなきゃいけないの!」

美鈴が翔子手を振り払う

「浅葱さん....!!」

「もう誰も悠貴の邪魔はさせない。悠貴は私が守る!」

「あなたねぇ!私はゆうちゃんの彼女なんだよ!?なのに浅葱さんはゆうちゃんの何なの!?」

「私は悠貴にとってどんな存在であっても構わない」

翔子はポケットからカッターを取り出した

それを見て僕はギョッとする

「あなたのそういうところが嫌いなのよ!」

ザクっと嫌な音が聞こえる

「悠貴....行って!」

カッターが美鈴の腹に深く刺さるのが見える

「でも!」

「いいから!」

美鈴は翔子のカッターを持つ手に力を込めて掴む

「うるさいうるさい!ゆうちゃん、早く戻ってきて!じゃないと本当にこの女を殺しちゃうよ!そんなの嫌でしょ!?」

翔子の体にヒビが入り徐々に崩れていく

「やめろ!やめるんだ二人とも!」

止めようと翔子と美鈴に近づく

「来ないで悠貴!」

美鈴が拒む

「私は大丈夫だから目を覚まして」

「君を見捨てていけるか!」

「大丈夫、目を覚ませばまた会えるから心配しないで。だって私はあなたの....」

そう美鈴が言いかけると徐々に光の柱が消えかける

「行って!」

僕は踵を返し柱に向かって走る

光はとても暖かく僕を包むと体が宙に浮かんでいく

僕は美鈴のほうを見た

彼女と目が合う

彼女の口が動く。耳には入らなかったが何を言ったのか僕には理解できた

“大好きでした”

「美鈴ー!!」

僕は彼女の名前を叫んだ


「ねぇ、起きて」

誰かがそう僕を呼ぶ声が聞こえる

目を開けると僕は布団の中にいた

朝日が眩しい

胸の上に重いものが乗っかっている

僕はその胸の上にあるものを見る

「にゃー」

キジトラのミーさんだ。眠そうな目で僕を見ると歩み寄り頬を舐める

「くすぐったいよミーさん」

それでもミーさんはやめない、それどころか更に激しくなる

さすがに僕は降参する

“目を覚ませばまた会えるから”

そんな言葉が頭から浮かぶ

不思議な夢だった。でもどんな夢だったかはイマイチ思い出せない

「まさか、ね」

「にゃー」

「今日は奮発して缶詰にしようか」

立ち上がると着替えて買い物に出た

もしかしたら、そんなことを思った

また美鈴と会える、そんな気がしたんだ


3年後

ミーさんが病気で他界しついに僕だけになった

今日は家族の命日だ

墓の前に立ち花を添える

「みんな、僕は元気だよ。みんなの分まで生きるから、だから」

優しい風が僕を包む

「もう大丈夫だよ」

僕はあれから就職し少しはまともな人生を歩み始めた。彼女とかはまだいないけどそれでもずっと充実して明るい毎日だ


家に帰る途中にある坂を登る、桜が咲き誇り風に乗って花びらが舞う

僕はそれに目を奪われながら歩くと何かにぶつかる

「ごめんなさい!」

ぶつかった少女は尻餅をついてしまった

僕は大丈夫ですか?と言って手を差し出す

少女は顔を上げる

彼女の顔を見て僕は驚いた

「やっと会えた」

少女は笑って言うと僕の手を掴んだ




くぅ~疲れましたw これにて完結です!

実は初夢を妹に話したらこれを小説にしようということになったことが始まりでした

今回初投稿なだけに駄文が非常に目立ちますが少しでも楽しんでいただければ幸いです

以下、キャラ達のみんなへのメッセジをどぞ


俺「みんな、見てくれてありがとう

ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」


俺「いやーありがと!

私の可愛さ二十分に伝わったかな?」


俺「見てくれたのは嬉しかったけどちょっと恥ずかしいわね・・・」


俺「見てくれありがとな!

正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」


俺「ありがと・・・」ファサ


では、

って全員俺じゃねぇかっ!!


俺たち「って、なんで俺くんが!?

改めまして、ありがとうございました!」


本当の本当に終わり


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