第三話 王都アルカミ―シュロス
世界設定できたよ~。海軍士官です。まだ人物設定が固まっていないせいでコロコロとキャラ性が変わるかもしれませんが、予めご了承ください。
マグチッタ王国王都アルカミ―シュロス。王国に三つある大きな島の一つにある錬金術師たちのアトリエがいくつも集まったことから始まったこの都市は、そのうちに魔導師が集まってきたことで魔法や錬金術の研究を中心とする学術都市になった。その結果、それらを利用した兵器や魔導機械が発明され、マグチッタはこの街を中心に国として大きくなっていき、領邦制国家としての体をなすようにその領域は次第に大きくなっていった。平民と貴族や兵士の違いは魔法や錬金術が使えるか使えないか、つまりそれらを行使するための読み書きをはじめとした学問が出来るか出来ないかの違いである。先日、日本に来たアリスにしても魔法の一つや二つは使えるし、レイチェルにしてもただの元日本人だった祖母が猛勉強の末、大錬金術師となったこともあり孫である彼女もその知識はある。中世ヨーロッパとちょっと違うのはよほどの辺境地以外では奴隷制を用いていないことである。何せ、錬金術や魔導機械のおかげで平民にせよ錬金術師や魔導師にせよ、みな便利な生活を送っており、王都から距離の離れた環境の劣悪な辺境地以外ではそれらの恩恵に与れるからである。
そんな王都の近辺にある森の一角にキャンプが用意されている。言うまでもないが沢路たちのキャンプ地だ。王都はおそらく異常事態のどさくさを利用した分からず屋の一部貴族の反乱が起きているはずだ。アリスが日本へ向かう際、王権の失墜を予想した動きをしている貴族がいることは想定された。現に日本へ向かう途中で襲撃を受けたし、こうして王都へ来るときにも襲ってきた。すでに王都は制圧されていると考えて行動する必要がある。沢路の小隊の報告から本隊は空輸作戦で沢路小隊を含む前進部隊に合流することにした。
「なあ。嫌な予感がするんだが、気のせいか?」
「そうか? むしろ、本隊が来りゃ、あとはどうとでもなりそうだが」
沢路たちがそういって、警戒を強めたのは王都の方がやけに静かだったからだ。しばらくして、アリスが戻ってきた。護衛に就いていた自衛隊員も一緒だ。そして三人の男女がいる。一人はアリス、もう一人は貫録のある中年男性。そして最後の一人はこのマグチッタでは本来ありえない人種の人間であった。
「まさか本当に自衛隊が来てるなんてね。日本が飛ばされてきたと聞いて冗談半分で暇なときにレポート書いたのが役立つとは夢にも思わなかったわ」
そう言った女性は、服装こそアリスやレイチェルのようにゲームの中にしか出てこなそうな服を着てはいたが言いっぷりは日本人そのものだった。それだけでも沢路たちを驚かせたが、さらに彼らを驚かせたのがレイチェルの祖母だというその女性、どこからどう見ても祖母というのが嘘にしか見えないほど若く美人だったことである。
「うそでしょ!? レイチェルちゃんのおばあちゃんって聞いてたけどどこからどう見ても女子大生にしか見えないのは反則だろ!?」
「あんたねぇ……。初対面の女性に言うに事欠いておばあちゃんって、あんた、それ以上言うと錬金術の材料にしちゃうよ?」
あまりに失礼な綾倉の一言に、その女性は青筋を浮かべて今にも爆発しそうな顔で脅しをかけてきた。錬金術の材料にされると聞いて顔面蒼白になった彼はすぐに彼女に向かって歴史に残るかもしれないほどきれいな土下座をして即座に謝った。
「すみませんでした!」
「あはは……。冗談だって。そりゃまあ驚かれても仕方ないよ。こっち来てから調子に乗って錬金術で作った自前の化粧品使ったら、急に年を取らなくなってさ。ビックリしちゃうよね。自分で見てたら変な気分になりそうなくらい肌もツヤツヤしちゃってるし。おかげさまで充実した生活を送らせてもらってるし。……ああ、そうだった自己紹介忘れちゃってたけど、あたしは安川みずき。ここへ来る前は東都女子大の2年生だったよ。よろしく」
「こ、こちらこそ。自分、陸上自衛隊東部方面隊所属3等陸尉綾倉恭介であります。お会いできて光栄です」
なんだか、不思議空間と化したこの場に居づらくなってしまった沢路とレイチェルはほぼ同時にため息をついてしまっている。
「……なんか、無駄にフランクな女性だな。君のおばあちゃんって……」
「……なんかもう、いろいろとすみません……。沢路さん」
残念なものを見る目で二人が綾倉たちを見ているとアリス親子が沢路に話しかけてきた。
「ははは。みずきは相変わらずだね。……っと、今回は、娘のアリスがご迷惑をかけたばかりでなく、私たちを助けていただいてありがとうございます。父のアンソニーです。国王とかいう肩書がついてますけどそんな大層なものじゃないのでどうかお気を使わずに」
「いえいえ。こちらこそ。自分は陸上自衛隊東部方面隊所属2等陸尉沢路涼一です。よろしくお願いします」
あいさつもそこそこに二人は綾倉たちの喧騒をスル―して王都の状況、自衛隊はこれからどうすればいいのかなど、重要な話し合いを始めた。
「じきにうちの本隊が来ます。手数じゃ、敵いませんけど、うちには魔法とは違う、近代的兵器がありますから戦力的には上を行っているはずなのでたぶん大丈夫だとは思います。ですが、魔術というものが私たちの国にはないですから、正直、戦闘魔法の威力がイマイチつかめていないのが現状です。自分の見立てでは、個人の技量によるところが大きく、戦力的には均質とは言い難いと思われるのですが、どうなんでしょうか」
「そうですね。その見立てでだいたいあっていると思います。機械というと我が方には魔導機械というものがありますが、操作する者の魔力によって行動力などに制限がありますし、私がみずきやアリスたちに聞いたあなた方の兵器のように誰でも等しく同じ効果を相手に与えるというのは無理ですね。ただ、その分、連中は数にものを言わせてせめてくるでしょう。少なくとも私が信用に値する近衛師団じゃ、持ちこたえられる保証は無いですね。練度の面じゃ、いくら正規軍でも経験した数に差がありますし」
悔しそうな表情を浮かべて話を続けるアンソニーに沢路も何と声をかけていいのか分からない。どんな世界でも成功する者は必ず疎まれたり、羨まれたりとロクな事がない。そして疎んだり、羨むやつというのはだいたい現実を見ず、自分の権力欲を満たすことしか考えていないことが多いということを異世界に来てまで実感させられているからだ。
そんな辛気臭い話を聞きながら、沢路は本隊に詰めている直属の上司の顔を思い浮かべていた。彼の上司は日和見主義と揶揄される外務省官僚と陸自の上官だったが、どちらも窓際に追いやられている人材だったためかよくあるロクでもない官僚のイメージとは似ても似つかない人であったし、本隊を預かっている上官の方は、「何かあれば、俺が責任を取る」と今回の任務での武器使用の自由を認めてくれた。周りがいい人でよかったと思わされる沢路であった。
そうして事情を把握したはいいが、最悪なことに、その後入ってきた情報に、本隊が攻撃を受けていて沢路たちと合流どころの状態ではないということだった。魔導機械や魔法で攻撃してくる反体制派貴族どもが物量戦を仕掛けているようだということを知った沢路たちはアンソニーの提案で近衛師団と合流して反体制派の制圧を行うことになった。なにせ、国王であるアンソニーにとって、外交官、つまりは使者を攻撃したということは、相手国を侮辱する国の恥さらしだったからだ。特に、沢路の付け加えた日本には直近にソ連に宣戦布告もなくいきなり攻め込まれて戦争になった過去があるということを考えれば、このあと、仮に無事彼らと交渉が出来たとしてもどんなことが起こるか予想もできない悪夢が待ち構えていることぐらい容易に想像できた。最後に添えられた、「曲がりなりにも国家である貴国がただの武装集団と思われれば、国交を樹立する前に危険集団として制圧されるかもしれませんよ? 下手な話、この異常事態に日本はなりふり構うつもりは無いわけですから、ちゃんとした国家であることを見せつけておかないと国でなくなるかもしれませんよ?」という半ば脅しにも聞こえる言葉にアンソニーは王都を空けるという愚を犯すことを覚悟のうえで近衛師団に逆賊となった反体制派貴族を殲滅するよう命令を出した。生きて帰せば、またやってくることぐらい王になって以来の経験で思い知らされたアンソニーはこの際だからと、徹底するよう命令を出したのだ。そして、要請を受託したという体を取って、沢路たちはアンソニーとともに向かう近衛師団と合流し、本隊救援に向かったのだった。
王都編とか言っときながらこれだよorz
なにせ、わたくし、ファンタジー書いたことないから戸惑っておりまして(汗)ちなみにゲートは実を言うとマンガしか読んでいません……参考にすらなってない。ダメじゃん。というわけでたぶん、参考資料探しとかプロット作りとかでまたしばらく間隔空くかもです。誰か、良い陸戦とかファンタジー描写の資料がございましたらご一報ください。
では、次回でまた会いましょう。
p,s 12/9/16マグチッタ王国の地理関係について前話同様書き足させていただきました。