第四話 終わりと始まりの新海軍
お久しぶりです!海軍士官です。残念なことに昨年末のPC破損に続き、先日、設定データの入ったUSBが破損しました(泣)。災難が続いておりますが、なんとか再構成して仮復旧できたので久々に投稿したいと思います。今回は少し時系列をさかのぼってミッドウェーこと鳳翔の引退と艦観式の様子です。
時はさかのぼって、移転歴10年。この年は日本海軍にとって重要な年だった。これまで海軍の中心的存在だった旧アメリカ海軍空母ミッドウェーこと鳳翔が、国産新空母2番艦「山城」の就役をもって退役することが決まったのである。
前年10月に新空母一番艦「扶桑」が就役した際に、予備艦として呉で活動を続けていたが、もともと艦齢50年近いうえに、移転後の酷使が祟ってとうとう機関不調を連発し、とてもではないが、現役を続行させられなくなったのだ。このため、本艦は、12月に横須賀で退役記念式典を行った後、三笠のそばで記念艦となることが決まった。
――呉港内 鳳翔――
「とうとう、こいつも引退か」
「そうですね。私としてはもう少し現役でいさせてやりたかったですけど」
初老の艦長が若い士官に問いかけられる。彼は、若い時からこの艦に乗り続けたベテランだった。自らの退官と相棒の退役が重なり、感慨深そうな表情をしている。
「まあ、そう言うな。こいつもかなりガタが来てるんだ。そろそろ休ましてやろうじゃないか」
「そうですね。まさか日本政府のおかげでこいつがあのトーゴーの乗艦だったミカサの横で記念艦になるとは、夢にも思っていなかったですよ」
「まったくだ」
艦内ではこの艦長たちのやり取りのようにそれおぞれが自分の相棒とのお別れを前に談話したり、掃除をしたり点検をしたりと皆、思い思いに行動している。その表情は皆、晴々としていた。
やがて、タグボートがやってきて横須賀への移動を始めることになった。最後の自力航行をすることになり、先ごろ就役した新型巡洋艦が護衛を兼ねて先行する形で出発することになった。
「そろそろ出発だな。微速前進。最後の仕事だ。皆、しっかりやってくれ。手空きの者は総員登舷礼用意。以上だ」
「アイ・サー!」
件の艦長が命令を発した後、鳳翔は汽笛を鳴らして最後の航海へ出ていった。
――数カ月後、三笠記念公園――
桜が咲く頃、ここ三笠公園はいつもより人が多く来ていた。あの最後の航海の後、鳳翔は横須賀海軍工廠のドックに入り、記念艦への改装工事を行うことになった。担当はかつて、艦齢延長工事を担当した某社が行うこととなり、艦体の痛みを直したり、見学者用に内装の変更を行ったりするなどの工事を経て、同艦は新造艦のような輝きをもって三笠の前に姿を現した。
なお、コンクリートで船体を覆われている三笠と違い、鳳翔はフロート式の桟橋に横付けする形で保存されている。というのも、三笠と同じ方式で保存するには船体が大きすぎるのだ。このため、劣化対策で10~20年おきに一回はドック入りしての整備が必要とされるのはご愛敬である。
かくして、三笠記念公園は、海軍記念公園へと名称変更され、多くの市民に新たなレジャースポットを提供することとなった。
――移転歴11年度観艦式 横須賀港内――
5月27日。海軍記念日に行われた観艦式はいつになく大盛況だった。というのも扶桑型空母の2番艦が完成し、国産2大空母が揃って参加した記念すべき年だったからだ。艦の名前は山城。年明け早々に落成した最新鋭艦である。
二隻は、洋上ではそれぞれ発着艦展示を実演し、横須賀港内では艦内見学ツアーが扶桑にて行われた。
また、この年は、マグチッタの練習艦隊に所属するフリゲート艦が参加していた。遠洋航海訓練の途上で来ていたのだが、たびたび現れる魔獣対策でシーレーン防衛能力の向上、周辺諸国との関係強化の一環として参加することになったからだ。
「しかし、まあ、強力な海軍ですよね。ニホン海軍って」
士官候補生の青年が横須賀港に停泊する主力艦隊の威容を見て、そう上官に呟く。彼の目の前には洋上展示を終えた航空母艦2隻と巡洋艦数隻が並ぶ。それらの先にある記念公園のほうには記念艦となった空母鳳翔が見える。
「そうだな。だが、彼らが味方である限り、我が国が襲われてもまだ生き残る希望はある。だが、いつまでも彼らに頼るつもりは毛頭ない。この練習航海を通じて将来、ニホンに負けない強力な海軍を作り上げるために、貴様もしっかり彼らから学べ。せっかくニホンに来たんだ。この機会、無駄にするなよ」
頷いた上官の言葉に青年は真剣に耳を傾けて聞き入っていた。マグチッタ海軍はのちに、移転前の日本に似た構成の組織として完成していく。その中で青年は艦隊司令、基地司令を経て海軍長官(日本の海上幕僚長と似たようなもの)へと就任していくことになる。
いかがでしたでしょうか。久しぶりの投稿でさらに文章能力が落ちていますがご容赦ください(汗)。次話以降はまだ未定ですがなるべく間隔をあけないように努力していくつもりです。長らくお待たせして申し訳ありませんでした。本作を今後ともよろしくお願いします。それではまた次話でお会いしましょう。