表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界日本奮闘記  作者: 暁海洋介
16/16

第六話 異世界における日本の交通事情

 お久しぶりです。海軍士官です。だいぶリアルがごたごたしながらの執筆であるため、時間が空いてしまい、申し訳ないです。今後も不定期投稿が続くことが予想されますが、長い目でみてくれるとありがたいです。それでは本編をどうぞ。

 日本が転移した頃、国内の交通事情は最悪の状態にあった。転移前の戦争で鉄道も道路も空港も被害は甚大。また、一時期、シーレーンが寸断されて燃料・資材不足に陥ったことや沿岸部への攻撃により工場の多くが被害を受けていた。

 転移後も長期にわたって慢性的な燃料・物資不足が続いたため、函館危機から対レガルシア戦争が終わって新領土の開発が軌道に乗るまでの間、一部物資が配給制になっていた。これゆえに一度、民営化された鉄道は政治的な理由から再度国有化されたほか、航空機、船舶、自動車についても統制下に置かれた。これに合わせて国が着手したのは基幹交通網は鉄道とし、大都市圏内においては路面電車や地下鉄を走らせて自動車は締め出す、いわゆるパーク&ライド法を導入することだった。本来、この制度が企図していたものと違い、少しでも燃料リソースを削減して長く使えるようにすることを目的としたこの法に当初は反対者も多かったが、転移で産油国とのつながりが絶たれたどころか、函館危機に始まる自衛戦争が起きたことで燃料不足に拍車がかかり、深刻な交通マヒが起きた事から少しずつ賛同者を得て、現在に至っている。

 また、燃料をはじめとする各種資源の自給自足を目指してリサイクル技術が急速に発展し、コストは高くとも国内資源の採取を継続的に行うことを目的とした政策により閉山された鉱山や木材確保のための林業も復活を遂げている。

 現在では燃料不足も資源不足も解消されたが、またこの国がいつ転移するかわからないため、これらの対策はほぼ永久に削除することができない法として制定した状態になっている。なぜなら転移直後からの数年間に渡って、国民は転移前のオイルショックや戦争の比ではない、本当に国家としてぎりぎりの状態を深く味わったのだ。それは転移前からの一連の戦争に反対運動をして防衛の邪魔をした当時の函館市長や道知事の末路と同じように後の政権交代で資源関連を事業仕分けをしようとした某政権が糾弾されて所属議員たちが揃ってその政治生命を断たれる形となったほどであった。

 そんな日本の交通産業のトレンドは道路と鉄道のインフラ輸出である。とくに鉄道含めてマグチッタでは一番素直にこれを受け入れている。ついで、高速鉄道網構築を考えていたミッドランド、アストリアが新幹線インフラの輸出を打診している。両国はすでに元の世界における欧米諸国のそれに近いレベルで鉄道網が広がっており、自動車社会の到来と航空機技術の進展で鉄道が衰退をはじめようとしていたのだが、転移後に知った日本の新幹線技術に鉄道の新しい可能性を見出したのだ。


――東京 国鉄本社会議室――

「それでは、運行システムを含めてすべて一式での輸入を希望と」

「ええ。さすがに高い買い物になりますが貴国でやっている時速250km運転と高頻度運転はこれからの陸運のカギになると思いますので」

「そうですか。こういってはなんですが、わが国では貨物新幹線もやろうとしたのですが線路容量や載せ換えの問題、高速運行のカギとなる高加減速性能を得るには動力集中方式よりも分散式の方が良いのでどうしても機関車方式にならざるを得ない貨物の輸送には向かないと思いますが」

 ミッドランド国鉄と日本国鉄とでの交渉の席では旅客のみならず貨物も高速化することを狙うミッドランドに日本側は難色を示した。

「そうですよね。貨車の最高速度に制限がありますし、形式も雑多なので当面は高速化も難しいですし」

 そこに交渉担当の鉄道オタクの政務官がちょっかいをだす。

「ToTなんてどうです? 素人考えですけど新幹線規格の貨車に在来線規格の貨車をそのまま載せ、前後に高速走行用の強力な機関車を付けて走るという案です。これも載せるための設備をもつ駅が必要であったり、車両設計上の問題があったりと難しい麺がありますがまだ当面先とはいえ、北海道や四国への新幹線延伸を行うなら在来線の問題が出てきますし、これのモデルケースを得るための実験運用を向こうさんのところでやらせてもらえばいいのでは」

 聞きなれない単語にいぶかしむ両国担当者に件の政務官は頭を掻きながら説明をする。

「……なるほど。それなら確かにどんな貨車編成でも載せる駅でその車両に載せて新幹線機関車で走れば一気に今の三倍近い速度で運転できるようになるな」

「確かに。それなら集約駅を決めてそこで積み卸しするようにすればどうにでもなりますな。持ち帰って、検討してみましょう。政務官殿、貴重な意見ありがとうございます」

 説明に納得した両国担当者が持ち帰ってしばらくした頃、ミッドランド側からの回答により、正式に事業として進めることが決まる。

 こうして、日本とミッドランドの最初の共同事業としてToTシステム開発が決まり、両国の鉄道史に新たな一ページが刻まれることとなった。後にこの開発事業の結果、青函トンネル問題が解決するなど大きな成果を上げることとなる。

 一方、航空分野ではミッドランドの航空メーカーと日本のメーカーの共同開発で旅客機が開発されたほか、自動車は一時期、日本のメーカーが二十年以上のアドバンテージを活かして各国自動車産業界を席巻していた。とはいえ、日本のどのメーカーもレガルシアには輸出を自重していた。ビジネスチャンスになることは分かっていても国民感情を逆なでにしてまで輸出する勇気は各社とも持ち合わせていなかった。

 いかがでしたでしょうか。幕間話みたいな小さな話が続きましたが、次からは少し大きく動かせたらなあと思いつつ、次話の構想を練っておりますのでまたしばらくお待ちください。

 それではまた次話でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ