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異世界日本奮闘記  作者: 暁海洋介
9/16

第八話 ミッドランドの参戦と日レ戦争終結

 どうもです。海軍士官です。二日に一度、二話ずつ投稿していたですが、少しペースが速すぎた気もします。ちょっと疲れたのでペースを落としております。さて、相変わらずですが本編をどうぞ。

――移転歴2年4月末 日本首相官邸――

「で、向こうに発した降伏勧告は無駄になったわけか」

 セントリーア諸島を確保した後、日本は彼らに降伏を促したが、連中は黙殺したようで、返答の代わりにセントリーア諸島へ大規模爆撃団をもって空爆を実施しようとしたが、進出していた空軍部隊によってそれは阻止されている。


「はい。もっとも市民の方は圧政から解放した日本を歓迎しているようです。どうやらもともとあの地域はずいぶんと昔に侵略によって獲得された地域だったことが分かりました。たぶん、この分だと、レガルシアを解体するまで向こうは戦いをやめないと思いますが」

「それは出来れば避けたいがやらざるを得んだろうな。だが、半年以上たってだいぶ落ち着いたものの、相変わらず燃料が不足気味なことには変わりないんだ。今は、国民感情が殴り返せと熱くなっているからいいが、あんまりいい状態ではない。まあ、こないだ来たイストニアによればこのノウェリアを抑えれば連中はジリ貧になるそうだ。なら、ここを連中から切り離して継戦能力を奪えば、無理が来て、早期に降伏してくれるかもな」

数日前に、レガルシアと同じ東大陸南部の国家イストニア合衆国がレガルシアについての情報提供を申し出る形で日本とミッドランドに接触してきていた。

 彼らの情報提供の結果、産業革命に乗った勢いで周辺諸国を武力制圧して領土を広げてきた国家であること、その中でもノウェリアは産業革命以前の段階で併合された地域であることが分かっている。同地域は元々、寒冷地ゆえに農業には向かず、たびたび飢餓が起こるなどしていたし、レガルシアからして見れば西の蛮族であったため、当時のレガルシアの国教勢力の後押しの下、教化の名目で早いうちに植民地化されたのだ。


 以後、何度か独立しようとしたが産業革命期に鉱山が近くで見つかり、後には沿岸部でかなり大規模な油田も発見されて帝国の植民地拡大に重要な戦略資源の産出地帯であることがわかったため、食料供給を帝国が握って同地域に圧政を敷いて開発を進めていった。その結果、現在の帝国の生産力のほとんどはここに集中している。

 したがって、ここを切り離すだけでかなりの弱体化が見込めるというのがイストニアの提示した情報だった。


「ですが、そう上手くいきますかね? まあ、確かにここを取れば、少なくとも太平洋に連中が海軍力を行使することは向こう数十年間は不可能ですしその可能性は無くは無いと思いますが」

「何としても上手くいかせねばならん。とっととこんな無益な戦争なぞ終わらせて秋津島の開発を急ぎたい。北部油田は重要なエネルギー源になるし、南部の山岳地帯にはいくつもの鉱山がある。こっちに移転したことが原因かはわからんが国内でも鉱床が復活している今、早いとこ産業の完全復興を済ませたい」

 転移後、マグチッタの内乱に巻き込まれた日本は、賠償金を支払うには資金が不足している(表向きの言い訳はこうだが、実際は反体制派に対する見せしめとしての役割が大きかった)としてマグチッタから領土を割譲された。マグチッタを構成していた島のうち、一番北にあった同島は、日本に割譲された際、秋津島と名付けられ、開発が始まっている。四国の四分の三の大きさを誇り、北部沿岸に油田をもち、南部には鉄をはじめとする各種鉱山があり、その一部は、日本の需要量を上回る埋蔵量をもっており、後年、日本を支える重要な島の一つとなる。


「ですね。マグチッタからはレアメタルや食料が供給されただけでなく、ポルトマーレ港の拡張と民間人の渡航に備えたパスポートなどの準備が整い、来月にも両国民間人の交流も可能になるとの報告が入ってきましたし、ミッドランドやアストリアへも今週末から本格的に民間人が渡航できる体制に入ったとのことですからこれから国際交流が本格化するわけですし」

「そういうわけだ。自衛軍には早期終結に向けて頑張ってもらわんといかん。防衛大臣。頼むよ」

「了解です。なるべく早く終われるよう努力いたします」

その後、再三の降伏勧告を無視したレガルシアに対し、日ミ連合軍はレガルシア軍の継戦能力を奪うべく、ノウェリア一帯を切り離す作戦を開始した。


――移転歴2年5月上旬 サンクト・ノウェリア軍港――

 日本が奇襲を受けた直後、ミッドランドは布告もなく日本を殴ったレガルシアに対し、宣戦を布告した。なぜなら当時、舞鶴では日本海軍とミッドランド海軍との合同演習が近々予定されている関係で巡洋艦1隻と駆逐艦数隻からなる艦隊が来ていたし、北海道には本格的な貿易開始に向けて試験航海の途中で立ち寄っていた自国の民間船舶が泊まっていて被害が出ていたからだ。このため、通商条約は改定されて同盟関係へと発展することとなった。

 結果として、日本はセントリーア諸島攻略中に準備を整えてきたミッドランドとともに、衛星や捕虜、イストニア合衆国からの情報によって知ったレガルシア北西部の重工業地帯及び、軍事拠点であるノウェリア地方をレガルシアから切り離して同国を弱体化させる作戦に着手することになった。


「うっそだろ!? あんだけ叩いたのにまだこんなにいるのかよ!? 第二次大戦中のうちだってここまでの艦隊は用意できないぞ。どんだけ、国民から搾り取ってるんだよこの国。ふつうなら国家が傾くぞ!?」

 攻撃開始の合図を受け、港内に入った鳳翔艦載機パイロットは停泊している艦隊の威容に毒づいた。

 すでに函館防衛戦やセントリーア諸島攻略戦に関連する海戦でかなりの数を叩いたにもかかわらず、港にはたくさんの艦艇がいた。攻撃隊の主目標である戦艦と思しき艦が1ダースいただけでなく、同じく攻撃目標である正規空母も、なんと10隻以上いた。それだけでなく広い港内にはそのほかにもたくさんの艦が停泊していた。


「まったくだ。多すぎて何から狙えばいいんだかわからんぞ」

「ファイヤーバード1。心配せんでも獲物なら腐るほどある。全部沈める気で行け!」

「了解! これより攻撃を開始する!」

 宣言したパイロットが操縦する艦載機が戦艦を狙って攻撃を開始した。他の機も続いていく。しばらくして、ある程度敵在泊艦隊に被害が出たころになると、敵機が上がってきたが、速度差が大きすぎるせいで迎撃することも出来ぬまま、ミサイルを撃ち終えた味方機によって、ただ落とされていった。だが、数が多すぎるため、艦隊からもトマホークやハープーン、SSM-1Bなどの対艦ミサイルが撃ち出され、航空隊と目標を分担して攻撃していく。


「総員。上陸用意! 各自、無駄死にだけはするな。自分や味方の命を最優先で護れ!」

 在泊艦隊の無力が完了すると、おおすみ(旧ベロー・ウッド)を含む2隻のタラワ級強襲揚陸艦や、みうら型はミッドランド軍輸送部隊とともに陸軍や海兵隊(ほとんどは米海兵隊員で構成されているが一部旧陸自から転籍した者もいる)、ミッドランド軍部隊を上陸させ、港の制圧を行い、拠点を確保する。一部は市街地戦となり、民間人さえも駆り出すレガルシアに日ミ両軍は早く戦争を終わらせようと心に誓うこととなった。

 翌週、日ミ連合軍は、ノウェリア―レガルシア本国間の輸送路を破壊し、レガルシアから戦力補充の手段を奪った。しかしそれでも、レガルシア軍は後退戦術を取り続けてなかなか屈服しない。

 結局レガルシアが降伏したのは、すべての戦力を失い、戦いたくても戦えなくなった、7月半ばのことである。


 戦後、レガルシア「帝国」は日本とミッドランドの手で解体され、かつて植民地とされた地域は、イストニアを含めた3国の支援のもと、すべて独立国となった。

 最大の植民地であったノウェリアも、しばらくの間日本とミッドランドの統治を受けた後、ミッドランドと国境を接する西側の一部を残して独立し、ノウェリア共和国として再出発した。

 レガルシア本国は、国家主権の維持こそ認められたものの、沿岸部の植民地を失って外洋へ出る手段が無くなっただけでなく、国力はかつての30%にも満たず、今後二十年の軍の保有を禁じられたうえ、復興のために残された工業力を支える資源でさえ、持っていない同国は三流国に転落していった。


 レガルシア「帝国」を事実上滅ぼしたこの戦争を、日本とミッドランドでは単純に『対レガルシア戦争』と呼び、敗戦国となったレガルシアでは自嘲気味に『大破局戦争』と呼んでいる。しかし他の国々、特にレガルシアの旧植民地諸国では、そうは呼ばない。帝国の圧政下にあった彼らは連合軍によって解放、独立へ向かったので『解放戦争』と呼んでいるが、一部の国では『レガルシア自滅戦争』と呼び、愚行と自業自得の典型として、嘲笑している。


――移転歴2年5月下旬 ポルトマーレ在マグチッタ日本軍基地――

「だー! 寒いとこ行ったと思ったらまたここかいっ」

「しょうがないだろ。元々の任務はここの治安維持作戦なんだし」

「そうは言うがな。こう何度も気候条件の違う地域を行ったり来たりしてたら体調を崩すっつーの」

「それには同意しますね。僕は元が西海岸の育ちでしたので暖かいこっちの気候の方が楽ですし」

 戻ってきて早々愚痴を言う綾倉。数日前に任務を解かれて元の所属部隊が駐屯するマグチッタへ戻ってきたので体調を崩してしまったがために不満をこぼしたのだ。


「それでも軍人さんでしょ。だいぶ治安は良くなったけど気が抜けるほど甘くないの。もうすぐ正規軍の教導任務があるってのにだらしないわよ。ほら。差し入れ」

 基地にやってきたみずきが沢路たちの下に近づいてきた。今日、みずきは家族が来ると言うので迎えに来たのである。

「げっ! だ、誰かと思えばみずきさんじゃないですか」

「誰が、げっだ。練金鍋にぶち込んで溶かすぞ! コラッ!」

「ひぃぃ! すいませんでした!!」

「分かればよろしい」

 悪態をついた綾倉に青筋を浮かべるみずき。そのまま土下座する綾倉に、勝ち誇った態度を取る。いつもの二人のやりとりに、ケリーは苦笑し、沢路は帰って来たんだなと感じる。

「そういえば、うちも海軍を整備するにあたって基地整備を始めるのよね。ドックの建設も始まったし。うちもいよいよ本格的に近代国家になるのかあ。あたしじゃ出来なかったことが日本が来たらあっさりできるようになったのが悔しいわね」

「まあ、いいじゃないですか。貴女はもう国で一番の錬金術師として活躍しているらしいじゃないですか。べつに全部やる必要はないと思いますけど」

「そう? でも、やっぱり国が自分の意見で育っていくのを体験しちゃった身としては物足りないのよね」

 国の新たな動きにみずきは関わりきれなくて不満を漏らす。そこに、政府専用機と思しき機体が空軍基地へ降りようとして近づいてくるのが聞こえてきた。みずきの家族や大使館員の家族が乗ってくることになっているものだった。

「そういうもんですか。あ、飛行機が降りてきましたよ」

「あら、ホントだ。じゃあ、そろそろ行くわね」

「ええ。お気をつけて」

 飛行機の音に空軍基地へ彼女は向かって行った。あと、半月もすれば、仮設の民間用空港スペースも完成する。その前の試験も兼ねたフライトをする政府専用機の姿を沢路はただぼんやりと眺めていた。

 ご意見、ご感想くださった方、ありがとうございます。あと、4500PVアクセス達成しました。ありがとうございます!!わずか一週間でここまで伸びるとは予想していなかったのでありがたいです。これを励みに今後も頑張っていく所存ですのでよろしくお願いします。ちなみに、次の話でちょうど一章分が終わります。二章目は基盤を得た日本はもちろんですが、それ以上にマグチッタを軸に、そのほかの国の変化の様子を追って行くような形を予定しています。お楽しみに。

 それでは、次話でお会いしましょう。

P.S. 12/9/18 一部時系列が内容的におかしいなと思ったので本文を大幅改定しました。

12/9/19 指摘によりレガルシア軍ノウェリア在泊艦隊の規模を修正しました。

12/9/20 レガルシア戦争終結の部分が読みにくいとの感想をいただきましたので修正しました。

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